先週の日経平均は5万4,000円台を意識し、「選挙は買い」の経験則を地で行く動きで、海外の株式市場とは一線を画す「独自の強さ」を見せました。今週は、衆議院の解散や日銀会合など、注目イベントが多い週となります。

期待先行で上昇してきた今週の日本株は、材料出尽くしで反落か、さらなる上値追いかの「ヤマ場」を迎えることになりそうです。


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先週の振り返り:「選挙は買い」を地で行く展開

 先週末1月16日(金)の日経平均株価は、前週末比1,997円高の5万3,936円で取引を終えました。週間ベースでは約3.8%の上昇となり、強い相場地合いが継続しています。


 14日(水)の取引時間中には5万4,487円の高値をつける場面もあるなど、大発会からの2週間を振り返ってみると、日経平均の上昇幅は3,597円に達しています。


<図1>日経平均(日足)の動き
今週の日本株、上昇か反落か?「ヤマ場」の衆議院解散でどう動く?
出所:MAEKRTSPEEDII

 日足チャートを確認しても、その勢いが感じ取れます。2025年11月4日の取引時間中につけた高値5万2,636円を上抜き、最高値圏に足を踏み入れています。


 先週の相場を牽引した主因は、国内政治の動きでした。前週末に 「1月23日召集の通常国会冒頭で衆議院解散」との観測報道が流れ、市場は「その後の総選挙で与党が勝利し、政権基盤が強固になる」とのシナリオを先取りする格好で買いが膨らみました。


 特に、高市政権が掲げる「責任ある積極財政」や「重点投資対象の17分野」を連想させる銘柄、防衛関連や宇宙関連、エネルギー関連、銀行関連などが注目され、「選挙は買い」という経験則を地で行く展開だったと言えます。


 また、中国政府による対日輸出規制強化への懸念が浮上したことで、代替需要や価格上昇の思惑からレアアースなどの資源・素材関連株が動意づきました。さらに、半導体受託製造最大手の台湾 TSMC(TSM) が予想を上回る好決算と強気な設備投資計画を発表したことも、半導体関連株の刺激材料となり、株式市場を押し上げる一因となりました。


実は、微妙なバランスの上に立っている日本株

 こうした先週の相場で特に印象的だったのは、日本株の「独自の強さ(デカップリング)」です。


 先週の米国株市場は、重要イベント(消費者物価指数などの経済指標)を控えた様子見ムードが広がったり、利下げ観測の後退で株価が軟調になったりする場面がみられましたが、日本株はその流れに呑まれることなく上昇基調を維持しました。


 これは先述した通り、国内固有の要因である「選挙への期待」が、海外のネガティブ要因を相殺し、それ以上に買い意欲が上回った結果と考えられます。


<図2>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年1月16日時点)
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出所:MAEKRTSPEEDIIおよびBloombergデータを元に作成

 上の図2は、2025年末を「100」として指数化した主要国の株価指数のパフォーマンスを比較したチャートになります。米国(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数)や欧州600、中国(上海総合、香港ハンセン)などの指数が横ばい、あるいは伸び悩んでいる中で、日経平均と東証株価指数(TOPIX)のパフォーマンスの強さが目立っています。


 また、視野を少し広げて一昨年(2024年)末を「100」としたグラフで比較しても、日本株の優位性は変わらず、中長期的な視点でも力強いトレンドが継続していることが確認できます。


<図3>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2026年1月16日時点)
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出所:MAEKRTSPEEDIIおよびBloombergデータを元に作成

 もちろん、日本株も高値警戒感や利益確定の売りも出ていたと思われます。しかし、日経平均の5分足チャートで先週一週間の様子を振り返ると、5万4,000円を挟んだ上下500円の範囲内でもみ合う場面が多くなっており、値動き自体は比較的安定していたことが確認できます(図4)。


<図4>日経平均の5分足チャート(2026年1月13~16日)
今週の日本株、上昇か反落か?「ヤマ場」の衆議院解散でどう動く?
出所:MAEKRTSPEEDII

 言い換えると、5万4,000円割れで買いが入る「下値の堅さ」と、5万4,000円を超えてくると売りが出てくる「上値の重たさ」が交錯している状態と見ることもできます。現在の株価は、この5万4,000円という株価水準を巡って、強気派と慎重派の綱引きが行われており、非常に微妙なバランスの上に成り立っている状態です。


 そのため、何か新しい材料やきっかけが出て、バランスの均衡が傾いた場合、その方向に大きく相場が動くことが多いため、今後の動向には注意が必要です。


今週の日本株はヤマ場を迎える?

 そんな中で迎える今週ですが、国内外で注目材料が多く、日本株にとっては「ヤマ場」を迎えることになりそうです。


 最大の注目イベントは、週末23日(金)の通常国会召集と、その冒頭での衆議院解散です。株式市場はすでに、「解散・総選挙があるだろう」、「与党が勝って政策の実行が進むだろう」という期待を先取りして上昇してきました。


 そのため、解散が事実となった際に、「材料出尽くし」となり利益確定売りが優勢になるのか、それとも選挙戦突入でさらに政策期待が高まって一段高となるのか、という分岐点が今週訪れることになります。


 そして、そのカギを握るのが、19日(月)に予定されている高市早苗首相の記者会見です。

ここで高市首相が、なぜ今解散するのかという「大義」や「狙い」を国民に対して明確に説明し、納得感のあるメッセージを打ち出せるかがポイントになります。


 例えば、これまでの株高の背景にある「積極財政」や「経済安全保障」といった政策について、その規模感や具体的なロードマップにまで踏み込んで言及があれば、市場はこれをポジティブに受け止め、株価がもう一段上のステージを目指す原動力になる可能性があります。


 反対に、解散の意図が「議会の構図ありき」や「旧来の自民党政治への逆戻り」という印象を与えた場合、あるいは選挙実施による政治空白で実現が遅れてしまう政策の説明が不足していると受け止められてしまうと、失望売りの展開になるリスクもあります。


 そのため、衆議院の解散自体は23日(金)ですが、選挙絡みの相場は今週の早い段階で動き始めることになりそうです。


 また、今週22日(木)から23日(金)にかけては、日本銀行の金融政策決定会合が開催されます。市場が描くメインシナリオでは、足元で選挙を控えている政治情勢も考慮し、今回の会合での政策金利変更は見送られるとの見方が大勢を占めています。会合後の植田和男総裁の会見も、選挙への配慮から慎重な言い回しに終始し、「無難」に通過すると予想されています。


 とはいえ、今回の会合では、四半期ごとの経済・物価情勢の展望(展望レポート)が公表されます。ここで示される物価見通しが上方修正されたり、委員の見解がタカ派(利上げ積極姿勢)に傾いていることが示唆されたりすれば、市場は「選挙後の早期利上げ」を織り込み始めることも考えられます。「日銀会合は無風通過」と決め打ちし過ぎない方が賢明かもしれません。


 このほか、海外でも重要イベントが続きます。 米国では、週初19日(月)がキング牧師生誕記念日で休場となりますが、その後は決算発表が本格化します。


  ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) や プロクター・アンド・ギャンブル(PG) 、 スリーエム(MMM) といった優良株に加え、テック分野では インテル(INTC) や ネットフリックス(NFLX) などの決算が控えています。特にハイテク企業の業績や見通しは、日本の半導体・電子部品株にも直接的な影響を与えるため、その内容を注視する必要があります。


 さらに中国でも、19日(月)に10-12月期の国内総生産(GDP)や、12月分の鉱工業生産、小売売上高などの主要経済指標がまとめて発表されます。同日には国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを公表する予定もあり、世界経済の減速懸念が払拭されるかどうかも注目されそうです。


帯びる「過熱感」と「スピード感」に注意

 これらのイベントを無難に通過し、さらにポジティブなサプライズも加われば、日本株がさらなる高みを目指す展開も十分に考えられます。しかし、ここで冷静に押さえておきたいのが、相場の「スピード感」と「過熱感」です。


 前回のレポートでも指摘しましたが、株価の上昇ピッチがあまりにも速すぎると、どうしても反動安のリスクが高まります。 


▼前回のレポート

米経済指標、米金融など企業決算に注目。強気相場の死角と「スピード違反」に警戒


 2025年末の日経平均終値は5万0,339円でしたが、仮に、ここから株価が5万5,000円台に乗せてくると、年初からの上昇率はわずか1カ月足らずで10%に達することになります。5万5,372円がちょうど10%高の水準ですが、さすがにこれほどの短期間での急騰は「スピード違反」と言わざるを得ず、市場参加者の間でも高値警戒感が意識されやすくなります。


 さらに、中長期的な相場の方向性を見る際によく使われる「200日移動平均線乖離率」でも確認してみると、先週末16日(金)時点の乖離率はプラス25.03%でした。一般的に、この乖離率がプラス20%を超えると「買われすぎ(過熱)」と判断されますが、現在はその水準を大きく超えています。


<図5>日経平均(日足)と200日移動平均線乖離率の推移(2026年1月16日時点)
今週の日本株、上昇か反落か?「ヤマ場」の衆議院解散でどう動く?
出所:MAEKRTSPEEDII

 実際に、過去のデータを遡ってこのグラフを見てみると、乖離率がプラス20%を超えたあたりで株価の上昇が止まり、調整局面入り(移動平均線の方へ戻る動き)することが多いという傾向が読み取れます。


 直近のピークでは、プラス30.52%まで乖離が進んだ場面もありますが、仮に現在の200日移動平均線の値(16日時点で4万3,137円)をベースに、ここまで乖離が進んだ場合を計算すると、5万6,302円という株価も導き出せます。


 しかし、それはあくまで「例外的な熱狂」のケースです。したがって、基本的には「目先で乖離が進んだとしても、まもなく修正される」展開をメインシナリオとして想定しておいた方が良いかもしれません。


(土信田 雅之)

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