バブル相場においては、「今がバブル」という判断も、それが破裂するタイミングの予測もできないとされます。しかし、最近の相場には、バブルとは言わないまでも、フロス(小さな泡粒)が頻発していると私はみています。
サマリー
●バブル相場の中で「今がバブル」との判断も、その破裂の予測もできない
●最近の相場には、バブルとは言わないまでも、フロスがあちこち観察される
●金相場の急落、米AI株の不安定な跛行、5万円肉薄の日経平均の現状を評価し、対応を考える
バブルは予測不可能
相場がバブルの様相を帯びると、速く高く進行します。投資家はその速さと高さに驚き、新規参入に二の足を踏みます。しかし、「相場は自らを正当化する」のが通例です。
つまり、なぜ速く高く上がるのかを問いながら、それにふさわしい「答え」を導き出します。相場が上がるたびに、「やはりそうか」と考え、そうした「答え」が正しいという認識を強め、投資家の買いが続くのです。
このような「正答」を否定するのは、心理的負担があるものです。皆がそう言っているのに逆らい、実際に相場が上がるのに、見送ることでもうけ損なうでしょう。上がれば上がるほど、「参加しない」という判断がダメ出しされ続けます。
結果として、焦った投資家が後から後から参入します。先行して参入した投資家は含み益が膨らみ、リスク判断が甘くなり、さらに買い増したり、買い回転を利かせる売買を強めたりして、相場の上昇を一段と速めます。
バブルの様相が強まると、投資家はこのような情報環境と心理状態になります。そこで「バブルかもしれない」という認識は持てても、「今はバブルだ」と明確に判断するのは困難です。
この相場に「臨戦」するには、「バブルかもしれない」という疑いの目を凝らしながら、相場の力学ロジックにクールに忠実に対応するのみです。
軋む米国株相場
筆者は8月、9月、10月と、相場の怪しい兆しをご案内してきました。相場が大崩落するほどのバブルとは考えないものの、各市場、各業種・銘柄にフロスが頻発していると判断しています。特に、米国株相場をけん引してきたAIの主要銘柄に跛行(はこう:高下が混在し、チグハグな状況)が強く、入れ替わり立ち代わりでフロスが発生している状況が色濃いまま、今に至っています(図1)。
<図1>米AI銘柄の跛行(2025/8/1=100)
米国株の銘柄が入れ替わりで高下する展開は、個々のフロスのガス抜きにも見えます。要は、厳しい下落、相場の崩落を回避するようにも考えられます。従って、筆者は、押し目買いを徹底する短期モメンタム投資(上昇相場の勢いに乗る投資)に徹してきました。
しかし、先述した通り、バブルかもしれない状況でも、事前にバブルと判断し、いつ破裂するかの予測は不可能です。それだけに、各市場、各銘柄の値動きから、バブル、フロスの兆しを観察し続けています。
軋む金相場
そんな折、金価格が久しぶりに調整反落場面を迎えています。金相場には、トレンドを支えるファンダメンタルズと構造要因がある一方、投機的な買い殺到によるフロスの膨張は指摘されてきました。
金相場を高める要因としては、(1)米金利低下とドル安、(2)リスクオフでの安全資産選好、(3)アンチ米国、アンチ・ドル勢力による買いの三つが指摘されています。
(1)については、米国で利下げ見通しが強まっています。
(2)については、トランプ大統領のかく乱的な政策発動が、先行き不透明感を強め、地政学の先行きにも不安が高まりました。(3)については、中国やロシアなどの反米国勢力が、米国による制裁リスクを嫌って、準備資産をドルから金に移していることが確認されます。
こうした背景から、金相場は上がれば上がるほど、ファンダメンタルズ的に、そして構造的に下落しないかの信念が強化されてきました。それでは、どこにフロス破裂の兆しがあったのでしょうか。
第一には、単純に、相場が速く高まり過ぎたことに尽きます。単純な見方をご紹介しましょう。
図2で、金相場は移動平均線から大きく乖離(かいり)して上伸しています。移動平均線はその期間に形成されたポジションの平均コストと割り切ってみると、それ以上の大幅上昇は、利益確定売りの潜在的圧力と考えることができます。これほどの乖離になると、筆者も飛び乗ることには二の足を踏みます。
<図2>金相場と50・100・200日移動平均線
10月21日に、楽天証券トウシルの動画で吉田哲アナリストが「金上場投資信託(ETF)の市場価格と基準価額の乖離」について、東京証券取引所の注意喚起を解説しています。
2025年10月21日: [動画で解説]東証が注意喚起:金(ゴールド)ETFの市場価格と基準価額の乖離とは?
基本的に、金相場はドルベースの取引で価格が決まり、それをドル/円相場で換算して、日本での金価格が決まります。
日本市場が世界の金相場に与える影響は(小さくはないとはいえ)限られ、この過熱分には調整圧力が内在しています。
第二には、周辺市場の状況です。金に追随するように、銀、プラチナの相場が上伸していました。速い金に手を出しにくくなった投資家が、思惑的に銀、プラチナに目を付ける展開ですが、これらは準備資産としての地位が金ほどには確立されていません。
あるいは、デジタルゴールドといわれるビットコインが、先行して急落していたことも、微妙に相場としてのチグハグ感を招いていました。
細かいところを言えば、ドル指数の下落が、ユーロの軟化によるところがあるとはいえ、金相場の加速的な上昇に小さな逆風になった面もあります。
それほどいろいろな兆候に気が付いているなら、「事前に教えてくれ」と言われるかもしれません。確かに、個々の兆しはあちこちで目にしていました。しかし、フロスといえども、破裂する前に1割、2割も相場が上がることもあるのです。
また、いったん破裂したように下がっても、押し目買い意向が強くて、2025年4~5月のように相場が高下の値幅が大きくても、足踏みするだけの時間調整で通過することもあります。
軋むか日本株相場
米国株のAI相場は、バブルと言わないまでも、フロス多発の不安定な展開になっています。不安定ながらも、フロスが入れ替わり立ち替わり発生することで、全体としての上昇トレンドが維持されてきました。
金相場についても、米金利が低下し、ドルに軟化圧力があること、世界情勢に不確実性が大きいこと、中国など反米勢力の金買いが根強いこと、さらに、まだ金を購入していない機関投資家が少なくないことから、上昇トレンドが終わるとは考えにくいでしょう。
まして、フロシー(泡立った)で不安定な米国株が急落する事態になれば、安全資産としての金は買われやすくなるでしょう(株の損失を穴埋めする金の利益確定売りはあり得ます)。
いずれにしても、株式相場にも、金など貴金属相場にも、「バブルかもしれない」フロスの症状がある中で、割高とされてきた日経平均株価は5万円間際まで上伸し続けています。
この日経平均高を正当化するように、数カ月前まで弱いとされた国内景気、低迷しているといわれた企業業績、米関税の悪影響、怖がられた円高や日本銀行の動きも、今や問題ないかのような論調になっています。そこに「高市トレード」が上乗せされた格好です。
日経平均と移動平均線(図3)、円相場、米国株との乖離をチェックすると、かなり突出して高いことが明快に観察されます。この日経平均の上昇の半分を、米AI相場に連動する2、3銘柄がけん引しています。
<図3>日経平均と50・100・200日移動平均線
だからといって、「売った方がいい」という判断が困難なのが、「バブルかもしれない」相場です。
筆者の短期モメンタム投資では、上昇トレンドを捉えつつも、「フロス症状の不安定な相場に対応しなければならないこと」と両立させるために、銘柄選別、適切なポジション量、サクッと機動的な判断を徹底しています。
*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。
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(田中泰輔)

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