中東情勢の緊迫化が原油価格を急騰させ、日経平均の急落と円安を招きました。イラン情勢はこのまま長期化するのか、そして原油高止まりするのか。

世界経済悪化の懸念から市場が注目しています。19日には日米首脳会談を控えており、トランプ大統領がどう動くのかも注意が必要です。


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中東緊迫化で市場大荒れ。日経平均急落、円安加速…原油価格の行方

 イラン情勢は長期化するのでしょうか。長期化によって原油価格も高止まりするのでしょうか。市場はこの2点に注目しています。原油高止まりによる世界経済悪化が懸念されています。


 中東情勢の緊迫化によって原油は100ドルを突破し、8日の時間外取引でニューヨーク原油ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は一時119ドル台に上昇しました。原油上昇による景気後退懸念が強まり、9日の日経平均株価は一時4,200円超安の急落となり、ドル円は158.90円近辺まで円安に行きました。


 一連の動きを受けて、G7(先進7カ国)は緊急オンライン会議を開催し、原油上昇に対して石油備蓄の協調放出を含め、協調して対応するとの共同声明を出しました。さらにトランプ大統領が戦争はすぐ終わると発言したことから、WTIは80ドル台に急落し、その結果ドル円も157円台の円高の動きとなりました。


 このまま、イラン紛争が終結すれば、原油は紛争前の70ドル前後の水準まで下落する可能性がありそうです。

従って、ドル円も155円前後に戻して、米連邦公開市場委員会(FOMC)(3月17~18日)や日本銀行の金融政策決定会合(3月18~19日)を迎えることになりそうです。


 しかし、イラン紛争が長引くと、円安は続くことが予想されます。イランの革命防衛隊は、「戦争を終わらせるのはわれわれだ、それまではホルムズ海峡から原油1リットルも輸出させない」と主張しています。イランがホルムズ海峡に機雷敷設の準備をしているとの報道も伝わってきています。


 10日、WTIは再び90ドル台に上昇しましたが、G7による石油備蓄放出の報道によって一時76ドル台まで下落しました。下落していたNY株も上昇しましたが、米国がホルムズ海峡のタンカー護衛の報道を否定したため、再び原油は上昇しています。


 原油のボラティリティーは非常に高くなっており、株もドル円も原油価格の動きに翻弄(ほんろう)されている状況となっているため注意が必要です。ドル円は157円台を行き来していましたが、終盤には158円台に乗せて10日を終えています。


 ただ、158円台は、ベッセント財務長官が主導した1月の米連邦準備制度理事会(FRB)によるレートチェックの水準です。市場もこの「ベッセント・シーリング」を意識しているのか、9日に株が大幅に下落した時も円売りは緩やかな動きでした。


 今後、FRBのレートチェックが再び実施されるのかどうか分かりませんが、レートチェックによって円高に行っても、原油が高止まりしていれば円安に戻る可能性がある点には留意する必要があります。


日米首脳会談までにイラン紛争は終息するか

 先週6日に発表された米2月雇用統計は非農業部門雇用者数がマイナス9.2万人と、予想+5.5万人と比べると約15万人の下振れとなりました。

さらに過去2カ月分もマイナス6.9万人の下方修正となりました。


 失業率も4.4%と予想より上昇し、雇用情勢悪化懸念を後退させた1月の雇用統計が特殊要因によるものではないかとの懸念を裏付ける内容となりました。今回のマイナスの雇用者数も医療従事者のストライキや寒波によるものといわれていますが、それにしても低調な傾向が続いています。


 このまま原油価格の高止まりが続くと新たなインフレ圧力になって、米経済はスタグフレーション(物価高下の景気後退)に陥る可能性があります。


 米雇用統計の結果を受けてFRBの金融政策も難しいかじ取りを迫られることになりそうです。1月のFOMCでは追加利下げに慎重姿勢を示していましたが、低調な雇用情勢を見て利下げを検討する状況になってきたようです。


 しかし、原油高という新たなインフレ圧力を警戒する必要も生じてきたため利上げを検討する必要性も出てきました。これまでの追加利下げ様子見姿勢から一転、スタグフレーションを警戒しながら利下げにも利上げにも動けない様子見状況となってくるかもしれません。


 3月のFOMCで公表予定の経済・金利見通しも悩ましいものになるのだろうと推測されます。パウエル議長も5月の議長任期終了まで「音無しの構え」のようでしたが、動かざるを得ない環境になってきました。今度は苦悩の中で身動きがとれなくなるかもしれません。


 アトランタ連邦準備銀行のGDP Nowは、雇用統計発表後、1-3月期GDP予測を3.0%から2.1%に大幅に下方修正しました。

市場もスタグフレーションを警戒しているのか、雇用統計発表後、追加利下げ期待もわずかに後退したようです。


 一方、日本の10-12月期国内総生産(GDP)改定値は実質年率で+0.2%から+1.3%に上方修正されました。日米の景気の方向性だけを考えると、中期的には米国金利は低下方向になり、日本の金利は上昇方向になることが予想され、円高要因になる可能性があります。


 しかし、原油上昇によるインフレ懸念がかく乱要因となるため、しばらくは中東情勢と原油動向から目が離せません。


 原油高によるインフレ圧力よりも景気悪化による需要減少によってインフレは抑制されることも予想されます。インフレ上昇の度合いと景気悪化の度合いのうち、どちらが強いかに注目です。


 まずは、3月11日発表の米国2月消費者物価指数(CPI)に注目です。イラン攻撃前のCPIですが、食品・エネルギーを除いたコアCPIに注目です。前年比で前月と同じ2.5%の予想となっていますが、少しでも上昇の気配をみせる数字であった場合には、今の環境ではドル高に反応する可能性がありそうです。


 また、13日にはFRBが注目する物価指標である米国2月個人消費支出(PCEデフレーター)が発表されます。これも食品・エネルギーを除いたPCEコア・デフレーターに注目したいと思います。


 前年比は前月の3.0%に対して3.1%の予想となっていますが、上振れるのか下振れるのか注目です。

予想通りであっても前月より上昇しているため、今の環境ではドル高に反応するかもしれず注意が必要です。


 3月19日には日米首脳会談が控えています。それまでに紛争終息の動きがないと、ホルムズ海峡への自衛隊出動の要請があるかもしれず注意したいと思います。そもそも日米首脳会談が実現するかどうかも不透明かもしれません。トランプ大統領としては、月末の訪中、米中首脳会談まではイラン紛争を終結させることに集中したいかもしれません。


 9日、トランプ大統領は、戦争はすぐに終わるだろうと述べました。数日前にはイラン攻撃の長期化や大規模攻撃を示唆していましたが、原油急騰によってガソリン価格も上がってきたため、米中間選挙を意識してすぐに終わると言い始めたのかもしれません。


 イラン攻撃後の3月3日に行われたテキサス州の予備選挙では、上院選の得票総数で民主党が共和党を上回りました。伝統的に共和党が強い州だけにトランプ大統領は焦っているかもしれません。


(ハッサク)

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