前編では、予備自衛官としての顔や、人生の岐路で全資産を投げ打った「手金(てがね)」の哲学について伺いました。続く後編では、順風満帆に見えた優待太郎さんを襲った「数千万円の損失」、そこから親子2代で1.5億円を築き上げた独自の投資手法、そして老後に優待が必要な理由に通じる出口戦略の神髄に迫ります。


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バイオ株で数千万円が蒸発。STAP細胞事件から学んだ鉄のおきて

トウシル:「人生には勝負どころがある」と仰っていましたが、MBA取得後の2012年、まさにアベノミクス前夜に三度目の正直として投資を再開されたんですよね。


優待太郎さん:そうです。ビジネススクールのファイナンスの講師に「金融を学ぶなら実際に株式投資をしなさい」と背中を押されたのがきっかけでした。この時、一度は相場から離れていた父親も巻き込んで再スタートを切ったんです。


トウシル:復帰戦はどのような銘柄を?


優待太郎さん: パナソニック(現パナソニック ホールディングス:6752) です。当時は松下電器から社名を変更したタイミングで、株価が500円程度。ファイナンスの視点で見ると超割安でした。僕が200万円、父が500万円を注ぎ込んだところ、これが1,200円まで跳ね上がり、最高の再スタートになりました。


トウシル:おお! そこから順風満帆に…!


優待太郎さん:と、思うじゃないですか(笑)。2014年、大学時代に学んでいたバイオテクノロジーへの過信があだとなりました。いわゆる「STAP細胞事件」です。


 当時はiPS細胞ブームもあって、バイオ関連株に全力投資していたんですが、STAP細胞がらみで市場は荒れに荒れ、8,000億円が市場から消えたといわれるほどの大暴落が起きました。実は僕は、大学時代にバイオ系の学部にいたんです。なまじ知識があっただけに、過信バイアスがかかってしまったのかもしれません。


トウシル:専門知識があったからこそ、信じ込んでしまったんですね。


優待太郎さん:そうなんですよ。僕ら親子も損失を出し、文字通り数千万円というお金が溶けて消えました。あの時は本当に必死で資金をかき集め、信用取引の維持率を保つために奔走しました。この時に胸に刻まれたのは、「うそをつく銘柄、粉飾の可能性がある銘柄は二度と買わない」という鉄のおきてです。


親子2代、最強の布陣。50年チャートの父 × 分析の息子

トウシル:引退されていたお父様を投資の世界へ引きずり込んだというお話でしたが、現在もお二人で投資をされているのでしょうか。


優待太郎さん:はい。現時点では、二人合わせて1.5億円ほどの資金を運用しています。

これが面白いほど役割が分かれているんですよ。日中は、リタイアして暇を持て余している父が銘柄探しに没頭しています。父は投資歴50年以上の超ベテランで、10年、20年という超長期チャートから、底値圏を見極める能力に長けているんです。


トウシル:まさに職人芸ですね。優待太郎さんは会社員もされておられます。分析をする時間を確保するのは大変ではないですか?


優待太郎さん:仕事が終わった後、夜に5kmのウォーキングをしているんですが、その間が地元←→東京間での、親子電話会議の時間です。電話で父が挙げてきた銘柄を聞き、スマホで決算書や指標をチェックします。僕はMBAで学んだフレームワークを使って、その企業の3~5年先の成長性を分析するんです。


トウシル:優待太郎さんの分析手法を詳しく教えてください!


優待太郎さん:基本は「*PEST分析」「**3C分析」「***5フォース分析」です。特に「キャッシュフロー」にはこだわりますね。黒字か赤字かよりも、実際に現金が回っていることが重要です。


*PEST分析:政治・経済・社会・技術の四つの視点から自社を取り巻くマクロ環境を分析し、事業戦略やマーケティング戦略に生かすフレームワーク
**3C分析:市場・顧客、自社、競合の三つのマーケティング環境を分析するフレームワークで、成功要因(KSF)を見つけることが目的。

***5フォース分析:企業が自社の競争環境を理解し、戦略を立てるためのフレームワーク。「新規参入者」「代替品」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「競争他社」を分析する。

 親子会議で、どっちかが「ダメだ」と言った銘柄は買いません。逆に、父の「底値だ」という直感と、僕の「成長性が高い」という理屈が合致した銘柄は、まず間違いなく上がります。最近だと、「ラーメン山岡家」を運営している 丸千代山岡家(3399) 、 三越伊勢丹ホールディングス(3099) や地方銀行などの銀行株などがその典型でした。


Googleマップが教えてくれる売却の合図。マズい飯屋は伸びない!

トウシル:優待太郎さんは現在どのくらいの銘柄数をお持ちなのでしょうか。


優待太郎さん:僕が持っているだけで110銘柄くらい。父も合わせると200銘柄を超えると思いますね。大半が優待株で、全資産の80%程度を占めています。中でも飲食の銘柄が多いですね。


 僕は優待が使えるお店に行くと、必ずGoogleマップにクチコミを書くようにしているんです。

しかも単なる感想ではなく「〇〇の優待が使える」「イオンカード提示で10%引き」といった、投資家向けの情報を書いています。


 あまりにも数を書きすぎたためGoogleローカルガイドの上限であるレベル10に到達してしまい、Googleの担当者から「ぜひお会いしたい」と連絡が来たこともあります(笑)。


老後不安こそ、優待投資で乗り切れる!優待メシ食べ歩きの理由とは:優待投資家・優待太郎さんインタビュー後編
優待太郎さんのブログやXには、食べ歩いた店と料理の写真があふれている。画像はInstagramから。ただし毎日の「食べ歩き」を確かめるならXかブログが有効。食べ歩くことで、その企業が「ちゃんとした経営をしているか」もチェックされている

トウシル:口コミをそこまで書く人を初めて見ました! なぜそこまで書き込むんですか?


優待太郎さん:きっかけは自分自身がどこのお店でどの株主優待が分からなかったからです。同じような境遇の人たちが迷わないように、最初の1行目に「〇〇の株主優待が利用できます」と入れています。これを続けているうちに「店舗の変化を記録する」という投資視点も出てきました。


 例えば、かつて保有していたある銘柄は、店に行って食べた瞬間に「あ、これダメだ」と思いました。味が落ち、接客もガタガタ。日本人が一番怒るのは「まずい飯を食わされること」なんです。他にも客入りが悪かったり、値段に割高感があったりするのも分かります。


 その直感に従ってすぐに売却しましたが、その後案の定、業績も株価も急落しました。企業が成長、衰退する理由なんて、実際に現場に足を運ぶだけで見えてくることもあるんですよ。


トウシル:自分の舌と目で、経営状態を検診しているわけですね。


優待太郎さん:そうです。逆に、 フジオフードグループ本社(2752) や 大庄(9979) のような企業は、業績が悪くても「お客さま還元」を第一に考えているので、上がらなくても持ち続けます。あそこのビジネスモデルは現場で食べてこそ価値が分かるんです。残念ながらあまり株価は上がってくれないのですが、今のままずっと、うまい飯を食べさせてほしいです(笑)。


孫の笑顔は配当じゃ買えない。優待という老後の出口戦略

優待太郎さん:今の僕も優待にはたっぷり楽しませてもらってますが、一番優待が効くのは老後だと思うんですよ。


トウシル:老後にこそ優待が効く…? どのような理由でそう思われるんでしょうか。


優待太郎さん:生命保険のフルコミ営業時代、多くのお年寄りと接して気づいたんです。年金生活になると、人は「資産が減ること」に極端に怯えるようになります。孫が遊びに来て外食に行ったときにも、心の中では「お金が出ていく」「年金が減ってしまう」と計算して、自分の注文を控えてしまうんです。これでは人生の終盤が寂しすぎますよね。


 そこで優待が効いてきます。

優待があれば年金を減らさずに孫と回転寿司に行けますし、決して自分では買わないような高級ハムを楽しめます。トイレットペーパーやお米の優待なんて自宅の前まで届けてくれますので、年を取って大きかったり重い物を運ぶのが大変になるほど神様のように思えますよ。


 そして何より、定期的に届く優待を見るたびに、希薄になりつつある社会とのつながりを実感できるのが大きいんです。


 若いインフルエンサーは「配当の方が効率がいい」とか「インデックス投資がいい」と言いますが、私は必ずしもそうではないと考えています。孫の笑顔や誰かとつながっている実感を得られる優待銘柄は、高齢者のプライドとメンタルを支える最強の武器になりえるんです。


 僕の父も元勤務先に呼ばれて、優待投資の実体験を講演をすることがあるのですが、定年間際の後輩にめちゃくちゃ感謝されていますよ。


トウシル:老後に効くという優待太郎さんの観点から、おすすめの優待銘柄はありますか? 権利確定月が3月の銘柄を教えてください!


優待太郎さん:今回の話の中に出てきた優待株は、権利確定月が3月の銘柄が多いんですよ。飲食系なら、 ヨンキュウ(9544) や 日本ハム(2282) 、 ハウス食品グループ本社(2810) は自社・グループ製品の詰め合わせがもらえます。 日本製紙(3863) や 大王製紙(3880) はトイレットペーパーがありがたいですね。カタログギフトなら 芙蓉総合リース(8424) や 日本管財HD(9347) なんかもいいですね。


 旅行が好きなら、 東武鉄道(9001) 、 東急(9005) 、 京浜急行電鉄(9006) 、 京王電鉄(9008) 、 JR東日本(東日本旅客鉄道:9020) といった鉄道系で優待乗車券や割引券をもらうのがおすすめです。ホテルの優待券なら サンフロンティア不動産(8934) でしょうか。3月は権利確定銘柄が多いので、優待もいろいろ楽しめると思いますよ。


インデックスだけでいい?若い世代に勧めたい「実感できる投資」

トウシル:優待太郎さんの観点から、これから投資を始める若い世代はどのような投資をすればいいと思いますか?


待太郎さん:今はインデックスの長期投資がブームですが、僕は早くリターンを実感できるような投資から始めるのがいいと思っています。自分の人生に影響を与えるくらいのリターンを感じられないと、長期投資は続けられないんですよ。


トウシル:そこで優待銘柄の出番ですね!


優待太郎さん:10万円の株式から年間3,000円の配当をもらっても、感動はありません。しかし、僕の後輩に ビックカメラ(3048) の優待を勧めたら「子供のオムツ代が助かった!」と大喜びして、そこから自発的に投資を勉強し始めました。


 小さな成功体験が、長期投資のガソリンになるんです。そうして続けられた長期投資で得た資金は、ご自身の決断を助けてくれる「手金」になってくれるはずです。


 もし僕がMBAを取りに行かなければ、東京に出ることも、年収を上げることも、1億円を超える資産を築くことも無かったでしょう。何度でもお伝えしますが、人生には何度か大勝負の機会があり、その挑戦を支えるのは十分な手金です。


 失敗してもいい、恥をかいてもいい。予備自衛官として訓練を受け、MBAで理屈を学び、優待を握りしめてご飯を食べる。そんな「泥臭い投資」が、あなたの人生を一層豊かにしてくれるはずです。


トウシル:食べ歩きが趣味のホンワカした優待投資家を想定していたのですが、お話を伺って180度、印象が変わりました。攻めの優待投資家として、新たな領域を広げてくださり、本日はありがとうございました!


▼前編はこちら

3度の転職、MBA、予備自衛官。何事も自分で確かめなきゃ気が済まない「株主優待哲学」:優待投資家・優待太郎さんインタビュー前編


(トウシル編集チーム)

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