11月のドル/円は高市政権への懸念や、ドル高により円安進行でしたが、月後半からそれまでの一本調子の円安環境に変化が生じました。今週のドル/円は、来週にはFOMCも控えていますので、高まっている日銀の利上げ期待による円高は様子見する週になりそうです。


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高まる日銀への利上げ期待!12月は円安環境の変化を確認

 11月のドル/円は、高市政権の21兆円規模の補正予算による財政拡大懸念の円売りや、米政府機関閉鎖解除の期待による米株高を受けてドル高となり、158円手前まで円安が進みました。


 しかし、月後半は円安けん制が強まり、介入警戒感が強まったことから円安の勢いは鈍くなり、また、米連邦準備制度理事会(FRB)の12月利下げ期待が高まったことや日本銀行の早期利上げ期待が浮上し、156円台前半で月越となりました。


 12月は引き続き日本の財政拡大懸念や、日中摩擦による景気への悪影響が懸念され、円売り地合いが続くものと予想されます。しかし、これまでの一本調子の円安環境が11月後半から少し変わってきたことから12月はその変化を確認する月となりそうです。


 前回、このような円安環境の変化のお話をしましたが、12月に入って、その変化がより鮮明になったことが確認できました。


 12月1日、日銀の植田和男総裁は名古屋市の講演で、次回会合での利上げの可能性に言及しました。植田総裁は、12月18~19日に開催される金融政策決定会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と述べました。


 1月に利上げを決定した時にも、植田総裁や氷見野良三副総裁が直前の講演で利上げを判断する可能性に言及していたことから、市場では12月利上げ期待が一気に高まりました。日経平均株価は1,000円超の下落となり、長期金利は一時1.875%まで上昇し、ドル/円は155円台へ円高に動きました。


 2日には日経平均が上昇するとともに、再びドル/円は一時156円台まで戻したものの、終値は155円台となりました。その背景には日銀の利上げが長期的に続くのかどうかの不透明感もあるようですが、講演で植田総裁は「利上げをしてもまだ緩和的だ」との認識を示している点には留意したいと思います。


 植田総裁は追加利上げについて、「緩和的な金融環境の中での調整で、景気にはブレーキをかけるものではなく、アクセルをうまく緩めていくプロセスだと考えている」と指摘し、景気に大きな悪影響はないとの考えを示しています。


 その景気については、6四半期ぶりにマイナス成長となった日本の7-9月期国内総生産(GDP)は米関税の駆け込み需要と反動減を考慮すれば、「マイナス成長は一時的」との認識を示し、「景気は緩やかに回復しているという基調判断に変化はない」と述べています。


 10月の会合で利上げを慎重にさせた米関税政策や米経済の不確実性については、「米国内で悪影響がさほど顕在化しておらず、日本国内でも企業収益に与える影響が限定的」と指摘し、不確実性は「数カ月前よりかなり低下した」との認識を示しています。


 そのような景気認識の中で「利上げをしてもまだ緩和的だ」との発言は、10月会合での慎重姿勢から比べるとかなり踏み込んだ発言で、来年の追加利上げも示唆する印象を受けます。


 10月の会合後の記者会見で、利上げの判断材料として重要視する来年の春闘の「初動のモメンタム(勢い)」については、「賃上げの原資となる企業収益は、全体として高水準が維持される見通し」と指摘し、「企業の賃上げスタンスに関して本支店を通じて精力的に情報収集を行っているところだ」と次回の会合に向けて動いていることを示した点も、市場は追加利上げの判断時期が近いとの見方を強めました。


 足元の円安についても踏み込んだ発言をしています。「輸入物価の上昇が国内価格に転嫁され、物価の押し上げ要因になる」との見方を示し、円安に伴う物価高が利上げを後押しする材料になることを示唆しました。


 高市早苗首相は金融緩和を望んでいるため、早期の利上げは難しいだろうと市場はみていましたが、今回の植田総裁の発言からは、11月18日の高市首相・植田総裁の初会合で政府との調整がついたのではないかと思わせる内容でした。政府も利上げが景気に悪影響を与えることなく、円安も抑制できるのであればよしとしたのではないでしょうか。


来週のFOMCを控え、今週の円高は様子見?

 12月1日の植田総裁の講演ポイントは以下の通りとなり、明らかに10月の慎重姿勢とは異なり、来年の利上げ姿勢についても示唆する内容でした。市場は2日には円安に動きましたが、日銀の姿勢の変化は徐々に市場に効いてくるのではないかと思わせる内容でした。


 12月18~19日の日銀会合まではまだ2週間以上あるため、15日の日銀短観や、16日の米雇用統計、18日の米11月消費者物価指数(CPI)の内容によっては、日銀が判断を先送りする可能性もあるため、これらのことも留意して相場に臨む必要があります。


  • 12月18~19日の日銀会合で利上げの可能性に言及
  • 追加利上げは緩和的な金融環境の調整で、景気のブレーキではなく、アクセルを緩めていくプロセスであり、利上げをしてもまだ緩和的な状況とさらなる追加利上げを示唆
  • マイナス成長は一時的で、景気は緩やかに回復しているという基調判断に変化はない
  • 米関税政策や米経済の不確実性は数カ月前よりかなり低下し、利上げ阻害要因ではない
  • 利上げの判断材料として重要視する春闘について、賃上げの原資となる企業収益は高水準が維持される見通し。「初動のモメンタム(勢い)」については精力的に情報収集を行っていると次回の会合に向けて動いていることを説明
  • 足元の円安について、輸入物価の上昇が物価の押し上げ要因になるとの見方を示し、円安に伴う物価高が利上げを後押しする材料になることを示唆
  • 11月18日の高市首相・植田総裁の初会合で、金融正常化のプロセスについて政府との調整がついたと思わせる内容

 今週は、来週9~10日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えていることから日銀の利上げ期待による円高は様子見となりそうです。


 市場でのFRBの12月利下げ期待は高まっています。ただ、12月9~10日までに11月の雇用統計(12月16日発表)や11月CPI(12月18日発表)が発表されず、FOMC前に発表されるデータは雇用関係では民間の11月ADP雇用統計(12月3日)や11月チャレンジャー人員削減数(12月4日)になります。


 また、物価指標では9月分ではありますが米商務省発表の個人所得消費支出(PCE)(12月5日)しかありません。従って、データ不足によって10月と同じようにFOMC内で再び意見が分かれるシナリオにも警戒したいと思います。


 もし、利下げなしの場合は、利下げ期待で上昇してきた株が失望から急落し、ドル高となる可能性があるため注意したいと思います。しかし、株の下落が大き過ぎるとドル安になるシナリオにも注意したいと思います。


 ただ、間もなく次期FRB議長の人事が発表されることから、トランプ大統領寄りの人物が指名されれば、来年の複数回の利下げ期待が高まるため市場はすぐに落ち着くことが予想されます。


 12月2日、トランプ大統領はハセット米国家経済会議(NEC)委員長が次期FRB議長の候補者との考えを明らかにしました。正式には来年早々に発表するとのことです。米メディアもハセット氏が有力候補と報じています。


 ハセット氏は第1次トランプ政権の経済諮問委員会の委員長を務め、トランプ減税の成立に貢献した人物として知られています。トランプ大統領の側近であり、市場の利下げ期待は来年も高まりそうです。


(ハッサク)

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