イラン攻撃による原油上昇と、有事のドル買いが円安進行、さらに日銀の利上げ後ろ倒しや景気減速などの懸念も円安要因に。ドル円は158円を意識しつつ、中東情勢の長期化で160円台を目指すのか、それとも早期終結して反転か。

翻弄(ほんろう)される展開が続きそうです。


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イラン攻撃で原油上昇、有事のドル買いで円安進行に!

 2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃し、リスク回避の円買いが強まるよりも有事のドル買いの方が強まり、ドル円は157円後半の円安に進む動きとなりました。


 円安の背景は、イラン攻撃によって原油が上昇し、日本の原油輸入金額が増加することからドル買い需要が増えることに加え、日本の貿易収支は赤字が増えることによって円安要因となります。


 また、原油上昇と円安は物価上昇要因(輸入インフレ)となり、景気減速懸念から日本銀行の利上げ時期が後ろ倒しになるとの見方が広がります。日銀は中東の地政学リスクが高まるという不透明要因によって、利上げに慎重になることが予想されます。このことも円安要因となります。


 一方、米国は原油輸出国であるため、原油上昇によって輸出金額が増えることから貿易収支が改善し、ドル高要因となります。また、米連邦準備制度理事会(FRB)も中東情勢の不透明要因から政策変更に慎重となり、利下げの時期を遅らせる要因となることが予想されます。このこともドル高要因となります。


 原油上昇も、イラン攻撃が長期化しなければ、一時的な動きにとどまり、上記のような要因も一時的なこととなります。しかし、トランプ大統領は、攻撃が長期化することを示唆し、攻撃も「大きな波」が来ることを示唆しています。


 戦闘が長期化し、中東全域に戦火が拡大し、石油設備が損傷を受けて原油供給力に影響が及べば、日本だけでなく、世界経済にとって多大な影響を与えることになります。現実に、連日、世界の株が大幅に下落しており、市場は紛争長期化による世界経済減速を織り込み始めています。


 ちなみに、昨年6月(13~25日)のイラン・イスラエル戦争は12日間戦争でした。米国軍は、2025年6月22日に作戦名「真夜中の鉄つい作戦」の下でイラン国内の複数の核関連施設に対して軍事攻撃をしました。


 原油価格の動きをニューヨークの原油ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の終値ベースで見てみますと、開戦前日(6月12日)68ドル台だった原油は、開戦後6日目に75ドル台まで上昇し(6月18日)、終戦日(6月25日)には65ドル近辺まで下落していました。今回は、開戦4日目の2026年3月3日時点で75ドル近辺となっています。


 そして米国が軍事攻撃した2025年6月22日(日)の週明け、23日の東京市場のドル円は、146円から148円の円安に動きましたが、7月1日には開戦日の水準である142円台半ばの円高に戻しています。6月23日の日経平均株価は、3万8,000円台前半でしたが、6月27日には4万円台に乗せています。WTIも65ドル台の動きでした。


長期化で円安か、早期終結で反転か

 今回のイランへの攻撃後、157円台後半に進んだ円安の水準は、2月の衆院選後、自民党圧勝を受けて円安にいった水準です。その時は自民党勝利を事前にかなり織り込んでいたことや、予想以上の圧勝で野党の要求を配慮せず政策遂行できる安心感もあり、ポジション調整で152円台前半の円高にいきました。


 しかし、その後は高市早苗首相の施政方針演説で積極的な財政政策が確認されたことや、2月16日の植田和男総裁との会談で高市首相が利上げに難色を示したとの報道、25日には日銀審議委員後任人事にリフレ派2名が政府から提示されたことから156円台に円安が進み、イラン攻撃のニュースで157円台後半の円安まで戻しています。


 結局、「行って来い」の相場となりましたが、ドル円は158円台の「ベッセント・シーリング」を意識し、米国の大規模攻撃懸念から158円手前で様子見している状況となっています。


 158円台の「ベッセント・シーリング」とは、1月23日、ベッセント財務長官が、日本の政治空白で市場が不安定になり、世界の通貨・債券市場に影響することを警戒し、「レートチェック」を主導した水準で、日本から要請があれば日米協調介入も視野に入れていたという水準です。


 市場もこのことは熟知しており、警戒心は高まることが予想されますが、米長期金利はその時よりも低い水準であるため、米国からの為替けん制も後退することが予想される点には留意したいと思います。


 ただ、原油供給不安によって原油価格が一段と急騰し、金利もさらに急騰し、円が急落した場合には注意が必要です。世界の通貨・債券市場を鎮めるために、いきなり日米協調介入もあり得るというシナリオにも留意しておいた方がよいかもしれません。


 3月は、日米の金融政策が注目材料になると思っていましたが、イランとの戦闘が長期化すれば、不透明要因から政策変更は慎重になることが予想され、FRBの利下げも日銀の利上げも時期が後ろ倒しになることが予想されます。このことも円安要因となります。


 トランプ大統領は、イラン攻撃の長期化や大規模攻撃を示唆していますが、今後、米国の大規模攻撃によって戦火が中東全域にさらに拡大し、原油や天然ガスの供給施設のさらなる損傷によって原油が一段と上昇し、高止まりの期間が長引くことになれば、ドル円は158円台に上昇し、160円を目指す可能性が高まってくるかもしれません。


 しかし、米国内ではイランへの攻撃を大多数が支持しているわけではなさそうです。反対意見や批判も多いことから、トランプ大統領は11月の中間選挙を意識して戦闘終結を早めることも予想されます。


 さらなる原油急騰や株急落、物価上昇や経済減速が伴えば、終結への判断が早まることも予想されます。もし、戦闘が早期に収束に向かえば、原油価格は下落し、円売り要因は剥がれることになります。当面、ドル円はイラン情勢に翻弄(ほんろう)される展開になることを覚悟しておく必要がありそうです。


(ハッサク)

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