心がときめく銘柄選びと「DIE WITH 1,000万円」の出口戦略とは？優待投資家・シニアちゃんインタビュー[後編]

　優待投資、配当生活、そしてYouTuber活動と、休む間もなく人生を謳歌するシニアちゃん。後編では、2025年のMVP銘柄とYouTubeチャンネルの裏側、そして優待投資の出口戦略に迫る。

モノと体験。優待を楽しめる三つのカテゴリー

トウシル：前編では投資スタイルについて伺いましたが、後編ではシニアちゃんの代名詞でもある「株主優待」について詳しくお聞きします。現在100銘柄ほど保有されているとのことですが、優待の使い分けや楽しみ方のコツはありますか？

シニアちゃん：優待投資は本当に奥が深くて楽しいですよ。私の中では、優待を三つのカテゴリーに分けて楽しんでいます。

　一つ目は「自社製品」が届くタイプ。 明治ホールディングス（2269） や ライオン（4912） などですね。最初は「荷物が増えちゃったらどうしよう」と思っていたのですが、いざ届くとやっぱりうれしいんですよ。 キッコーマン（2801） なんて、黄色いかっこいい箱でドーンと届くんです。詰め合わせの中には普段自分では買わない商品が入っていることもあるので、世界が広がる楽しさもあります。

（トウシルより：2025年当時の優待品です。状況により優待品や条件が変更になる場合がありますので必ず事前に公式ホームページなどでご確認ください）

トウシル：二つ目はなんでしょう？　金券優待とか…？

シニアちゃん：その通り！　二つ目は「金券」系の優待品です。QUOカードやギフト券などですね。

トウシル：三つ目はなんでしょう？

シニアちゃん：「割引優待」です。これは、使う時にお金を出さなければいけませんが、自分の生活の質（QOL）を上げるためには欠かせません。今年、 三越伊勢丹ホールディングス（3099） の優待を使って、憧れだった「ニーチェアエックス」という椅子を買ったんです。通常は7万～8万円するのですが、優待を使える三越伊勢丹のオンラインストアで、10％割引で買いました。7,000円も安くなるのは大きいですよね。

トウシル：シニアちゃんの株主優待は、モノだけでなく体験も楽しむスタイルなんですね。

シニアちゃん：そうなんです。特に感動したのは カンロ（2216） の優待ですね。優待で「ヒトツブカンロ満喫セット」を選べるんですが、これに入っている「グミッツェル」がすごいんですよ。

　グミッツェルは、食べると「パリッ、シャリッ」といい音がする、ASMR動画（耳や目から入ってくる刺激によって感じる心地よい感触のこと）でも人気のお菓子です。そのレアなお菓子が株主として手に入る特別感は格別です。

　思わずテンションが上がってしまい、飼っているワンちゃんにメガネみたいに乗せて写真を撮ってインスタに上げたところ、カンロさんの公式から反応を頂いてテンションが上がりました！　そういう世界が広がる瞬間もたまらなく楽しいんですよね。

かわいいパッケージに入っている店舗限定の「グミッツェル」は YouTube や Instagram でも大人気の商品。これが自宅へ届く喜びを、シニアちゃんもショート動画で開封自慢したところ、カンロ公式からコメントを頂き、オンラインショップに掲載されて大感激

大型株がまさかの優待新設！2025年のMVP銘柄とは？

トウシル：2025年は市場にもいろいろ動きがありました。シニアちゃん的MVP銘柄を挙げるとしたらどの銘柄を選びますか？

シニアちゃん：楽しい銘柄ばかりなので悩みますが…。三つになっちゃいますけど、 良品計画（7453） と トヨタ自動車（7203） 、 JR九州（九州旅客鉄道：9142） が個人的なMVPです。

トウシル：三つも！　あれ？　でも、良品計画はだいぶナンピンしたというお話でしたよね。

シニアちゃん：そうなんですよ。2年くらいナンピン地獄で苦しんだんですが、今年に入って株価が急回復してくれました。プラスになったタイミングで分割した株を少し売却して利益も出せましたし、優待も拡充されました。本当に苦労が報われた思いです。

　そして何より衝撃だったのが、トヨタ自動車の優待新設です！

トウシル：あれはマーケットでも話題になりましたね！

シニアちゃん：大ニュースでしたよね！　トヨタのような日本を代表する巨大企業は、機関投資家への配慮から優待はやらないだろうと思い込んでいました。

　これは優待投資家にとって大きな希望になりました。「優待廃止」のニュースに怯えていた私たちに、「トヨタがやるなら大丈夫」という安心感をくれましたから。うれしくてうれしくて、発表後すぐにNISA枠で買いましたよ。

　トランプショックで一時的に含み損になったりもしましたが、「トヨタがつぶれる時は日本がつぶれる時だ」と腹をくくっているので、安心して長期保有します。

トウシル：そして3銘柄目のJR九州！　YouTubeでも旅行に行かれている動画を出してますね。

［1］抽選で当たる株主招待ツアー。普段は見られない場所も見学できる体験型の優待［2］九州在住でなくても恩恵が受けられる優待品も用意されている［3］九州新幹線「さくら」に優待券で乗車して旅行へ！［4］おいしい名産品も優待券で満喫！　※画像はいずれもYouTube公開時のもの。現在は優待品となっていない場合があります。

シニアちゃん：JR九州の株主優待は、1日乗車券とグループの施設で使える割引券です。有効期限が決まっているので、急いで使わないといけないのが逆にいいんですよね。このチケットがあるから行けた場所が結構あります。私にとってJR九州の株主優待は「思い出を増やせる優待」なんですよ。JR九州はMVPを通り越して、もう「推し銘柄」ですね！

チャンネル登録者ゼロからのスタート。共感を呼ぶ等身大のYouTube

トウシル：等身大の投資を発信されているYouTubeチャンネルですが、始めたきっかけは少し意外なものだったとか。

シニアちゃん：そうなんです。2年半ほど前、当時の夫が病気になり、同時期に父も亡くなり、ライフイベントが一気に重なってキャパオーバーになってしまったんです。夫の看病に専念するために、当時やっていた講師の仕事も辞めました。積み重ねてきたものもありましたが、いったん全部手放さなければいけませんでした。

　その後、看病生活の中で少し時間ができた時に「何か家でできて収入になることはないか」と考えたのがYouTubeでした。顔出しも恥ずかしいし、家族にも内緒で、こっそりと（笑）。

トウシル：最初から順調だったわけではないんですね。

シニアちゃん：全然です！　最初は再生回数3回とかで、そのうち1回は自分で見た回数だった…、みたいな（笑）。登録者も増えたり減ったりで。

「やっぱり誰も見てくれないんだ」と落ち込む日もありましたが、まずは100本動画を出すまでは辞めないと決めました。そうして淡々と続けていたら、アルゴリズムが変わったのか、ある日突然再生数が伸び始めたんです。そして決定打となったのが、有名な投資家YouTuberの「 カブ主優待ライダー 」さんが、私のチャンネルを紹介してくださったことでした。

　そこから一気に登録者さんが増えて、収益化も達成できて。ライダーさんには本当に感謝してもしきれません。

優待投資家の大御所でトウシルに何度も登場いただいている「カブ主優待ライダーさん」のYouTubeで紹介されてからチャンネル登録者数が急増！「登録者数が少ない時点から注目して見守っていたチャンネル。50代で株式投資を始めたという意欲もポテンシャルが高い！」と高評価。

トウシル：シニアちゃんの動画は、専門的な分析というより、身近な悩みや喜びがリアルに伝わってくるのが魅力だと思います。

シニアちゃん：私は専門家ではありませんし、難しいテクニカル分析もできません。ただ「累進配当の銘柄を探したよ」とか「この優待が届いてうれしかったよ」という、50代のリアルな投資生活を発信しているだけなんです。

　しかし、そのリアルさが同じように老後に不安を感じている同年代の方々の共感を呼んだのかもしれません。「動画を見て勇気が出ました」というコメントをいただくと、本当にやっていて良かったなと思います。

心穏やかに「DIE WITH 1000万」。シニアちゃん流の出口戦略

トウシル：YouTubeはチャンネル登録者が4万人を突破しました。動画を拝見すると配当も順調に伸びてらっしゃるそうで。

シニアちゃん：今は100ほどの銘柄に分散投資をしています。直近の決算でいくつかの銘柄がちょっと増配してくれたので、今年は税引後の配当金が140万円台に乗りました。

トウシル：今後はどのような投資戦略を考えているのでしょうか。

シニアちゃん：実はちょっと現金比率を高める方向に動こうかと考えているんです。以前は「もっと資産を増やさなきゃ」と焦っていた時期もありました。でも、ふと立ち止まった時に、お金を増やすことが目的になってしまって、今の楽しみを犠牲にしている自分に気づいたんです。

　現在は離婚を経て、配当金とYouTubeの収益だけで生活しています。年間配当金が税引後で140万円くらいまで育ってきた今、これからは配当金を再投資に回すのではなく、今の生活を充実させるために使おうと思っています。いわゆるサイドFIREのような感覚ですね。

トウシル：シニア世代ならではの投資への向き合い方かもしれません。そこで出てくるのが、独自の出口戦略ですよね。

シニアちゃん：はい。ベストセラー「 DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール 」の中で、「資産ゼロで死ぬ」というキーワードがありますが、心配性の私にはハードルが高すぎます（笑）。だって、120歳まで生きちゃったら最後に資産がゼロどころかマイナスになるかもしれないじゃないですか。そんな恐怖には耐えられません。

　だから私は「DIE WITH 1,000万円」を提唱したいです。動画の視聴者さんがコメントしてくれた言葉なんですが、1,000万円くらい残して死ぬのが、精神的に一番ちょうど良さそうだなと。年齢とともに3,000万円、2,000万円と資産の目標額を下げていき、最後は1,000万円残れば御の字。それくらいの「緩やかな出口」が、心配性の私には合っている気がします。

　でもYouTubeはがんばりますよ。目指せ銀の盾です！

トウシル：シニアちゃんと同世代の方の中には、今後の資産形成や年金に不安を感じている方も大勢いると思います。悩めるシニア世代にメッセージをお願いします。

シニアちゃん：50代、60代からでも、決して遅くはありません。あの時、勇気を出して楽天証券の口座を開設していなかったら、とは想像できません。それくらい、投資は私の人生を明るく変えてくれました。

　もちろん株価は上下しますが、3年後、5年後の自分から見れば、今の下落なんて大したことないかもしれません。まずは1株からでも大丈夫です。好きな企業の株を買ってみてください。そして優待の封筒が届くときの高揚感を味わってほしいです。

　相場が良い時も悪い時もありますが、優待と配当があれば「まあ、いいか」と笑って過ごせます。今から投資を楽しめるなら、きっと未来は明るく変わります。ぜひ一緒に投資を楽しんでいきましょう。

トウシル：シニアちゃんの「楽しむ力」に勇気を頂きました。本日はすてきなお話をありがとうございました！

投資歴5年で配当140万円！50代で始める人生を豊かにする投資とは？優待投資家・シニアちゃんインタビュー[前編]

（トウシル編集チーム）