近年、日経平均株価の約3分の1を占めているのはわずか4社。さらに、半分はわずか15社で構成されている。
日経平均株価の歪みをもたらした要因は?
日経平均株価の動きを解説する上で、特定企業の株価が与える影響について言及されることが多くなりました。日経平均株価の構造的な歪みについては、以前から指摘されてきましたが、近年、その歪みが一段と拡大しているようにも見受けられます。その現状をあらためて整理してみたいと思います。
その歪みについて語る前に、まずは、日経平均株価の沿革から確認していきます。特に印象的な出来事を時系列で抜き出してみました。
次に、青字・赤字で示した四つのトピックについて説明していきます。
(1)先物・オプション取引の開始
1986年にシンガポール、1988年に大阪証券取引所で「日経225先物」取引が始まり、1989年には大阪証券取引所で「日経225オプション」取引が開始されました。
先物・オプションの開始によって、品薄株に異常な高値がつけられたり、また品薄株の株価を操作することで裁定取引が行われたりするようなケースが出てきました。その結果として、株式流動性が採用銘柄の入れ替え時の基準になり、流動性の低い銘柄が除外されていきました。
(2)上場投資信託の上場・・・株式分割などが行われた際の算出方法の変更
2001年には日経平均株価に連動する上場投資信託(ETF)が上場しました。ETFの拡大によって、運用会社が日経平均を容易にトラッキングできるよう2005年には株式分割時の算出方法が変更。
それまでの分母修正方式(除数で調整=ダウ式)から、みなし額面を修正する独自の分子修正方式へと変更されました。分子修正方式の弊害は、値がさ株が分割しても日経平均全体に占める構成比が維持されることです。
(3)みなし額面方式から株価換算係数方式への切り替え
2001年以前は、日経平均への株価の換算は株券の額面に応じて決定されていました(額面50円⇒換算係数1.0、額面500円⇒換算係数0.1、など)。
2001年の商法改正によって株券の額面は廃止されましたが、額面制度をほぼ引き継ぐ形で「みなし額面」方式が利用されていました。しかし、この「みなし額面」方式が2021年10月に廃止されて「株価換算係数方式」に変更となります。「みなし額面」方式は、額面が小さい値がさ株は株価指数への影響が大きいことから採用できないという問題がありました。
「株価換算係数方式」においては銘柄の新規採用時には原則としては換算係数1.0を適用しますが、その銘柄が全体のウエートで1%を超えないように換算係数を0.1刻みで調整を行います。
「株価換算係数方式」導入と同時に、キーエンス(0.1)、任天堂(0.1)、村田製作所(0.8)が新規に日経平均に採用されましたが換算係数は()で示したように1.0を下回りました。
ただ、「株価換算係数方式」導入以前から日経平均に採用されている銘柄についてはそのままで変更が行われなかったことから歪みの拡大の抑制には限界があったようです。
(4)「ウエートキャップ」の導入
2022年10月に「ウエートキャップ」の導入が図られました。特定の銘柄が日経平均株価の10%を超えることがないようにするために、10%の超過した銘柄の株価換算係数を定期入れ替え時(4月・10月)に調整する制度です。
2024年10月に ファーストリテイリング(9983) に適用されました(換算係数3.0→2.7)。ファーストリテイリングはさらに、2025年4月にも再度適用(換算係数2.7→2.4)されております。今後も対象となる企業が出てくると思われます。
日経平均への組み入れ株価の計算方法を再確認
ここからは、日経平均株価への特定銘柄の寄与度について見ていきますが、その前に日経平均株価に組み入れられる株価の計算方法について簡単におさらいをしておきます。
日経平均への組み入れ株価は【株価×換算係数÷除数】で算出されます。
ソニーを例にとってみます(11/28終値時点)。
4,575円(株価)×5.00(換算係数)÷29.917(除数)=764.61円
除数は、採用銘柄の入れ替え時に連続性を保つための調整係数とご理解ください。
日経平均株価に占めるウエート上位企業の顔ぶれとその推移
日経平均における構成上位銘柄の推移について見ていきます。まずは月次です。
表1は、2025年11月28日を基準として過去にさかのぼる形で表示しています。また、ウエートが高い順にマーカーの色で示しています(1位:黄、2位:オレンジ、3位:緑、4位:青、5位:灰)。多少の動きはありますが、上位4社は変わっていません。
<表1>日経平均寄与度上位銘柄推移(月次)
上位4社の占める構成比(寄与度)は、2024年12月末の28.6%から25年11月末には33.1%へと4.5ptも上昇しています。わずか4社で日経平均株価の約3分の1を占めている状態には驚きを覚えます。また、日経平均の半分(50%以上)は、わずか15社で構成されています。
ちなみに、1位の アドバンテスト(6857) と225位の 三菱自動車(三菱自動車工業:7211) とではウエート差が4,421倍あります。
次に年次データを見てみましょう。手元で見つけられた2019年12月末から過去6年分からも、上位銘柄への集中が高まっているのが見て取れます。
<表2>日経平均寄与度上位銘柄推移(年次)
より古いデータを探してみたところ、15年前に日経平均株価に関して講演をした際のデータ(表3)がありました。この時点では上位4銘柄の占有率は16.3%、上位15銘柄では36.8%と、過半(50%超)を占めるには28銘柄が必要でした。現在と比べると上位銘柄の占有率ははるかに低い状態ですが、この時点(15年前)においてはかなり衝撃的に捉えられたと記憶しています。
<表3>過去の日経平均株価の構成
上位15銘柄とそれ以外の210銘柄を分けて考えてみる思考実験
ここからいくつか思考実験をしていきます。
まずは株価パフォーマンスの実績です。上位4銘柄、上位15銘柄、下位210銘柄(15銘柄を除外)の株価パフォーマンスを算出します(2020年から2025年11月までの約6年間)。
その期間の日経平均株価(全体)は+112.4%でした。上位4銘柄はなんと+235.4%、上位15銘柄は+153.5%でした。それ以外の210銘柄は+81.4%にとどまっています。
ここからが思考実験です。日経平均株価を構成する全225銘柄のうち、上位15銘柄を除いた210銘柄の株価パフォーマンスをベースに日経平均を計算した場合、日経平均株価はいくらになるか、という試算です。
思考実験の結果を見てみると、11月28日時点の日経平均株価5万0,253円に対して4万2,907円と85.4%にとどまると算出されました(あくまでも思考実験です)。
ここで日経平均株価のPERの計算方法について補足説明をしておきます。
ご存じない方も多いと思われますが、新聞に掲載されている日経平均株価のPERは、日経平均構成企業のウエートを反映していません。次のように計算されています。
(1)新聞掲載方式
225銘柄の時価総額合計÷225銘柄の当期利益合計
⇒(11月25日現在:18.85倍)
(2)株価換算係数方式
新聞掲載方式に対して、銘柄ウエートを反映させるために各銘柄の1株当たり利益(EPS)を、構成株価を算出するのと同じ方法で計算して、その合計値を日経平均株価で除して算出します。
⇒(11月28日現在:20.88倍)
本稿では、「(2)株価換算係数方式」に基づいてPERを算出しています。
それでは、再び思考実験をしたいと思います。日経平均株価を予想するにあたって、構成の半分を占める15銘柄と、それ以外の210銘柄の業績予想とPERを分けて計算してみます。
IFISコンセンサス(11月28日現在)のコンセンサス予想EPSを「(2)株価換算係数方式」に基づいて示したのが表「コンセンサス予想EPS(今期・来期・再来期)とPER」になります。
現在は、既に期末が近づいているため、来期予想ベースを視野において株価バリュエーションが行われていると前提を置きます。また、2026年の株価の予想には、再来期ベースの予想EPSを用いて考えることとします。
上位15社と210社を分けて考えるのですが、上位15社の中でも ソフトバンクグループ(9984) が大幅減益予想となっているため、ソフトバンクGは他の銘柄とは別にして検討したいと思います。
まず、ソフトバンクGを除いた上位14社の来期ベースのPERを計算すると、以下のようになります。
(25,816.3-33,74.3)÷(1,057.9-224.56)=26.93(倍)
ソフトバンクGのPERは15倍、ソフトバンクGを除いた14社のPERは27倍、それ以外の210社のPERは16倍と置いて、再来期の予想EPSにかけ合わせて計算してみます。
ソフトバンクGを除いた14社+ソフトバンクG+それ以外210社
={(1,076.6-117.25)×27}+{117.25×15}+{1,716.2×16}
=25,902.45+1,758.75+27,459.2=55,120.4
この結果は、日経平均株価5万5,120円と算出できました(あくまでも計算例です)。
単純に日経平均全体の再来期ベースの予想EPS(2,792.8円)に来期ベースのPER19.3倍をかけ合わせた場合は5万3,901円となり、1,200円以上の開きがあります。
さらに、上位4銘柄にそれぞれ前提を置いて計算すれば、また違った結果が出てくるでしょう。いろいろと試してみるのも面白いと思います。
まとめ
ここまでをまとめると以下のようになります。
◆日経平均株価においては株価換算係数と除数によって各企業の組み入れ株価が決まる。ウエート格差は極めて大きく、1位と225位ではなんと4,421倍の差がある。
◆日経平均株価に占めるウエートは、上位4社で全体の33.1%、上位15社で51.4%と過半を占める。上位の銘柄のウエートは年々高まっている。
◆先物・オプションへの採用に伴って株式流動性重視となり、品薄株は除外されてきた。
◆2022年より「ウエートキャップ」を導入して、特定銘柄の影響が緩和されるように図っているが、現状では効果は限定的か。
最後に、日経平均株価の今後について思うことを述べておきたいと思います。
業種分散より流動性重視に傾いていることや、特定少数銘柄のウエートが高まっていることで日本経済の実態を示す指標としては、ややズレが広がっているように感じます。
また東証株価指数(TOPIX)が銘柄数を絞りこみ、全市場を網羅する指標へと改革を進めていることを踏まえると、日経平均株価もさらなるテコ入れを求められる可能性が高いように思います。
また、日経平均株価の予想を行うエコノミスト・ストラテジストの方々にとっては、ウエート上位企業の業績動向・株価バリュエーションの前提抜きに単純に予想を語ることが難しくなりつつあるように思います。
(藤根 靖晃)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
