先週の日経平均は4週ぶりの下落、5万円を割り込む展開に。日銀会合での追加利上げは、「正常化」と市場は前向きに捉え、株価は反発して取引を終了。
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 日銀利上げ後も日本株上昇は続く?新規上場5社の動きに注目 」
「様子を見ながら」の下落だった先週の日経平均
週末19日(金)の日経平均株価の終値は4万9,507円でした。前週末終値(5万0,836円)からは1,329円安(2.6%安)、週間ベースでは4週ぶりの下落に転じています。
<図1>日経平均の5分足チャート(2025年12月15日~19日)
先週の日経平均は節目の5万円台を下回るなど、大きな下げ幅となりました。図1の5分足チャートから先週1週間の日経平均の値動きを辿ってみると、日中の取引時間中の値動きが5万円、4万9,000円といった「キリの良い数字」の株価水準でもみ合っている場面が多かったことがわかります。様子を見ながら、「落ち着きどころの良い株価水準」を探っていた印象です。
確かに下落基調ではあったものの、パニック的に急落しているわけではありません。「この水準なら買ってもいいかな」「いや、もう少し様子を見ようか」など、売り手と買い手が綱引きをしながら、株価水準を切り下げて行くような展開でした。
つまり、足元の相場は「好材料さえ出てくれば、あっさり上昇できる」状況といえます。
先週の値動きから見えることは?
次に、先週の「様子を見ながら下値を切り下げる」展開となった背景について、材料やイベントの視点からも整理して行きます。
まず、真っ先に挙げられるのが、「AI・半導体関連銘柄への逆風継続と、週末に見えた光」です。
11月以降、株式市場ではAI・半導体関連銘柄が軟調となる場面が増えました。先週も、米 オラクル(ORCL) がミシガン州で計画していた巨額のAIデータセンター建設計画について、主要な出資パートナーであった投資会社「 Blue Owl Capital(ブルー・アウル・キャピタル:OWL) 」が、出資を見送って撤退すると報じられたことでオラクル株が急落しました。
AI投資に対する「財務リスク」が意識され、週前半の株価下落を主導する格好となりました。
日本株市場でも、 ソフトバンクグループ(9984) や アドバンテスト(6857) 、 東京エレクトロン(8035) といった銘柄が下落しました。
さらに、週末にかけて日本銀行金融政策決定会合が控えていたこともあり、利益が出ているAI・半導体株を一旦売却して現金化しようとする動き(ポジション調整)が重なったことも、下げを加速させたと思われます。
しかし、悪いニュースばかりではありませんでした。週末にかけては、半導体メモリ大手の米 マイクロン・テクノロジー(MU) が好決算を発表したのをきっかけとして、AI需要を見直す動きが出始めました。株価調整の一巡感もあって、AI・半導体関連株に買い戻しが入るなど、反発の動きも見え始めています。
また、足元で株価が急落していたオラクル株も、「TikTokの米国事業を、オラクルを中心とする企業連合に売却で合意」というニュースを受けて反発したことも追い風となりました。
そして、もうひとつの動きが、東証株価指数(TOPIX)優位が示す「循環物色」の動向です。
<図2>NT倍率(日経平均÷TOPIX)の推移(2025年12月19日時点)
上の図2は前回のレポートでも紹介した「NT倍率(日経平均÷TOPIX)」の推移です。
▼前回のレポート
年末ラリーはある?日銀「利上げペース」と米経済指標の「答え合わせ」がカギ
先週末19日(金)のNT倍率は14.63倍となり、前週末(12日)の14.85倍からさらに低下しています。これは、ハイテク・値がさ株の影響が大きい日経平均よりも、市場全体・バリュー株の影響が大きいTOPIXの方が、パフォーマンスが良いことを示しています。
実際、先週の日経平均が軟調に推移する一方で、TOPIXは週初に史上最高値を更新する場面がありました。内需株や銀行株、商社株などの「バリュー株」にはしっかりと資金が入り、「循環物色」の流れが続いていたことが分かります。
<図3>東証プライム市場の新高値・新安値更新銘柄数と日経平均(2025年12月19日時点)
また、東証プライム市場銘柄の新高値および新安値銘柄の数と日経平均の推移を示す図3を見ると、11月以降の軟調な相場でも新高値を更新する銘柄が一定数を維持していることがわかります。これは、日本株に対する買い意欲はまだ減退していないと思われます。
週末19日(金)については、AI・半導体関連銘柄をはじめとするグロース株の上昇の方に勢いがあったため、今週は日経平均が優位となり、TOPIXとの値動きのバランスに変化が生じるかもしれません。
日銀会合後の株式市場は上昇の初期反応
先週最大のイベントであった「日銀金融政策決定会合」についても確認します。
結果は市場の予想通り、政策金利を0.25%引き上げ、0.75%程度とする決定がなされました。
教科書的には「利上げ=株安」となりますが、利上げ決定が発表された19日(金)午後の日経平均は株価の反発基調が衰えることなく、前日比505円高で取引を終えています。
この株価上昇の背景には複数の要因が考えられます。まず、市場がすでに利上げを織り込んでいたことによる「アク抜け感」や、一部で警戒されていた「日銀が保有する上場投資信託(ETF)の売却について具体的な言及がなかった」こと。
そして、今回の利上げが景気引き締めではなく、実質金利も依然としてマイナス圏にあるため、「異常な緩和からの正常化」と受け止められていることも影響があるでしょう。
さらに、企業の賃上げや業績回復の流れが続いており、現時点で利上げによる経済への悪影響が懸念される段階にないことも株価上昇につながったと思われます。利上げ決定にもかかわらず、為替が円安に振れたことも輸出関連株の支えとなりました。
また、19日(金)の取引終了後に行われた植田和男日銀総裁の記者会見で、中立金利の引き上げに対する言及がなかったことも、今回の利上げが景気を冷やすためのものではなく「正常化」のプロセスであることが確認され、今週の相場にとって安心感をもたらすと思われます。
ひとまず、日銀会合後の株式市場の初期反応は楽観的です。しかし、今後も利上げが行われた場合、日本企業が業績の成長と賃上げを維持できるのか、そして、取引所が公表している「投資部門別売買状況」で、2025年に入ってからの累積買い越し額が5兆円を超えている海外投資家が、今後も日本株を買い続けるのかが焦点になりそうです。
今週のポイント:「閑散に売りなし」で相場は上昇できるか?
そんな中で迎える今週ですが、欧米市場の多くがクリスマス(25日)やボクシングデー(26日)で休場となります(米国市場は25日のみ休場)。また、国内外ともに、重要な経済指標の発表も少なく、市場参加者が少ない「薄商い」が見込まれます。
相場格言には「閑散に売りなし」という言葉があるように、市場参加者が少ないときは、無理に売り仕掛けをする人もいないため、相場は意外と底堅く推移することが多いとされています。
そのため、堅調な株価推移が基本シナリオとなりますが、薄商いであるがゆえに、ちょっとしたニュースや材料で、「思ったよりも相場が動く」展開も想定しておく必要もあります。
テクニカル分析の視点でも、目先の株価が大きく動くかもしれない兆候があります。
<図4>日経平均(日足)の動き(2025年12月19日時点)
日経平均の日足チャートを示した図4を見ると、株価が25日移動平均線との攻防戦に入っているほか、ここ1カ月ほど「保ち合い」を形成しつつあることが分かります。目先の相場が保ち合いを抜けた方向に、「意外と」動く可能性があります。
また、今週は国内で5社の株式の新規公開(IPO)が予定されています。
先週19日(金)に上場した パワーエックス(東G:485A) は、公開価格割れから一転ストップ高まで買われるなど、非常に荒い値動きを見せました。
薄商いの中で、短期資金がこうしたIPO銘柄に集中し、新興株市場全体を刺激する可能性があります。
<今週のIPO予定>
22日(月): スタートライン(東G:477A)
23日(火):テラテクノロジー(東S:483A)
24日(水):フツパー(東G:478A)、PRONI(東G:479A)
25日(木):リブ・コンサルティング(東G:480A)
中でも、24日(水)に上場するフツパーは、現場(エッジ)向けに、実用的なAIソリューションを提供する、いわゆる「エッジAI」企業であり、業績面でも黒字化を実現するタイミングでの上場です。そのため、注目度は高く、相場のムードに影響を与えるかもしれません。
このほか、今週末の26日(金)は、12月の権利付き最終日となります。配当や株主優待の権利を得るための買い(駆け込み需要)や、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠を使い切るための買い、さらに税金確定のための益出しの売りなどが出てくることも考えらえます。
2025年相場も残り7営業日となりました。相場は「掉尾の一振(とうびのいっしん)」と呼ばれる、年末株高の思惑も高まりそうですが、海外勢が不在の中で株価が押し上げられるのか、あるいは、売りに押される中で来年に向けた仕込み場となるのか。最後まで気を抜かず、相場の行方を見守っていくことになりそうです。
(土信田 雅之)

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