楽天証券は、個人投資家向けに日経平均や為替の見通しなどを聞くアンケートを実施しました。日経平均の見通しでは、1・3カ月先の「強気派」の割合が、変わらず「弱気派」を上回りました。

1カ月先のドル/円予想では「円安」予想が3カ月連続で「円高」予想を上回りました。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始ま...の画像はこちら >>

はじめに

 今回のアンケート調査は2025年11月17日(月)から19日(水)にかけて実施しました。


 アンケートは、約2,100名を超える個人投資家からの回答を頂きました。


 11月相場入りしてからの日経平均株価は、上値を切り下げる展開が目立っています。その主因となっているのは、AI・半導体相場の揺らぎです。


 10月中旬から11月上旬にかけては、国内外の企業決算シーズンでした。その中でも注目されていたAI・半導体関連銘柄の業績や見通しは、おおむね良好だったものの、一部ではさえない内容だったものが散見され始めたことで、これまでの過度な期待や過熱感が修正されやすい相場地合いとなりました。


 その一方で、AI・半導体以外の割安・出遅れ銘柄や、ディフェンシブ銘柄へ物色が向かい、相場を支えている面があります。


 しかし、足元では高市新政権の経済政策に伴う財政悪化懸念や、日中関係悪化への警戒なども加わっています。さらに、日経平均がこれまで25日移動平均線をサポートにしながら、半年近く上昇基調を描いていたパターンが11月中旬に崩れてしまい、テクニカル分析の視点も含め、これまでの相場展開に変化の兆しも見えつつあります。


 今回の調査では、日経平均の見通しDIが前回調査から大きく後退しましたが、その傾向は1カ月先で顕著となりました。また、為替については、円安を想定する見方が強まっています。


 足元の市場はやや荒れ模様となっていますが、あくまで相場の調整なのか、それとも、トレンド転換の始まりなのかを探っている様子がうかがえる結果となりました。


 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。


日経平均の見通し「DI急低下から透けて見える調整含み」

 今回の調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先が+2.33、3カ月先は+10.71となりました。


 前回調査の結果がそれぞれ+60.44と+24.09でしたので、両者ともにDIの値が低下する結果となりました。


 とりわけ、1カ月先DIの低下が顕著となっていますが、今回のアンケート調査期間(2025年11月17~19日)の日経平均が5万円を割り込む場面を見せるなど、大きく下落していることが影響していると思われます。


 11月相場に入ってからのAI・半導体相場の揺らぎが続いていたことに加え、12月開催予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げの可能性が後退したこと、日中関係の悪化を警戒する見方などが株価を押し下げていたタイミングでもありました。


 こうした相場環境が今回のDIの結果を低下させました。回答の内訳グラフで、強気派・弱気派・中立派のバランスを見ると、DIの値の低下が示すほど、相場の下落トレンド転換を見込んでいる印象はありません。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 まず、1カ月先見通しのグラフを見ると、まだ強気派(26.90%)が弱気派(24.57%)を上回っている状況です。むしろ、前回調査の強気派の割合(65.44%)や弱気派の割合(5.08%)に見られたような偏った強気が落ち着いてきたと考えることもできそうです。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 そして、3カ月先見通しのグラフを見ると、強気派(32.24%)が3割を超えており、弱気派(21.52%)を大きく上回っています。


 従って、今回の回答結果からは、DI値は低下したものの、相場の先行きに対しては、悲観的にはなっていない様子がうかがえます。


 確かに、11月のAI・半導体相場の揺らぎによって、過熱感が後退しました。しかし、AIの将来性や期待そのもの自体が否定されたわけではないため、調整が一巡すれば、再び株価が戻してくることが想定されます。


 ただし、これまでのような「AI絡みであれば株高で反応する」というフェーズから、「次のフェーズ」へと移行しつつあるのかもしれません。「しっかり成長できているか(売り上げや利益を伸ばしているか?)」や、「AI投資の財務リスクは大丈夫か?」「手がけるAI投資や技術・サービスが競争優位性を持っているか?」といった具合に、銘柄の選別が行われるでしょう。


 実際に、米国株市場に目を向けると、アルファベット(Google)が新型のAIモデル「Gemini 3」や、AI専用半導体(TPU)の性能が評価されて、株価が高値を更新しています。


 一方、「競争が厳しくなる」ということで、AI半導体分野でこれまで一強だったエヌビディアや、AI投資で先行していたマイクロソフトの株価が伸び悩むといった動きも見られ始めています。AI・半導体相場がまだ継続するにしても、その中身が変わりつつある点は意識しておく必要がありそうです。


為替DI:12月の見通し。ドル/円、クロス円は高値圏も引き続き円安目線が優勢

楽天証券FXディーリング部


 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものである。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示す。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

「12月のドル/円は、円安、円高、変わらず、のどちらへ動くと予想しますか?」


 楽天証券が、個人投資家を対象にドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、回答者の45.52%が「ドル高/円安」、37.67%が「変わらず」、16.81%が「ドル安/円高」に動くと予想していることが分かった。円安予想が円高予想を上回ったのは3カ月連続になる。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安予想から円高予想の割合を引いて求めたDIは+28.71になった。先月のDI(+27.62)から、若干だがさらに円安予想が増えた。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示す。


日米金融政策期待感の違いと止まらぬ円安


 円安が止まらない。10月初めに高市早苗氏が自民党総裁選に勝利し、ギャップアップして始まったドル/円相場は、多少の下押しもあったものの、窓埋めとはならずにほぼ一方向に上昇している。その他通貨と比べても円売りは顕著で、ユーロ/円は通貨ユーロ導入以来の高値を更新している。


 大きな要因の一つに、日米の金融政策に対する期待感の違いが挙げられる。


 先日、長らく続いた政府機関閉鎖の解除を発表した米国だが、閉鎖期間中は主要経済指標の発表がストップされていた。これにより実体経済の把握が難しくなり、判断材料不足から、市場では12月FOMCでの利下げ見送りが優勢となっている。


 シカゴ先物取引所(CME)が公表しているFedWatchでも、次回会合での据え置き確率は60%超えとなっている(11/21時点)。また、一部予想を上回る統計結果の発表なども相まって、再び浮上するインフレに対する警戒感も金融政策に影響を与える可能性があります。このバランス次第の流動的な状況は、12月まで継続しそうだ。


 一方の日本銀行に関しても、次回12月会合での利上げ期待はあまり高まっていない。ただし、日銀審議委員の間でも徐々に利上げ判断を妥当とする声が増えてきていることも事実。


 植田和男日銀総裁は、11月18日に高市首相と、19日に片山さつき財務相らと続けて会談を行ったが、為替に関する具体的な話は限定的であり、足元の利上げ確率は40%程度にとどまる。為替介入についても、口先にとどめるだけで介入の実施に踏み切るハードルは今のところ高そうだ。


 高市氏の財政拡張的な政策への懸念から国内債の長期金利は上昇し、株価も不安定な状況が続いている。為替もこれまでの経験則的な株式との相関性は失われつつあり、より政治的要因に振り回される相場環境といえよう。


 海外の主なプレーヤーが年末にかけてオペレーションを終息させる動きとなることが予想される。このことから、円キャリーポジションが来年どの程度のアジェンダとなるのかを占う上でも、月末にかけてのドル/円相場に注目したい。


ユーロ/円


 ユーロ/円相場の先行きについては、回答者の37.24%が「ユーロ高/円安」、51.71%が「変わらず」、11.05%が「ユーロ安/円高」に動くと予想していることが分かった。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安予想と円高予想の差であるDIは+26.19で、前回の+20.85からさらに増加し、過去1年間の最大値を更新した。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

豪ドル/円


 豪ドル/円相場の先行きについては、回答者の28.52%が「豪ドル高/円安」、61.52%が「変わらず」、9.95%が「豪ドル安/円高」に動くと予想していることが分かった。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安予想と円高予想の差であるDIは+18.57で、前回の+15.94から増加しこちらも過去1年間の最大値を更新した。


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲


 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい金融商品」「今後、投資してみたい国(地域)」で、「国内株式」「日本」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢はページ下部の表のとおり、それぞれ13個です(複数選択可)。


図:今後、投資してみたい金融商品、国(地域)で「国内株式」「日本」を選択した人の割合


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 2025年11月の調査で、「国内株式」を選択した人の割合は72.14%、「日本」を選択した人の割合は84.00%でした。ともに近年の最高水準です。


 10月21日の高市政権発足がきっかけで、金融商品として「国内株式」に、国(地域)として「日本」に、投資してみたいと考える人の割合が高止まりしていると言えます。


 調査が行われた期間(11月17日から19日)は、高市首相が日本銀行の植田総裁と会談をしたり、責任ある積極財政を推進する議員連盟による提言を受け取ったりしたタイミングでした。


 政権発足からおよそ1カ月が経過し、具体的な施策が見えはじめたことで、高市政権への期待が膨らみました。その期待の膨らみが「国内株式」や「日本」を選択した人の割合を高めたと考えられます。


 今後も、さまざまな懸念点を抱えつつもスピード感を伴って運営を行う高市政権の動向、そして「国内株式」「日本」を選択した人の割合の動向に注目していきたいと思います。


表:今後、投資してみたい金融商品 2025年11月調査 (複数回答可)


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2025年11月調査 (複数回答可)


投資家調査:日経平均見通し「弱気派」増加。トレンド転換の始まり?
出所:楽天DIのデータより筆者作成

▼あわせて読みたい

個人投資家アンケート:2026年注目の材料は?1位「AI」


(楽天証券経済研究所)

編集部おすすめ