「アメリカ大好きおじさん」と自称し、米国株の魅力を発信し続ける投資家のロジャーパパさん。ナスダック企業で20年間働いた知見を生かした米国株投資でFIREを達成。

現在はYouTubeチャンネル「ロジャーパパ米国株投資」を通じ、リアルな投資戦略を指南。なぜ米国株への投資が「揺るぎない正解」と考えるのか。その投資哲学と人生観に迫ります。


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ロジャーパパさんプロフィール

日本株で1,500万円を失った投資家は、なぜ米国株に全てを賭けたのか?ロジャーパパさんインタビュー(前編)
米国株や米国債、暗号資産、金(ゴールド)、未上場企業などへ投資する米国投資家。日本の大学を卒業後、米国へ留学し2005年に米国でジャーナリズム修士号取得。3社のナスダック企業で20年勤務し、2021年にFIRE。YouTubeで米国株の魅力を発信し続けている。2児のパパ。YouTube: ロジャーパパ米国株投資 (登録者数約15万人:2025年10月現在)X: ロジャーパパ・米国株投資YouTuber (フォロワー約1.4万人:2025年10月現在)

トウシル:本日はよろしくお願いいたします! 昨今の世界情勢を見ると、米国以外の国や地域にも投資のチャンスがあるように感じます。その中でもロジャーパパさんが一貫して「米国株」を強く推し続けているのはなぜなんでしょうか?


ロジャーパパさん:僕は「アメリカ大好きおじさん」なので、かなり偏っている前提で聞いてください(笑)。一言で言うと、米国が「世界最大の経済大国だから」という客観的な事実に尽きます。


 地球全体の株式時価総額である約145兆ドルのうち、半分は米国の企業が占めています。いたる所で「割高だ」「バブルだ」といろいろ言われますが、世界中の投資銀行や年金基金、個人投資家のお金がどこに向かっているかといえば、半分は米国。国債の市場を見ても、145兆ドルのうち4割が米国。これがうそ偽りのない現実なんですよ。


トウシル:世界の半分を占めているのは圧倒的ですね。伸び盛りのグローバル企業も多いですし。


ロジャーパパさん:そうなんですよ。

企業単体で見てみても、世界の時価総額トップ20社のうち、17社は米国企業です。「インドがいい」「日本がいい」という話も聞きますが、世界の株式市場における両国のシェアはそれぞれ3~4%に過ぎません。


 大事な資産形成をどこでやるのか?と問われれば、圧倒的な世界一という実態があるのだから、その流れに素直に乗るのが僕の中では揺るぎない正解なんです。


トウシル:確かに、規模感で言えば圧倒的ですね。ただ、短期的に見ると、今年であればドイツやベトナム、中国の市場も非常に好調です。そういった勢いのある国に投資した方がリターンが高いのでは?という考え方もあるかと思いますが…。


ロジャーパパさん:おっしゃる通りです。例えばコロナショックがあった2020年に最も株価が上昇したのは、実はモンゴルです。そして米国株が大幅に暴落した2022年の逆金融相場では、トルコの伸び率がトップでした。その年によって、伸び率がいい国が変わっているのは間違いないと思います。


 一方で、ちょっと考えてみてほしいんです。毎年そのトップの国を追いかけ続けますか? 画面に張り付いてトレードするデイトレーダーならいざ知らず、一般の投資家がそこまでできますか?という話なんです。


 僕はあくまで時間対効果、いわゆる「タイパ」を重視した長期の資産形成を前提としているので、なんだかんだ言って米国が一番リスクに対して適切なリターンがあり、世界の投資マネーが向かっている場所に乗るのが合理的だと思っているんです。


さらば日本株!全ての始まりは「1,500万円の損失」から

トウシル:ロジャーパパさんは、YouTubeやXなどで、「世界の投資マネーの半分は米国に向かっている。米国株投資が現在の自分にとっての最適解」と常々、おっしゃっています。この揺るぎない確信は、いつごろからお持ちになったのでしょうか?


ロジャーパパさん:投資を始めた最初からです!…と言いたいところですが、実はその前の、大きな失敗がきっかけになっています。投資を始めたのは2008年のリーマンショックの底値の時期。最初は何も分からず、日本株を買いました。 伊藤忠商事(8001) 、 JAL(日本航空:9201) 、 トヨタ自動車(7203) などの、自分が知っている有名銘柄をとにかく買ったんです。


トウシル:リーマンショック直後なら、比較的早く景気は回復しましたし、何を買っても株価が上昇するような相場でしたね。ロジャーパパさんもその波に乗っていたと。


ロジャーパパさん:そうなんです。それで1,500万円ぐらい利益が出ました。最初は「すごいなあ」とひとごとのような気持ちだったんですが、そこで調子に乗ってしまいました。


 少しだけ勉強して、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)だけを見て、キャピタルゲインを目的に割安株を選んで買い続けた結果、2011年の東日本大震災、2012年にかけての円高局面などで、稼いだ1,500万円を全て失ってしまったんです。


トウシル:ええっ、全てですか!?


ロジャーパパさん:はい…。短期でもうかったことで「自分は相場が分かっている」と勘違いし、間違った成功体験をしてしまったんですね。「勉強すればもっともうかるだろう」と自信満々でしたが、実際には相場のサイクルも、マクロ環境も理解していませんでした。この手痛い失敗があったからこそ、本当に投資に必要な知識を本気で学ぶことにつながりました。


トウシル:日本株での失敗から、なぜ米国株へとかじを切られたのでしょうか。


ロジャーパパさん:それは、私自身が米国留学し、ナスダック上場企業3社に転職して20年間働いてきた経験が大きいですね。米国企業の現場にいて、その強さの源泉を肌で感じてきました。


 米国企業は本当に厳しいですが、できる人の給料は2倍、3倍、5倍になるのが当たり前。私自身の年収も、20年間で400万円から最終的には3,000万円まで上がりました。逆に、できない人はすぐに解雇されます。日本のように「働かないおじさん」と呼ばれる存在なんて一人もいません。この徹底した効率性を見れば、世界中の投資マネーが集まるのは当然だと感じます。


外資企業勤務20年の結論!「日本企業が勝てない」シンプルな理由

トウシル:日本株と米国株の差がついた理由はなぜだと思われますか?


ロジャーパパさん:正直に言うと、日本の終身雇用制が全ての元凶だと思っています。日本企業はサラリーマンの生え抜きの人が取締役になるじゃないですか。これって世界的に見てもすごく珍しいんです。


トウシル:日本では、新卒入社で出世街道を上り詰める「生え抜き」が王道として扱われがちですが、ここが悪いんですか?


ロジャーパパさん:本来、経営のかじ取りをする取締役と、会社を回すサラリーマンは別組織として考えるべきなんです。会社の言うことを聞き続けてきた人が、いきなり経営判断や投資家と対峙(たいじ)する役割を担えるわけないじゃないですか。


 だって経営したことがない人が経営陣になるんですよ? そういう取締役は投資効率に対する意識も低いし、経営判断も甘いんです。だから自己資本利益率(ROE)が低いままなんですよ。


トウシル:おお、厳しいご意見ですね…。


ロジャーパパさん:S&P500種指数(S&P500)の平均ROEが18%なのに対し、日本企業は平均8%。これでは株主の資本を使って効率的に利益を生み出せているとはいえません。この根本的な構造が変わらない限り、長期的な資産形成の主戦場にはなり得ないと、私は考えています。


人生哲学の原点。失敗を評価する米国流仕事術

トウシル:ロジャーパパさんの投資哲学は、ご自身のキャリアと密接に結びついているのですね。


ロジャーパパさん:そうですね。特に長年勤めたアマゾン・ドット・コムでの経験は、私の投資スタイルに直結しています。


 私はもともと東京の下町、葛飾区で、大工の7代目として生まれました。僕が後を継がなかったので実家の工務店をつぶしちゃったんですが(笑)。実家も富裕層ではなかったですし、海外経験も全くありませんでしたが、漠然とした米国への憧れから、日本のメーカーで2年間働いて貯めたお金で米国の大学院に留学したんです。


 でも、本当に記憶力が悪くて、卒業まで通常は1年半のところ、倍の3年かかりました。ただ、昔から根性だけはあって「やると決めたらやり抜く」ことだけは得意だったので、途中で諦めることなく卒業まで頑張れました。


 留学ではジャーナリズムを専攻していたのですが、「どうせなら一夏の間、ハリウッドで働いてみたい」と思い、職も決まっていないのに、一人で、自動車でボストンからロサンゼルスに向かいました。当然、外国人の学生を雇ってくれるテレビ局なんて見つかるわけがないんですよね。100社に応募して面接にこぎつけたのはゼロ社でした。


トウシル:聞いているだけで心が折れそうです…。


ロジャーパパさん:しかし、諦めきれずに50社に直接履歴書を持って行ったところ、1社だけ、公共放送サービス(PBS)のハリウッド支局KCETが面接に呼んでくれました。


 ただ、「英語もろくに話せない日本人留学生が、大勢に混じって普通に面接を受けても受からない」と考え、面接当日、早めに現場に行き、「プロダクションアシスタントです!」と名乗って、ケータリングのマフィンを整えたり機材を運んだりして、勝手に働き始めたのです(笑)。


トウシル:ええっ、バレて怒られたりしなかったんですか?


ロジャーパパさん:そのときはバレませんでしたが、面接の時間になってプロデューサーの前に現れたら「あ、君、さっきいた子だね。熱意があるからいいね」と採用してもらえました。


トウシル:すごい行動力ですね!


ロジャーパパさん:その後、アマゾンに転職してからも、私の役割は新規事業の立ち上げ担当でした。周りは米国の中でもトップオブザトップの超エリート集団。その中で私は、とにかく「失敗する」のが仕事でした。事業の立ち上げに失敗すると「Collection of Errors(COE)Doc」という失敗からの学びをまとめたレポートを作成し、全社に共有しなきゃならないんです。


 当然、社内ネットワークには世界中からの「なぜ予測できなかったんだ」といった批判が押し寄せます。でも私は絶対に逃げず、全ての批判を受け止めて学びを次に生かすようにしていました。すると、一番大きな失敗をした年に、まさかの昇進の辞令をもらえたんです。


トウシル:失敗したのに、評価が上がったのですか?


ロジャーパパさん:「こいつは逃げないし、失敗から学んで次に生かせる」と評価してもらえたんですね。イノベーションを求める会社では、挑戦の数が多い分、失敗はつきものです。何も挑戦せず、何も失敗しない人は、米国では評価されません。この諦めずに立ち向かい続けた経験が、私の根幹をつくっています。


日本株で1,500万円を失った投資家は、なぜ米国株に全てを賭けたのか?ロジャーパパさんインタビュー(前編)
2004年、ボストンで留学中(ジャーナリズム専攻)、夏の間だけでもハリウッドの映像制作現場で働いてみたいと思い立ち、紙の地図と方位磁石を頼りに、自動車で米大陸一周、1.6万kmの旅を敢行。[1]イエローストーン国立公園付近の山頂。晴天だった空が突然暗くなり、手のひらサイズのひょうが次々と降ってきて、自然の厳しさを肌で感じる。
[2]5月でも雪が残るロッキー山脈。イエローストーンの北側から入ろうとしたところ、「チェーンを巻いていない車は通行不可」と言われ、大きく迂回(うかい)して翌日やっと到着。米大陸の壮大さを体感。[3]半月かけてロサンゼルスへ到着。仕事が見つかるかどうか不安な中、100社近いテレビ局や制作会社に履歴書を送るも返信ゼロ。さらに50社に履歴書を持参し、ようやく1社から面接の連絡が。面接を待っていれば断られる!と思い、強引に働き始めて職を勝ち取る。[4]PBSのハリウッド支局KCETで、チャイルドケア・ドキュメンタリー番組『A Place of Our Own』の制作アシスタントとして一夏の間、働く。その番組は翌年、2005年のエミー賞を受賞。

失敗の先に確立した「コア・サテライト戦略」とは?

トウシル:日本株での1,500万円の損失、そして米国トップ企業での数々の失敗。その全てが現在の投資哲学につながっているのですね。


ロジャーパパさん:おっしゃる通りです。投資もビジネスも同じで、一回のトレードやプロジェクトで成功するとは限りません。大事なのは、トータルで負けないこと。


 そのために僕がたどり着いたのが、資産を「コア」と「サテライト」に明確に分ける戦略です。


「コア」は、S&P500の投信積立のように、相場が上がろうが下がろうが、絶対に売らずに資産形成の土台とする部分です。そして「サテライト」は、個別株のトレードなど、楽しみながらリターンを狙いにいく部分です。この二つをしっかり分けることで、暴落が来ても精神的に安定しますし、むしろ暴落を「安く買える絶好の買い場」と捉えることができるようになります。


トウシル:なるほど。その戦略がFIRE達成の鍵となったわけですね。


ロジャーパパさん:はい。この戦略があったからこそ、米国株という世界最強のマーケットで、規律を守りながら資産を築くことができました。


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 大きな失敗を経験として捉え、見事にご自身の投資哲学を身につけられたロジャーパパさん。後編では、ロジャーパパさんが実践する「コア・サテライト戦略」の具体的なポートフォリオと、「勝率3割でOK」という驚きの売買ルールを教えていただきます!


▼後編はこちら

3割勝てばOK。「負けない」米国株投資術とは?ロジャーパパさんインタビュー(後編)


(トウシル編集チーム)

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