日本の1,300兆円超の借金を減らしていくにはGDP2%成長を30年複利で続けていくか、インフレで借金の実質価値を下げていくかの二つしかない。日米の金融当局は、紙幣増刷によって資産インフレを起こして好景気を演出し、通貨の下落で債務の価値を下げるというインフレ政策を続けているが、高市政権の政策もそうした方向性と整合的だ。


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高市トレード2.0はワイマール2.0か!?

 現在の日本株の上げは、「高市トレード2.0」と呼ばれているらしい。インフレ(株高+円安+債券安)という高市トレードの第二幕である。


日経平均CFD(月足)
高市トレード2.0の構造
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ドル/円(月足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

日本10年国債金利(月足)
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(赤:金利上昇トレンド・黄:金利低下トレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 この日本株高は地政学的リスク=「レアアース問題」を無視する現在の市場のレベルを考えると予想通りだが、筆者にはドイツのワイマール時代と同じうたげにみえる。


 ドイツのワイマール時代のハイパーインフレでは、当初、人々は不満を言うのではなく、株でもうけたお金でシャンパンを開けて喜んでいた。


 飢餓感は後からやってきた。100年ほど前のドイツで生じたハイパーインフレ(1922~1923年)と現在の資産インフレには、「紙幣の増刷」という大きな共通点がある。


 歴史的に見れば、インフレ不況が起こりにくいのは、消費者物価が上昇する前に資産価格が上昇するからだ。富裕層は株が高騰し、住宅価格が高騰したため、消費を続けている。こうした経済は終わりの予感を感じにくい。インフレによる不況の到来は見えにくいのである。


 誰が首相になっても日米安全保障条約下では日本独自の政策は制限されるが、高市政権は成長のためのさらなる通貨発行(紙幣増刷)を選択している。


 日米の金融当局は、プリンティングマネー(紙幣増刷)によって資産インフレ(バブル)を起こして好景気を演出し、通貨の下落によって債務(借金)の価値を下げるというインフレ(ステルス増税)政策を続けているが、高市政権の政策もそうした方向性と整合的だ。


日経平均CFD(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ドル/円(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ユーロ/円(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

スイスフラン/円(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ポンド/円(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

豪ドル/円(日足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 日本の1,300兆円超の借金を減らしていくには国内総生産(GDP)2%成長を30年複利で続けていくか、インフレで借金の実質価値を下げていくかの二つしかない。


 日本銀行が輪転機で刷った円で政府の借金を帳消しにするというインフレの方向性は、〈国民の預金を連帯保証人とするインフレ政策>である。


 金融資本主義経済の中で、企業も個人も負債と資産の両建て経済に便乗してきたが、世界金融危機(リーマンショック)で個人や企業の負債は国家に付け替えられた。もう、この負債を転がす先はない。念のために言っておくが、国家は破綻しない。破綻するのは個人である。資産運用の究極の目的は将来到来するインフレへのヘッジに他ならない。


 日本は金利を上げられない国なのである。30年間、国民から政府に金利が収奪されてきた。ゼロ金利でどうやってまともな資産形成ができるだろうか?マクロ経済的に実質マイナス金利は、良くいっても貯蓄者に対する、ある種の税金である。


 こうした条件で最も苦しむのは誰か? 答えは、低所得者、年金受給者、そして資産の比較的高い割合を預金や国債で保有し続けている慎重かつ保守的な投資家である


 米連邦準備制度理事会(FRB)や日本銀行といった中央銀行はもはやインフレと戦っていない。金融政策の独立性を保っているかのように見せかけながら、市場介入を続けて金融システムの崩壊と戦っているのだ。


 FRBや日本銀行を見ていれば分かるが、インフレは危機ではなく、借金の価値を下げる巨大な債務の解決策なのである。

いずれにせよ、債務問題の解決にはインフレが使われる。


 われわれは今後数年間に、社会不安、戦争、ハイパーインフレ、デフレによる資産の暴落、債務不履行など、困難な時代を迎える可能性がある。


 通貨を大量に発行していることから、株式市場が大きく上昇する一方で、ゴールドの上昇は通貨の購買力が大きく下落していることを示唆している。米国も日本も資産価格を維持しつつ、通貨を下落させ借金の価値を下げる選択をしている。従って、株式市場よりも危ないのは「通貨」である。


ドルのデフォルト資産としての役割が変化、帝国が滅びるとき、それは驚くほどの速さで起こる

 金価格5,000ドルが視野に入ってきた。銀の価格も過去最高の82ドルを超え、歴史的な急騰を演じている。直近、ベネズエラやイランなど、地政学的緊張が高まる場面において米ドルの下落が確認されている。こうしたドルの下落の根底にあるのは、インフレという表出する問題ではなく、ドルのデフォルト資産としての役割が変化していることを移し出している。


ゴールドCFD(月足)
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(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創設者、レイ・ダリオは1月5日に「2025」と題するコラムをSNSのリンクトインに投稿した。


 ダリオは、米国の大規模な財政、金融リフレ政策により、ほぼ全てのものがドル建てで大幅に値上がりし、現在では比較的膨張していると述べている。そして、通貨が金融資産に及ぼす影響について、次のように述べている。


【多くの人が米国株、特に米国AI株が最良の投資対象であり、したがって2025年の最大の投資ストーリーであると考えている一方で、最大のリターン(したがって最大のストーリー)は、1)貨幣価値(特にドル、その他の法定通貨、そして金)の変動、そして2)財政・金融刺激策、生産性向上、そして米国市場からの資産配分の大幅なシフトの結果として、米国株が非米国株式市場と金(主要市場の中で最も好調だった)の両方を大幅に下回ったことに起因することは紛れもない事実である。


米国株はドル建てでは強かったものの、強い通貨建てではそれほど強くなく、他国の株式を大幅にアンダーパフォームした。投資家は、米国株よりも非米国株を好んでいたことは明らかであり、同様に、米国債や米国現金よりも非米国債を好んでいただろう。


自国通貨が下落すると、その通貨で測られるものが上昇したように見える。言い換えれば、弱い通貨の視点から投資収益を見ると、実際よりも高く見えるということである。言い換えれば、資金の流れ、価値観、ひいては富が米国から離れていくという大きな変化があり、現在起こっていることはおそらくさらなる再均衡化と多様化につながるだろう】


 通貨の動向は富の変動や経済に大きく影響する。自国通貨が下落すると、富と購買力が減り、他国の通貨では自国の商品やサービスが安くなり、他国の通貨では自国の商品やサービスが高くなる。このようにして、インフレ率や、誰が誰から何を買うかに影響するが、影響が出るまでには少し時間がかかると述べている。


 そして、このような動きが起きている中、「通貨ヘッジをしているかどうかは非常に重要だ」と指摘している。


 作家で投資家のダグ・ケーシーは以前、「帝国が滅びるとき、それは驚くほどの速さで起こる」と述べた。帝国は金銭的繁栄の上に築かれ、全盛期にはあらゆる人々をその地に引き寄せる。しかし、末期になると、その内部は空洞化していくとし、次のように述べている。


【政府は高コストで肥大化し、その重荷を抱えることになる。

歴史的に見れば、すべての帝国は例外なく内部から崩壊してきた。一度リンゴが腐ってしまえば、元に戻すことはできない。帝国が滅びるとき、すべての借金が突如として一度に返済期日を迎える。これまでのすべての帝国と同じように、米国もまた、債務、腐敗、過剰な拡張の重みにあえいでいる。歴史が示しているのは、これらの傾向が逆転することはなく、必ず崩壊に至るということだ】


(ダグ・ケーシー)


 負債が成長を上回るペースで増加し、成長が投機的な信用資産バブルに依存しているが、これはいずれ持続不可能になる。結局のところ、どの国でも不換紙幣制度の最終段階は「インフレ」であることが証明されている。


 資産バブルはフィアット・マネーの劣化である。サードパーティリスクの回避にゴールドなどの資産価値保存商品を持っておきたい。今の政治体制では歳出削減など絶対無理だろう。従って、どこの国も「プリンティング・マネー(紙幣増刷)」の一択である。これから、そしてどこの国も税金はどんどん上がっていく。


 世界の債務は300兆ドルを超えている。

300兆ドルは158円換算で4京7,400兆円である。もうファンダメンタルも業績も関係ない。市場そのものを動かすのは「政策当局が注入する過剰流動性のレベル」と「政策期待を巡る感情」である。


 負債と資産の両建て相場が、この先の米国の「利下げ」と「量的緩和」ですさまじい上昇を見せる可能性があるが、問題はその後である。


 国家が市場に全面的に介入し、膨大な量の負債が追加され、政治的な状況は巨大な混乱に陥っている。残っているのは、旧態依然としたカジノ化した市場にけん引された「仮想的な富の効果」だけだ。資産と負債を際限なく膨らます「両建て経済」でカジノ化した市場の怖さは、「相場が急落すると資産は減るが、負債は減らない」ということだ。


1月14日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 1月14日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所 チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「メモリ価格が大暴騰!」「低金利とレバレッジ、日本は不動産屋経済?」「今中流トランプ政策の見方」いうテーマで今中さんにいろいろ聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。


高市トレード2.0の構造
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  ラジオNIKKEIの番組ホームページ から出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。


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(石原 順)

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