早期の衆院選実施で、高市政権の政策実現期待が高まり、日経平均は5万4,000円台まで急伸した。その中で、日本株相場が米国株とドル/円の相場次第という「他力本願」を脱する自律性が芽生えている。
サマリー
●高市早苗首相が総選挙を決めたことで、政策の実現度が高まるという期待から、日本株が急伸
●日本株には、従来の「米国株×ドル/円」という指針をしのぎ、自律的な上昇動意が芽生えている
●しかし、日本株相場の自律性が持続して確たるものになるまでには、相伴うリスク要因を留意すべき
日本株の急伸
高市早苗首相が衆議院解散・総選挙の意向を表明したとの報道とともに、日本株相場が急騰しました。選挙で自民党が勝利すれば、積極財政政策、成長戦略の実現度も高まるとの期待によるものです。
人工知能(AI)、防衛、レアアースなど成長戦略の関連企業ばかりでなく、幅広い銘柄に買いの手が集まり、1月13日、14日の2日間で、日経平均株価は終値ベースで2,400円も上昇し、5万4,000円台に達しました。
株高になれば、投資家の間では、それを追認するような楽観や過信が強まりがちです。高市政権の積極財政政策を悪材料として、日本売りで円安を招く、国債売りで金利高を招くとの懸念がある一方、株式相場にはプラスと捉える妙なバランス感覚が目立ちます。
もっとも、この日本株高は、米国株をアウトパフォームし、円安をもはるかにしのぐ展開となっています(図1、2)。そして、そこには、日本株相場の自立、値動きの自律性の萌芽(ほうが)も見られます。長年にわたるデフレ環境下で失われた自立性、自律性の回復は明るい進展です。ただし、株高にかまけて、見落としてはいけない事情も相伴っています。
<図1>日経平均 vs. S&P500種指数
<図2>日経平均 VS. ドル/円
自立・自律の芽
コロナ禍以降の日本株ラリーの大半が、「米国株×ドル/円」という相乗作用を指針に、海外投資家がどのような売買を仕掛けてくるかで、説明可能でした。米国株相場は、米国の景気・金利、やがてAIの発展・普及によって動きます。この間のドル/円相場は、米金利通りに動く場面が大半でした。
つまり日本株相場は、米国の株価と金利、その背景にある景気や政策のマクロ事情によって決まる他力本願といえました。
実際に、日本国内の景気、政策、政治・選挙、企業改革が材料としてはやされても、相場の持続的な動意には、結局「米国株×ドル/円」が優性要因ということが、すぐに分かる展開でした。そして、海外投資家が日本株への関心を後退させると、日本株の動きは途端に鈍りました。
直前の米株相場が高く、円安気味であれば、日経平均は高く寄り付き、その後の動意は、日本勢の上がり売りと押し目買いというパターンに挟まれ、リズムの抽出が困難でした。米国株では、常にリスクテイカーとしての買い手と売り手が多数がっぷりかみ合って、みこしを担ぐような相場リズムが生じるのとは、様相が全く異なるのです。
しかし、足元では、日本株は米国株をアウトパフォームし、円安をもはるかに超える上昇ぶりを見せています。リスクを取ろうという投資家の参入もうかがわれます。これは日本株相場が自立し、値動きに自律性が芽生える良い兆候と言いたいところです。
ただし一方で、明るい面ばかりでなく、留意すべき「暗」の側面もあります。この明暗両面を理解することで、日本株相場の自立が確固たるものになるチャンスを取り込めればと期待する昨今です。
自律リズムを強化する要因
日本株相場は一見上昇していても、自律変動が意味ある形で醸成されてきたのは最近のことです。主たる背景は、脱デフレからインフレの流れによって、名目国内総生産(GDP)成長率が高く保たれているマクロ環境の長期化です。
企業は、インフレ分のコスト上昇を自社の製品・サービス価格に慎重に転嫁しながら、デフレ下で失われていた価格決定力を取り戻し、売り上げを伸ばし、業績を拡大してきました。それが賃上げ、企業改革、株価対策を促す源泉にもなります。
政策面では、高市政権の積極財政政策によるリフレ効果が、株価にはプラスに作用するとの期待が強まっています。
日本銀行は利上げを段階的に進めていますが、消費者物価指数(CPI)で見たインフレ率が前年比3%付近にある一方、政策金利は0.75%までの引き上げにとどまっています。大幅な実質でのマイナス金利(=名目金利-インフレ率)、すなわち金融緩和が続き、利上げの円高インパクトも限られそうなことも、株価にはプラスと判断されます。
ミクロの視点で、個別企業にも前向きな展望が開けつつあります。生成AI、AIエージェントが萌芽する段階では、日本企業の劣勢ばかりが目立ちました。しかし、AI実装段階で、データセンターなど設備投資が進むと、装置や部品部材に強みを持つ日本企業に恩恵が及びます。
さらに、高市政権の成長戦略が、久々に日本の政策と企業がかみ合う明るい展望をもたらしています。AI・半導体、防衛・造船、核融合、レアアースなどの主要テーマに関わる企業の株は買われ、衆院選間近との報道にも真っ先に反応し、急伸しています。
他力本願であれ何であれ、日本株相場の上昇が長く続くと、投資家にもリスクを取る意欲が出てきます。そこに、日本企業の自立性、日本政府の政策による将来展望が重なってきました。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で投資に慣れてきた個人のリスクを取る意欲も広がるでしょう。
明と暗のバランス感覚
しかし、明るい側面ばかりでないことも、忘れてはなりません。株高が続くと、相場が前向きな見方を証明してくれたとばかりに、明るい材料解釈ばかり横行しやすくなるのは、市場やメディアの性(さが)です。
筆者は、このわなに陥らないために、投資の買いポジションを持って、含み益が膨らむほど、それを正当化する情報解釈よりも、この投資を裏切るリスク材料ばかりを注視するアプローチを採用しています。リスク材料が相対的に大きくならない限りにおいて、投資ポジションをホールドするのです。
前段で見た日本株相場の自律性を強化する要因への暗の側面としては、第一に、依然として米国の株価、ドル相場次第の「他力本願」の要素が根本的に重要であるということです。
仮に、米景気が悪化し、米利下げが複数回行われる展開になれば、円高リスクが出てきます。そこにAIバブル破裂を懸念させるような株安が重なれば、ドル/円は140円台に下落し、日本株相場も巻き込まれるリスクが高まるでしょう。
第二に、高市政権の成長戦略は、期待が大きい裏面として、これまで歯がゆいほどに日本の研究・開発の遅れが指摘されてきた分野が大半です。実現に時間がかかり、その間に世界の進展の方が先行するものもあるでしょう。
例えば、深海のレアアース採掘も可能か、採算に乗るかの確認はこれからです。中国の対日輸出規制が強化されても、日本は大丈夫という楽観で突っ走るにしても、日本の弱点として冷静に計算する目は維持する必要があるでしょう。
筆者も高市政権の戦略投資には大きな期待を抱いていますが、個別企業の将来の業績に落とし込もうとすると、あまりに不確実性が大きく、読めないものが少なくありません。
その結果として、相場の自律性の萌芽を見いだし、何とかこの明るい側面が育つことを期待しているのです。「慎重に前向き」、これが2026年も日本株に取り組む構えです。
*本稿は個別銘柄を推奨するものではありません、投資はご自身の判断と責任において行ってください。
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(田中泰輔)

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