<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>
2025年の中小型株まとめ 非プライム市場で出遅れ割安株20選
指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~

2025年の中小型株ハイライトは「プライムの小型バリュー株が頑張った!」

 今年も日本株は強かった! その象徴的な出来事でいえば、なんといっても「日経平均株価5万円」でしょう。この出来事が、2025年の日経MJヒット商品番付にも登場。東の横綱「大阪・関西万博」、西の横綱「国宝」、東の大関「ドジャース連覇」、西の大関「Nintendo Switch 2」に続く、東の関脇が「日経平均5万円」でした。


 2025年は出足つまずき、4月には一時3万1,000円台まで調整。5万円どころか、4万円も無理筋ムードが広がりました。


 ここでの嫌気材料は、年明けに米47代大統領に就任したトランプ氏の暴走でした。「タリフマン(関税男)」に拍車がかかり、自動車産業などが大打撃になることを警戒。「天災ではなく人災のため、中央銀行が協調して助ける話にもならない」との声も挙がり、もはやお手上げムードでした。


 ただ、その後、トランプ米大統領が前言撤回する中で買い戻しが進み、そこにAI株ブームが乗ったことで予期せぬ大相場に発展しました。個別銘柄では、半導体関連の アドバンテスト(6857) 、オープンAIに出資する ソフトバンクグループ(9984) が爆上げし、この2銘柄で日経平均をパワーリフティング。


 絶対的王者に見えた ファーストリテイリング(9983) を抜き、日経平均の指数ウエートトップがアドバンテストになったのは感慨深い現象でした。また、データセンター関連の フジクラ(5803) は、前年6倍になった株価が今年さらに約3倍に。プライム市場で最も上昇した株は キオクシアホールディングス(285A) で、前年比で一時8倍以上に爆騰しました。


 最高値を付けたのは10月末でしたが、ここでは初の女性首相となる高市早苗総理の誕生と、高い支持率でのスタートがカタリストになりました。


 高市総理の誕生に向けた外国人の爆買いも話題となりましたが、ここでも「日経平均ばかり上がって、他の株は大して上がっていない」はよく出たボヤキでしたね。

また、年明けに日本銀行が政策金利を引き上げ、年末にかけても再度の利上げ思惑が浮上しています。金利上昇メリット業種の銀行株の強さも目を引きました。


 そんないろいろあった濃厚な年でしたが、中小型株の多いスタンダード、グロース市場は影の薄かった1年でもありました。パフォーマンス面ではグロース市場が今年もさえず。


 グロース市場には半導体株がいないし、銀行株もいないし、建設株だっていない…そりゃ仕方ないです(^^;とも言えそうですが、いかがでしょうか? 需給面でいえば、グロース市場は外国人買いの恩恵などないですし(買っているのは個人投資家ばかり)、今年も高水準だった自社株買いも小粒。仕方ないですよね…。


【スタンダード・グロース】2025年の騰落率TOP10 市場 コード 銘柄名 年間
騰落率 時価総額
(億円) グロース 2334 イオレ 768% 142 スタンダード 8105 Bitcoin Japan 600% 175 スタンダード 5721 エス・サイエンス 505% 218 グロース 4889 レナサイエンス 486% 221 グロース 6574 コンヴァノ 412% 524 グロース 3692 FFRIセキュリティ 308% 668 スタンダード 5985 サンコール 287% 366 スタンダード 7018 内海造船 272% 348 グロース 7409 AeroEdge 272% 256 スタンダード 7711 助川電気工業 267% 422 ※株価データは12月5日終値時点 【スタンダード・グロース】2025年の騰落率WORST10 市場 コード 銘柄名 年間
騰落率 時価総額
(億円) スタンダード 8894 REVOLUTION ▲82% 67 グロース 198A PostPrime ▲77% 15 グロース 241A ROXX ▲72% 31 スタンダード 2743 ピクセルカンパニーズ ▲71% 26 グロース 190A Chordia Therapeutics ▲67% 73 スタンダード 4935 リベルタ ▲60% 114 グロース 288A ラクサス・テクノロジーズ ▲59% 33 グロース 4583 カイオム・バイオサイエンス ▲59% 76 グロース 281A インフォメティス ▲58% 22 グロース 4490 ビザスク ▲57% 42 ※株価データは12月5日終値時点

 スタンダード、グロース市場の2025年の上がった株、下がった株ランキングも集計しておきました(12月5日時点)。上がった株で目立つのは…「ビットコイン買います!」宣言で爆上げした面々(これ悪ふざけ過ぎましたよね)。


 トンデモナイ上昇率(※これでも年初来高値から見るとどれも急落した後です)を記録した イオレ(2334) 、 Bitcoin Japan(8105) 、 エス・サイエンス(5721) 、 コンヴァノ(6574) が「ビットコイン買います系」。


 業績の悪い赤字企業で、時価総額でも新しい上場維持基準を満たせなそうな企業による株価押し上げの起死回生策として流行。新事業に挑戦しますというものの、やることはビットコインを買うだけ(それをビットコイン・トレジャリー事業などと呼ぶ)。


  メタプラネット(3350) の成功例に続けとばかりに、早めに動いた株ほど株価爆上げが実現しました。

スタンダードの老舗繊維商社だった堀田丸正は、商号を「Bitcoin Japan」にまで変更させる大胆なモデルチェンジ…。


 そのほか、高市首相への期待によるテーマ株物色で(=高市トレード)とサイバーセキュリティ関連株、核融合関連株などテーマ株が値上がりでランクイン。一方で、グロース市場の2030年以降の上場維持基準である時価総額100億円を下回る超小型グロース株など中心に、業績の悪い銘柄などから年初来で株価半値以下の事例も多く出ました。


 なお、年初来騰落率(12月5日終値時点)は日経平均株価が+26.6%で、東証株価指数(TOPIX)の同+20.7%を大幅アウトパフォーム。その中で中小型株市場の東証スタンダード指数(+17.8%)、東証グロース指数(+6.0%)はTOPIXにも負けました。


「中小型株は苦しかったね」と総括できそうですが、輝いたのがTOPIXスモールバリュー指数。つまりは、プライム市場に上場する割安株(低PBR株)のことですが、アノ日経平均を上回る+29.3%はお見事!


新NISAで中小型株!来年の銘柄アイデアは…「非プライムで増殖する中小型バリュー株に注目!」

 スタンダード、グロース市場に関しては、基本線として2026年も引き続きプライム市場に対して分が悪い環境が続くと想定しています。「プライム市場の地合いが良ければ、上昇してもプライム市場には負けるだろうし、プライム市場の地合いが悪ければ、プライム市場以上に下落するだろう」というイメージです。


 新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)や株高地合いの長期化、そしてインフレヘッジなどへの意識を背景に、株式市場に資金を投じるプレーヤーの数は年々増えています。これは本来、流動性の向上(売買代金の増加)を通じてスタンダードやグロース市場に上場する銘柄にはプラスのはずです。ただ、それが起きていないのがここ数年で、悩ましい問題となっています。


 個人投資家の数は増えていますが、金額ベースでは海外投資家の資金流入が2025年は目立ちました。

外資系証券の顧客にヒアリングしたレポートなどを見ても、日本株市場に関心を高める海外機関投資家が増えているのは確かなようです。


 ただ、そうした属性の投資家が求める時価総額、流動性の基準は高く、新興株市場はその要求を満たす銘柄が少ない市場です。いくら関心が高まっても引き寄せても、その資金が入っていなければ意味がありません。


 また、海外機関投資家が日本株を評価するポイントに、株価純資産倍率(PBR)を高めるための東証主導によるコーポレートガバナンス改革が挙げられます。昨年に続いて今年も自社株買いや増配などの株主還元強化策は目立ちましたが、東証グロース市場のベンチャー企業などはそうした改革機運と縁が遠い存在。


1日の平均売買代金が1,000億円以上の個別株 コード 銘柄名 売買代金
25MA(億円) 9984 ソフトバンクG 4,767 285A キオクシアHD 4,119 5803 フジクラ 2,729 6857 アドバンテスト 2,672 6920 レーザーテック 1,829 東証スタンダード市場1,565銘柄合計 1,576 6146 ディスコ 1,246 東証グロース市場610銘柄合計 1,226 7011 三菱重工業 1,149 8035 東京エレクトロン 1,107 8306 三菱UFJ FG 1,051 ※株価データは12月5日終値時点

 上表は、流動性という観点での新興株市場の弱点を示しています。プライム市場には、1銘柄で1日当たり1,000億円強の商いをこなす流動性(25日移動平均売買代金)の化け物が複数存在します。この流動性ランキングに、東証スタンダード市場全体、東証グロース市場全体と挟むと、6位と8位に入ってきます。


 が、これ1銘柄当たりの流動性で考えてみてください。東証スタンダード市場は1銘柄当たりの流動性が約1億円、東証グロース市場で同約2億円ということです。さすがにここまで流動性が落ちた新興株市場の株、その多くを手が出せませんよね。


 頑張って割安株や好業績株を人知れず見つけても、「その株見つけて買っている人あなただけ」的な疎外感に陥る未来がイメージされますよね。


 流動性が極めて高く、値動き(ボラティリティ)もある大型株がプライム市場に多くあるわけで、あえて流動性の低い中小型株に資金を向けなくてもいいよね?というのは合理的な判断ともいえます。その環境が急に2026年に変化しないだろうということで、冒頭の「プライム市場に比べて分が悪い環境」と想定しました。


 その前提で、2026年に向けて注目の中小型株は??


 スタンダード、グロース市場はTOPIXに負けたけど、今年大健闘したのがプライム上場するスモールバリュー株でした。株主還元の強化などの好材料が多かったり、積極的な売りが少なかったり、金利上昇にも強かったり…プライム市場の割安小型株は好パフォーマンスだったわけです。


 それでいえば、もしプライム市場に上場していたら…スモールバリュー株として、今年もっと好パフォーマンスを残せていたのでは?というスタンダード、グロース上場の銘柄もあったはずです。


 上場している市場により、流動性での逆風、機関投資家によるTOPIX買いの恩恵を受けられないといったマイナス面があったとしたら、出遅れ割安バリュー株は非プライム銘柄に多いはず!


プライム級の非プライム市場の中小型出遅れバリュー株

【条件】
(1)スタンダード、グロース上場
(2)時価総額250億円以上
(3)純資産総額50億円以上
(4)独立社外取締役比率50%以上
(5)2025年の年初来騰落率20%未満
(6)PBR1.5倍未満、予想PER20倍未満
(7)今期増収、最終増益予想
※12月5日時点、時価総額大きい順


市場 コード 銘柄名 PBR(倍) スタンダード 4628 エスケー化研 0.85 スタンダード 8198 マックスバリュ東海 1.25 スタンダード 5982 マルゼン 1.14 スタンダード 8508 Jトラスト 0.36 グロース 166A タスキHD 1.48 スタンダード 3299 ムゲンエステート 1.30 スタンダード 9368 キムラユニティー 0.88 スタンダード 255A ジーエルテクノHD 0.86 スタンダード 6145 NITTOKU 0.99 スタンダード 2612 かどや製油 0.98 スタンダード 6485 前澤給装工業 0.75 スタンダード 3452 ビーロット 1.45 スタンダード 6125 岡本工作機械製作所 0.70 スタンダード 7823 アートネイチャー 0.97 スタンダード 4671 ファルコHD 1.00 スタンダード 7570 橋本総業HD 0.71 スタンダード 3421 稲葉製作所 0.57 スタンダード 8704 トレイダーズHD 1.31 スタンダード 8869 明和地所 0.68 スタンダード 8928 穴吹興産 0.51

 今回のスクリーニングは…東証プライム市場昇格の形式基準を考慮し、時価総額250億円以上、純資産総額50億円以上の定量条件のほか、コーポレートガバナンスコードで示された「プライム市場上場会社では独立社外取締役を少なくとも3分の1以上選任すべきであり、必要に応じて過半数を選任すべき」という基準も踏まえ、独立社外取締役比率が50%以上という条件も加えました。


 バリュー株=割安株ということで、予想株価収益率(PER)とPBRの基準は当然のこと、バリュー株の中でも、業績が堅調なのに割安という意味合いをもたせるために今期業績予想が増収、最終増益であることも条件としました。


 最後に、プライム市場ではなかった結果、パフォーマンスが奮わなかったということも踏まえるため、2025年の年初来騰落率がTOPIX(+20%)を下回っている銘柄としたところ…出てきたのは前述の20銘柄だけ。バリュー株ということで、スタンダード銘柄がほとんどでしたが、グロース市場からは タスキホールディングス(166A) 1銘柄が抽出されています。


 では、中小型株を愛する投資家のみなさま、良いお年をお迎えください!


(岡村 友哉)

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