株式市場に、中東危機の影響が広がっています。相場急落時、個人投資家はどう動くべきか。

株の「売り時」と「買い時」の見極め方とは? 楽天証券経済研究所のチーフ・ストラテジスト・窪田真之に、今後の相場見通しとショック相場の乗り切り方を聞きました。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?の画像はこちら >>

※この記事は、3月4日午後4時に公開したYouTube動画の内容を抜粋しています。
関連動画: 【緊急解説】中東危機で日経平均が急落!個人投資家はどうするべき?


日本株急落。中東危機、過熱するAI株、インフレ不安…今後の見通しは

__3月4日の日経平均株価終値は5万4,245円、前日比2,033円安でした。先週末の終値(5万8,850円)から4,000円以上下げています。改めて、今何が起こっていますか。


 今回の急落の直接のきっかけは、中東危機です。イランのホルムズ海峡封鎖によって原油価格が急騰し、世界経済が悪化するという懸念が広がりました。しかし、これだけが理由ではなく、複合的な要因が絡んでいると考えられます。


 そもそも、今回の急落の前から二つの懸念がありました。一つは、AI関連株に過熱感があり、巨額のAI投資をしっかりと回収できるのかという不安。もう一つは、世界中で財政金融の大盤振る舞いがされており、将来的に深刻なインフレにつながるのではないかという懸念です。

このような中で株価が過熱していたところに中東危機が発生し、今回の急落につながりました。


__先週末のイラン攻撃を受け、週明け2日(月)の日経平均は1,500円安になった後、反発しました。今週のうちにマーケットは落ち着くのではないかという声もありましたが、実際には3日、4日と下げがきつくなりました。


 イランのホルムズ海峡封鎖に関して、「そんなに長引くはずがない」という見方が初期の反応でした。同海峡が封鎖すれば、イランにとっても中国などへ原油を輸出できなくなるというマイナス影響があるほか、中東諸国全てを敵に回してしまうからです。


 しかし、イランが中東各国にまで攻撃を始めたことで、予想以上に事態が長期化する懸念が出てきました。AI株やインフレに対する不安も重なり、今回の大きな下げにつながったと考えます。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?
日経平均週足

__ホルムズ海峡の封鎖や原油価格の急騰は、経済や物価に大きな影響を与え、かつてのオイルショックのようになるのでは、という懸念もあります。


 今回の中東危機に関して、1カ月程度で収束する「短期収束」シナリオと、ロシア・ウクライナ戦争のように長期化する「長期化」シナリオの二つを考えています。長期化すれば、世界経済および株へのマイナス効果は大きくなります。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?
中東危機どうなる? 2つのシナリオ

 長期化した場合でも、ホルムズ海峡が封鎖された状態が続くとは考えにくく、原油に対するショックは比較的短期で収束するでしょう。


 過去の中東での戦争を例に挙げると、1980年のイラン・イラク戦争ではホルムズ海峡封鎖の懸念から原油価格が急騰し、第二次オイルショックが起こりました。

ただ、戦争が続いた約10年間の間ホルムズ海峡が封鎖されていたわけではなく、原油価格はこの間大幅に下落しています。


 また、1979年当時と比べると、中東が占める原油シェアは低下していること、日本を含む世界各国が原油の備蓄をかなり積み増していることからも、当時のオイルショックのような事態は起こりにくいと考えます。


__4日は日本株が急落したほか、韓国市場も10%以上下げて一時的にサーキットブレーカーが発動されました。


 今回のショックが起こる前、日本株と韓国株の上昇率が非常に大きくなっていました。米国のAI関連株に過熱感が出始めたことで、グローバル投資家が米国から日本や韓国に資金をシフトさせていたと考えられます。上昇率が高かった市場ほど、下落率も大きくなります。


 いつも言うことですが、日本株を売っているのは外国人投資家です。彼らにとって日本株は「世界景気敏感株」という位置づけです。グローバルポートフォリオでリスクを増やそうとする時は日本株や韓国株を増やし、リスクを減らしたい時は、まず先に日経平均先物を売るのです。


 日本に全く関係ないようなショックであっても、取りあえず日経平均先物が売られるということがよくあります。今回、日本や韓国の下げが大きくなったのはこうした理由からです。


__イラン情勢に加えてAI相場への懸念があり、さらにイギリス発の金融不安も起きています。

大きな金融危機へと連鎖する可能性は。


 私が想定しているメインシナリオでは、世界恐慌や金融危機が起きるとは考えていません。少し割高なAI関連株は調整が必要ですが、AIを使った世界経済の変革という流れは続くと考えています。今回はあくまでも、上昇ピッチが早すぎたことに対する調整だと思います。


__今後の相場見通しについて教えてください。


 今回の高市ラリーと2013年のアベノミクス相場を比べると、非常に多くの点で似ていることが分かります。


 アベノミクス相場では、外国人投資家が日本の成長に期待し、日本株を大量に買い付けて上昇しました。日本株は大きく上昇しましたが、バーナンキショックで高値から20.9%下落。ファンダメンタルズは良好だったため、結局また買い直され、1年間で56.7%上昇しました。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?
2013年アベノミクス相場の日経平均

 一方の高市ラリーは、去年の7月1日、日経平均が4万円のところからスタートし、同じように外国人の買いで上昇。そして今回の急落となりました。現在の状況も、ファンダメンタルズは引き続き良好であるものの、少し調整が必要な状況だと考えています。


 この後どこまで下がるかは分かりにくいところですが、ファンダメンタルズに変化がなければ、また切り戻されていく流れになるのではと思っています。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?
高市ラリー アベノミクス相場 日経平均比較

ショック相場で「売り時」「買い時」の見極め方 

__25年間日本株のファンドマネージャーをしてきた経験から、今回のショック相場の乗り切り方を教えてください。個人投資家はどのように対応すべきでしょうか。


 私はファンドマネージャー時代、ベンチマークである配当込み東証株価指数(TOPIX)と比較して、常に勝たなければならない立場にありました。負けないためには、相場の流れが大きく変わった時にポートフォリオを入れ替える必要があります。応急処置として急落している銘柄を売却し、そうでないディフェンシブな銘柄などに乗り換える。これが「入れ替え」です。


 図の左のように大きく上げてその後下落している銘柄があったら、今からでも売った方が良いと思います。右のように下落後上昇し始めている銘柄は買っていくべきです。ただし、売りは急いで、買いはゆっくり行うのが良いでしょう。


中東危機で相場急落、株の売り時と買い時とは?
私がファンドマネージャーの時 激変の時は銘柄入れ替え やった

 左側はAI関連のテーマ株に多い傾向があります。一方、右側は長期的に評価されてきたバリュー株で、大きく割安な状態から最近見直されて上がり始めた銘柄などです。


 ベンチマークに負けないファンドというのは、良い流れの時に少しずつ勝ち続け、流れがガラッと変わった時もそれほど負けずに少しずつ勝ち続けるものです。

大きく勝っていると、流れが変わった時に大きく負けてしまうことになります。これを防ぐためには、銘柄の「入れ替え」を行うことが大切なのです。


 毎日のポートフォリオがTOPIXに対して負けなくなれば、その後またファンダメンタルズを判断しながら、さらにリスクを落としていくか、あるいはまたリスクを上げ直すか、ということをゆっくり考えれば良いのです。


よくある失敗「買い値を下回ったら売らない」がいけない理由

__ショック相場で個人投資家によくある失敗はありますか。


 個人投資家によく見られるのが、「買い値を下回ってしまったら、戻るまで絶対に売らない」という行動です。逆に、含み益があったらすぐに売ってしまう人もいます。このような時は損切りと益出しを考える必要はありません。


 キャッシュを作るためではなく、とにかく銘柄を入れ替えて、ポートフォリオのリスクを少し落とすことです。ディフェンシブな銘柄を入れるというのも良いでしょう。


__自分で買った株は、買った値段を気にしてしまいがちですが、マーケット目線で考えるということですね。


 そうです。トレードがうまくなるための秘訣(ひけつ)は、損切りと益出しを考えないことです。「売った結果良いものを残し、悪いものを売る」という考え方が良いでしょう。


 そういう意味では、AI関連株もチャートが崩れ始めている場合はいったん売却して、将来また買い戻すことが必要です。私はAI関連のテーマが終わったとは全く思っていませんが、それでもこのような状況になった時は、いったんポジションを調整して様子を見るのが賢明ということです。


 また、どれくらいの株を持っているかということも非常に大切です。株を持ちすぎている場合や、テーマ株ばかり持っているようであれば売却すべきです。そうでなければ、そんなに慌てる必要はないと思います。


「急落後すぐに買う」は危険!調整後、買い直しのサインは?

__当面はポジションの調整を行い、改めて買い直していく時は、何を「買い」のサインとして考えれば良いでしょうか。


 ファンドマネージャー時代、私は「一番大切なのはファンダメンタルズだ」と言いながらも、短期的な判断にはやはりテクニカル分析、つまりチャートを見ることが大切だと考えていました。株価は短期では需給で動き、長期ではファンダメンタルズで動きます。短期的な流れを把握するためには、チャートを見ておく必要があります。


__逆に、買ってはいけないタイミングはありますか。


 ショックで株価が下がった後にすぐに買うのはいけません。急落直後は、「下がったから買おう」という人よりも、「下がったから売らなければならない」という人が先に動くからです。


「下がったら売らなければならない人」というのは、機関投資家のファンドです。株価が下がるとボラティリティが高くなり、機械的に売るようにプログラムされているファンドもあります。そのようなファンドの売りが、今後出てくる可能性があります。


 また、レバレッジをかけているファンド、例えば100億円のファンドで200億円分のポジションを持っているようなファンドも、「下がったから売らなければならない」ので売りに出てきます。このあたりの整理がある程度終わってから、買いに入っていくのが良いでしょう。


NISA積立投資家は、どうすれば?

__一方で、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で長期投資や積み立て投資をやっている人は、どのように相場と向き合えば良いでしょうか。


 積み立て投資、特にインデックスファンドへの積み立て投資は、非常に優れた投資手法です。このような急落時は特に何もせず、慌てずに淡々と積み立てを続けるのが良いと思います。株のリスクはいろいろありますが、インデックスファンドならば個別銘柄のリスクというものを避けられます。


(トウシル編集チーム)

編集部おすすめ