日経平均は5万2,000円台を突破し、日本株は再び「成長証券」としての輝きを取り戻しています。米国のAI相場を追い風に脱デフレと名目GDPの拡大が進む中、「サナエノミクス」期待が新たな成長エンジンとして動き出しました。
日本株は「成長証券」としての上昇循環を取り戻す動きに
10月21日に発足したばかりの高市早苗総理大臣の内閣支持率が、なんと82.0%にも上昇したことが最新世論調査で判明しました(JNN/3日発表)。特に若年層(18~29歳)が88%と急上昇し「サナ推し」と呼ぶそうです。
日米首脳会談などの外交デビューでみせた新首相の「やる気」「論理力」「明るさ」「コミュ力」「躍動感」に若者層が「こんな総理大臣、見たことない!」と抱いた印象です。
東京証券市場(東証)では、石破茂前首相の退陣表明(9月7日)を契機とした「変化期待」に、米国市場でナスダック(ナスダック総合指数)が6カ月連続高を演じた「AI相場の波及」が重なり、9月5日から日経平均株価は9,392円上昇しました(10月31日終値は52,411円)。
英国のFinancial Times紙は10月28日、「トランプ大統領と高市首相が日米同盟の黄金時代を約束した」(Donald Trump and Sanae Takaichi promise ‘Golden age’ for US-Japan alliance.)と世界に報道した中、日経平均株価は一段高となりました。
図表1のとおり、日経平均は2012年末に始動したアベノミクス相場から13年10カ月で約4.9倍となり、年率平均リターン(IRR:内部収益率)は+13.7%となっています。
物価上昇率がプラスに転じた中、名目国内総生産(GDP)も増勢(4-6月期:年率換算額で635.1兆円)となり、日本株が長期でインフレに勝てる「成長証券(Growth Securities)」として新しいステージに入った見方が強まりました。
図表1:「アベノミクス」以降の日経平均は約4.9倍に成長してきた
なお、最近の日経平均の上昇が、米国市場で続く「AIブーム」の影響を強く受けている点に注目です。先週は、AI半導体(GPU)のリーデングカンパニーである エヌビディア(NVDA) 株が年初来で約5割上昇。時価総額が世界で初めて5兆ドル(約770兆円)を突破して注目されました。
AIデータセンター・半導体の世界的特需は東京市場にも波及。日経平均の堅調(年初来上昇率31.4%)の原動力として、指数寄与度の高い「値がさテック株」の堅調を無視できない要因です。
例えば、 ソフトバンクグループ(9984) は年初来+195%、 アドバンテスト(6857) が+151%、 レーザーテック(6920) は+87%、 フジクラ(5803) が+223%と、値がさ大手グロース株が売買高を伴い株式相場をけん引。
実際、修正株価平均指数の日経平均と比較して、時価総額加重平均株価指数の東証株価指数(TOPIX/相対的にバリュー株のウエートが高い)は年初来+17.7%にとどまります(10月31日時点)。
とはいえ、10月の株高ペースは急であり、過熱感や高値警戒感を意識した売りが膨らむ可能性もあり、目先は株価調整や循環物色(業種間の資金シフト)の動きも想定するべきでしょう。
デフレ脱却と名目GDPの増勢に「サナエノミクス」期待が加わった
日本株高を支える要因として、日本の名目GDPの増勢傾向も挙げられます。図表2が示すとおり、名目GDPは2024年に「600兆円の壁」を突破し、今年4-6月期は約635兆円に成長しました。
物価上昇の持続は名目的な付加価値総額(円)を増やし、概して上場企業の売上高や純利益の増額を後押しします。実際、国税庁は10月30日、2024年度に決算期を迎えた国内法人の申告所得額が前年度比4.1%増の102兆3,381億円だったと公表。
4年連続で過去最高所得を更新し、同時に申告税額も同7.6%増の18兆7,139億円でバブル期の1989年7月~1990年6月を上回り、過去最高を記録したとのことです。
物価の上昇(デフレ脱却→インフレ)は一般生活者に悩ましい事象ですが、名目GDPの伸びと税収の増加は日本株の時価総額増加や財政収支改善(歳入増)にプラス要因です。
図表2:「高市相場」の前から日本の名目GDPは再び拡大し始めていた
日米首脳会談などの「外交デビュー」を成功裏に終えた高市政権は、今週から経済政策を議論する「日本成長戦略会議」を始動させます。「日本成長戦略本部」の設置を早期に閣議決定する見通しで、首相を司令塔として副本部長には政府の成長戦略を担う城内実経済財政相(自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の顧問兼財務担当)が就任。
民間有識者に「積極財政派」を登用するなど「高市カラー」を打ち出す見込みです。首相は危機管理投資を含む「強い日本経済」の実現を掲げ、すでに各閣僚に取り組みテーマを指示。
与野党間では物価対策としてガソリン暫定税率の年内廃止に向けた協議が進み、低中所得者層の実質所得底上げにも取り組む姿勢です。「日本を強く豊かに」と訴える高市政権の「サナエノミクス」(*責任ある積極財政と重点成長分野への投資戦略)は、日本の長期経済見通しを押し上げる公算が高く、生産性向上や企業収益の底上げ、名目GDPの拡大に向けた市場の期待を高めています。
*「責任ある積極財政」とは:従来の単年度主義・財政均衡主義にとらわれず、安全保障強化を含めた成長分野への中長期的な投資と実質減税を組み合わせ、未来の経済成長に寄与する「乗数効果」を高めて国民所得と国富の拡大を目指す複数年度型の財政運営策です。ムダな歳出改革も断行していく財政健全化と成長戦略を両立させ、官民連携の成長投資・需要拡大を重視する新たな積極財政策とされます。
2026年の日経平均予想レンジ:上値の焦点はどのあたり?
2カ月後に迫る新年(2026年)を見据えると、短期的な需給調整(利益確定による一時的な株価下落局面)を経るのは織り込み済み。本質的に、米国株高が主導するリスクオンの流れ(世界的な株高基調)が続くなら、日本株にもその追い風が波及する(外国人投資家のリスク許容度改善を通じた日本株買いが続く)展開が見込めます。
さらに、近年進む上場企業の資本効率向上や株主還元強化、ガバナンス改革といったミクロ面の改善に加え、高市政権のマクロ政策の期待が重なれば、内外投資家にとっての日本株先高観を下支えするとみられます。
図表3は、日経平均ベースの今年度(2026年3月期)の時価総額加重平均1株当たり利益(EPS)を起点に、来年度(2027年3月期)の予想増益率に応じた予想EPSに想定株価収益率(PER)を乗じて試算した株価予想モデルです。
今年度の予想EPSは、米国の対日関税率着地、為替の円安傾向、データセンター・半導体・電力関連の設備投資需要増加を主因に、7-9月期の決算発表で業績見通しが上方修正された効果で、直近の予想EPSは前月比約5%増の2,666円に増えました(10月31日)。
来年度はおおむね前期比8~10%の増益が見込まれており、PERが現行(約19.6倍)から「20倍」に拡張するなら、2026年末に向けた日経平均の上値余地は5万6,000~5万8,000円程度と試算できます。
2013年のアベノミクス相場では4月25日に予想PERが23.4倍に達した記録があり、予想PERの20倍台は非現実ではない市場実績があります。なお、2012年末に1万円前後だった日経平均は約3年で2万円前後へと約2倍となった市場実績も知られています。
図表3:2026年の日経平均予想レンジ:上値余地のイメージは?
国内政治では、高市首相を支える「責任ある積極財政カルテット(四重奏)」(片山さつき財務相、城内実経済財政相、小林鷹之政調会長、小野寺五典税調会長)が軸となり、少数与党として閣外連立与党の日本維新の会や国民民主党との連携を見込みます。
国会論戦や与野党調整を経て、ガソリン暫定税率廃止、電気・ガス料金補助など物価高対策を実現し、低中所得層の実質所得の底上げを目指す積極財政への転換や成長投資重視の経済戦略を有権者に訴求できるかが焦点。
比較的高い内閣支持率を持続し、政策面の成果と期待を維持できれば、日本維新の会が掲げる「身を切る改革」(議員定数の削減)、「実質減税の推進」、「豊かな日本の再興」などの理念を大義に国民に信を問う解散総選挙に来年春ごろまでに踏み切り、自民党として保守層の支持を取り戻したい戦略がうかがえます。
自民党の党勢回復次第では、現在2年の総裁任期が延長され、高市内閣が想定以上の長期政権となる可能性も見定めたいところ。
日本は議会制民主主義国であり、最終的な「民意」は選挙結果で示されます。「日本を再び強く、豊かに」(Japan is back!)と訴える高市首相とその内閣への国民全般と市場の期待の高まりに応じ、株価の上値余地が広がるかがポイントです。
「晴れた日には日経平均の10万円が見える」:その条件は?
皆さまは1970年に米国で公開された映画「On a Clear Day You Can See Forever(晴れた日には永遠が見える)」をご覧になったでしょうか。筆者には「晴れた日には日経平均が10万円に到達する」道筋が見えてきました。
もちろん、そのプロセスにおける一時的な相場反落(株価調整)は織り込み済みです。本質的には、長期視点でマクロとミクロの両面で相場環境がすでに改善しており、「サナエノミクス」の効果にさらなるカタリストを期待。名目GDPが一段と拡大する中で企業業績が持続的に伸びることが株式市場の根幹です。
米国の投資教育で常識的な「長期では市場平均株価は永遠に上がり続ける」との「成長証券」(Growth Securities)の特性こそが、債券(確定利付き証券:Fixed Income Securities)や預貯金との大きな違いです。
ゼロ成長が続き、デフレ観測が支配していた2012年まで日本株は長期に低迷しました。2013年の「アベノミクス」(リフレ政策=金融緩和、財政出動、成長戦略による三本の矢)の始動で、脱デフレ期待と経済再生期待が広がり、日経平均は2012年末から年率平均成長率(IRR:内部収益率)で+13.7%と物価上昇率(インフレ)を上回るリターンを生み出しました。
保守的に見積もり、来年(2026年)以降の日経平均の暦年平均上昇率を10%と想定すると、相場のブレ(リスク)を示すジグザグを経つつも「複利効果」(雪だるま効果)もあり、「7年後の2032年末までに日経平均が10万円に到達する」と試算できます(図表4参照)。
図表4:日経平均は2032年末までに「10万円」到達を目指すと予想
日経平均が7年後に10万円到達を目指すための主要条件を整理すると、
【1】名目GDPの持続的成長(物価と賃金の好循環)
【2】政府による責任ある財政出動と成長投資の推進
【3】上場企業の資本効率・株主還元姿勢・統治改革の向上
【4】海外投資家による日本株の見直し買い継続
【5】一般個人による「貯蓄から投資」へのマネーシフト
の5点の行方を見極めたいと思います。マクロ・ミクロ・需給の三面で好循環が続くなら、10月の「高市相場」で突破した日経平均5万円は単なる通過点にすぎず、2032年末までに予想する10万円もまた通過点でしかなくなるでしょう。
米国株式市場には「下げは一時的、成長は永遠」(Growth is permanent, declines are temporary)との格言があります。伝説的ファンドマネジャーであるピーター・リンチ氏は「長期的に見れば、株式ポートフォリオはインフレを考慮しても債券や現金のポートフォリオを常に上回る」(In the long run, a portfolio of stocks will always outperform a portfolio of bonds or cash, even after inflation)と述べました。
米国では投資教育の常識である「長期視点の株式投資」が日本でも普及しつつあります。預貯金の実質利回りは当面もマイナス圏を続けると見込まれ、株式への長期分散投資を資産形成の中核に位置づける新時代を迎えています。
(香川 睦)

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