指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~
10月の中小型株ハイライトは「日経平均5万円突破にシラケムード」
今年の10月相場は歴史的な上昇劇を演じました(※日経平均株価に限る)。日経平均の月間上昇幅はナント、「7,478.71円」! これ、月間ベースの上昇幅ナンバーワンです。上昇率(+16.6%)で見ても、過去40年で2番目の大記録でした。
この10月は相場のアクセントとなる大きなイベントも多くありました。日本国内では、自民党総裁選で株式市場が歓迎する高市早苗氏選出というポジティブサプライズから始まりました。その後、自公連立の解消という高市新総裁に対してネガティブな話題も(ここでショートがつくられたことが後の上昇の燃料ともなったわけですが)。
ただ、自民党と日本維新の会が連立を組むというサプライズにより、買い戻しが加速。そして、首相指名選挙で高市氏が初の女性総理として選出されるタイミングで日経平均(まずは先物)5万円タッチという、ドラマ仕立ての展開に。現物の指数が5万円を超えたあとも達成感より好需給が勝り、さらに高みへ…。この動きを「高市トレード」とも表現されました。
高市トレードが「円売り・日経平均先物買い」であるとすれば、同じタイミングで半導体・AI関連株ラリーが起こったことが大きかったといえます。まさに先物と現物のツインターボエンジンで生まれた大相場。米SOX指数も最高値を切り上げる中、日本でも半導体・AI関連株人気が急上昇。
アドバンテスト(6857) 、 ソフトバンクグループ(9984) が爆上げし、この2銘柄が ファーストリテイリング(9983) を抜いて日経平均の指数ウエートのワンツーにもなりました。
10月後半はイベントラッシュ。トランプ米大統領が来日し、高市首相と初の対面での日米首脳会談。友好的なムードが伝わると、日経平均の買い(戻し?)材料に。米中首脳会談も、日本銀行の10月会合利上げ見送り観測や植田和男日銀総裁のハト派姿勢も日経平均の買い(戻し?)材料…全部買い材料にしていく感覚でしたね。
重要イベントを乗り越えた10月の日経平均は、月間騰落率が+16.6%という大記録を残しました。さぞや他の指数も上がっているんだろう!?と思いきや…
中小型株市場のパフォーマンスはさえないどころか、東証スタンダード市場指数はマイナス0.2%、東証グロース市場指数はマイナス4.2%とまさかのマイナスに。歴史的な日経平均の上昇月でもありながら、歴史的な日経平均とのギャップが生じた1カ月ともいえそうです。
日経平均や半導体株の一角が急上昇する中、東証株価指数(TOPIX)、東証スタンダード、そして東証グロース市場の騰落レシオは下げ続け100を下回りました。「日経平均は上がってるのに、自分の持ってる株は上がっていない(むしろ下がっている)」ここに極まれり、といった1カ月でした。
新NISAで中小型株!今月の銘柄アイデアは…「新興株への資金回帰[希望します]」
日経平均や半導体・AI関連株の爆上げ期間も、買い手は外国人投資家でした。その外国人でも、おそらく買い手の中心はヘッジファンドとみられるような上げ方でした。割安株や出遅れ株には目もくれず、株価モメンタムの強い株にひたすら資金を流し込むような買い方だったことは一目瞭然なため。
手っ取り早くパフォーマンスを上げるなら、モメンタムフォローで流動性の高い株にお金を入れるのが効率的です。半導体・AI株にばかり資金が流れ、結果的にそれ以外の株には全く恩恵の無いような、極度のパフォーマンス差が発生。2カ月続けて、「半導体株であらずんば株にあらず」そんな雰囲気でした。
半導体株さえ上がれば日経平均は持ち上がります。日経平均爆上げ型の大相場でしたが、それにふさわしい売買代金の記録も生まれました。10月22日、ソフトバンクGの売買代金が1銘柄として初の1兆円超えを記録。また、10月30日には東証プライムの売買代金が10兆円を超えました。東証プライム市場の花形銘柄には、間違いなく売買エネルギーがかかっています。
その一方、東証グロース市場など中小型株から人がどんどん離れていきました。東証グロース市場の売買代金はひと頃の半分程度になり、東証スタンダード上場予定の新規公開株(IPO)に上場見送り案件が出るなど、まるで地合いが冷え込んだ時期のようなニュースも目に付く始末。
IPOのセカンダリー市場も散々で…正直、日経平均が上がれば上がるほど、中小型株市場は地合いが悪化していくようにも見えます。
ちなみに、日経平均をTOPIXで割って計算した「NT倍率」が大きく上昇(日経平均優位の地合い)し、過去最高値を記録したことも話題になりました。
年初から5月末まではNG倍率は低下基調(日経平均より東証グロース市場250指数の方が強かったということ!)だったことが分かります。ですが…特に9月以降、鋭角に突き上がっています。9月、10月の2カ月で、NG倍率は55→73に30%超上昇。
これどういうことかというと、日経平均株価をロング、東証グロース市場250指数をショートするロングショートのポジションをつくった場合(パフォーマンス差の分だけが収益)、30%ものリターンが出たということです。逆にいえば、中小型のグロース株をロングして、ヘッジで日経平均をショートしていたらトンデモナイ損失になっていたということです。
あまりにも不遇な9月、10月の中小型株市場ですが、その理由も花形の半導体株がいない、空売り(ショート)がたまっていないため踏み上げ相場にならない―といった企業のファンダメンタルズとは関係ないことに集約されそう。
半導体・AI株ラリーの蚊帳の外にあった分、どんなに値下がりして割安化しても、押し目買いも全然入らずに下値を掘り下げた中小型株市場…間違いなく市場全体として出遅れ感は強まっています。
出遅れ感強い大型新興株の決算発表スケジュール
【条件】(1)スタンダード、グロース上場
(2)時価総額300億円以上
(3)売買代金25日移動平均3億円以上
(4)過去3カ月騰落率がマイナス
(5)アナリストのレーティングが平均して「強気」以上
※10月31日時点、時価総額大きい順 市場 コード 銘柄名 決算発表
予定日 決算 S 2702 日本マクドナルドHD 11月7日 3Q S 6324 ハーモニック・ドライブ・システムズ 11月12日 2Q G 141A トライアルHD 11月13日 1Q G 7806 MTG 11月11日 本 G 9166 GENDA 12月12日 3Q G 2160 ジーエヌアイグループ 11月14日 3Q G 5253 カバー 11月11日 2Q G 290A Synspective 11月14日 3Q G 3491 GA technologies 12月上旬 本 G 9348 ispace 11月14日 2Q G 4419 FinatextHD 11月12日 2Q G 4593 ヘリオス 11月13日 3Q
日経平均が爆上げし、半導体・AI株ラリーが起きても、中小型株には恩恵もなく、むしろ流動性も低下して値下がり方向だったことを踏まえるなら…これ、日経平均が下がるとか、半導体・AI株が下がるとか、10月までの動きの逆回転(アンワインドと呼びます)が起きないと始まらないような気もします。
11月に月が替わった直後、日経平均株価が急落し、10月の先導役だったアドバンテストやソフトバンクGも目立って下落する逆流の動きが出てきています。10月後半と違い、11月は重要イベントが減ってきます。
その中で、日経平均が最高値から遠ざかることは、モメンタムトレードの終焉(しゅうえん)を意味するなら、出遅れた大型株や、大幅に出遅れた中小型株市場に資金が回ってくることに期待したいところ(※あくまで希望的観測)。
今回は東証スタンダード市場、東証グロース市場に上場する銘柄の中から、時価総額が大きく(時価総額300億円以上)、流動性が高い銘柄(売買代金25日移動平均3億円以上)で、アナリストも強気のレーティングを付与している銘柄、かつ出遅れ感の強い銘柄をピックアップ。
あくまで日経平均の猛烈な上昇が一服することを前提としますが、出遅れ修正の動きにも期待し、当該銘柄の決算発表予定日を掲載しておきました。
(岡村 友哉)

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