日経平均が5万円台に突入。上昇相場が続く中、「日本株を買うのはもう遅い?」と悩んでいる人はどうするべきか。

日本株を押し上げる三つの要因と、個人投資家が押さえておくべきポイントとは? 楽天証券経済研究所のチーフ・ストラテジスト・窪田真之と、資産づくりディレクター・山口佳子が解説します。


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※この記事は、YouTube動画の内容を一部抜粋しています。
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日経平均5万円台。日本株を買うのはもう遅い?

山口佳子(以下、山口) 日経平均株価がついに5万円台に突入しました。日本株はまだ割安だといえますか?


窪田真之(以下、窪田) アベノミクスがスタートした2013年以降の日経平均と米国のS&P500種指数を比較すると、ほぼ同じくらいの上昇率です。日本株は、財務内容やビジネスモデルなどから考えて割安です。時間分散しながら投資することが大切だと思います。


日本株、買うのはもう遅い?積立投資で上昇の波はつかめるか
日経平均株価・米国S&P500指数 比較

山口 安い時に買えなかった人は、次の下落局面で買いたいと思うかもしれませんが、時間分散することで投資余力を残しておくことが一つの方法になりそうですね。


素直な人ほど、「買い」タイミングを逃すもの

窪田 私は、ファンドマネージャー時代に年金や投資信託の運用をしてきました。個人投資家の行動をみると、素直な人ほど世の中が明るくなると株を買って、暗くなると株を売ってしまいがちなのが、株式投資の難しいところです。いろいろと考えるよりは、毎月1~2万円でも積立投資を続けることが大切です。


山口 投資信託への積立投資では、全世界の株に投資する「オール・カントリー」や、米国の代表的指数「S&P500種指数」への連動を目指す投資信託が人気です。外国株中心に資産を持っている人の中には、今上昇中の日本株が気になっている、という人もいるかもしれません。


 投資したお金を通じて日本企業にお金が流れるということは、私たちが今生活している国がより良くなる方向にお金を流していく、ということにつながります。ご自身の投資内容を見つめ直してみる良い機会にもなりそうです。


60代、これから始めるなら?

窪田 私は60代です。同年代の友達で、退職金も出て、まとまった資金はあるけどこれまで全然投資をしていなかったという人がいます。こういう場合も、積み立てで投資を始めるのが良い方法だと思います。


 最近は1年ごとに暴落を繰り返していますが、私の経験的には「4年に1回」景気が悪くなるタイミングがあります。


山口 これから20~30年と長期の積み立てを計画している人もいれば、「そんな長期でできない」という人もいます。「3~4年のサイクル」を時間分散の目安にすれば、幅広い世代の人が挑戦できそうですね。


窪田 今年の12月末、日経平均がいくらになるかを予想することはプロでも難しいものです。「それでも今起きている大きな構造変化のトレンドには乗りたい」という場合は、だからこそ時間分散が有効だといえます。


 これは株だけでなく債券も同じです。足元で日本の長期国債の金利が上昇しています。積み立てを継続すれば、価格の下落と利回りの上昇を実感できそうです。


日本株上昇、三つの要因

山口 改めて、日本株はなぜ上昇しているのでしょうか。


窪田 主に三つの要因があります。最も重要なのは、(1)デフレからインフレへの転換、そして、(2)企業の自社株買いの増加。これに(3)高市早苗首相への期待感が合わさり、株価を押し上げたと考えています。


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今の相場は「日本株バブル」では?

山口 現在の上昇相場を、「日本株バブル」という声もあります。


窪田 AI関連株の急上昇は別として、日本株全体に対して「バブル」という表現を使うのは、違和感があります。


 バブルが崩壊する前の1989年ごろ、東証一部の株価収益率(PER)は70倍でした。企業利益が増えないのに、株価だけが上がる。これがバブルです。


 今、東証プライムのPERは18倍を少し超えたところです。私は17倍くらいが妥当と考えているので、やや上昇ピッチが速く過熱していると思いますが、過去のバブル時と比べると全く違います。


 1989年当時は、不動産価格も、物価も、人件費も、全てがかなり高い水準でした。今は反対に全てが安くなっています。株価も一緒で、外国人投資家は財務内容やビジネスモデルから考えて割安な日本株を買っています。

そのことに、日本の個人投資家も気付くべきだと思います。


日本株、買うのはもう遅い?積立投資で上昇の波はつかめるか
日経平均と東京証券取引所の予想PER

インフレ時代の資産形成術

山口 デフレ時代からインフレに切り替わっていく中で、現金の価値が減るインフレに耐えられない資産構成になっている人も多いのでは。


窪田 未来は予想できないといっても、大きな転換点は押さえておかないといけません。それは、「デフレからインフレへの転換」です。インフレの芽は、着実にここ10年以上で育っています。サービス価格や輸入品価格が上昇しているほか、食品やエネルギーなど生活必需品の価格も大きく上がっている実感がありますね。


 私は、今後5年ぐらいのインフレ率平均の予想を、前回予想の2.4%から2.6%に上方修正しました。インフレは国民生活には厳しいものですが、株の世界ではプラス要因になります。海外事業の利益成長が2.3%、インフレで2.6%、自社株買いが増えたことで、発行済み株式が減って1株利益も増えます。これらの効果で、1株当たり純利益が年率平均6.5%増加するとみています。


日本株、買うのはもう遅い?積立投資で上昇の波はつかめるか
東証上場企業のEPS増加要因

山口 インフレ時代に突入した今、現金を貯めこまずにしっかり活用していかないと企業価値は高まりません。個人としても、この変化をとらえていきたいですね。


(トウシル編集チーム)

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