出光興産と昭和シェルのガソリンスタンドが、新ブランド「アポロステーション」として装いを新たにします。これにともない、長年親しまれてきたシェルのマークは消滅へ。

サービスはどうなるのでしょうか?

経営統合から2年、ブランド統合へ

 出光興産と昭和シェル石油を統合したガソリンスタンドの新ブランド、「アポロステーション(apollostation)」が2021年4月に発足します。その記者会見が2020年11月24日(火)に行われました。

 両社の経営統合は2019年4月に実施され、ブランド統合に向けた検討を進めてきたといいます。既存の出光とシェルのスタンドは合計で約6400店、業界第2位の勢力です。これら店舗が順次、アポロステーションに切り替わります。店舗のデザインはもちろん、制服、タンクローリー、エンジンオイル類、さらにはクレジットカードのデザインまで、一新されます。

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アポロステーションのイメージ(2020年11月24日、中島洋平撮影)。

 アポロステーションへの切り替えは2023年まで、3年をかけて実施していくとのこと。このため、2021年4月からしばらくは、アポロステーションと既存の出光のスタンド、そして昭和シェルのスタンドが併存しますが、昭和シェルのあの貝のマークはだんだんと消えていきます。

「シェルのマークはもともとライセンス契約があったこともあり、出光のアポロマークを基本に新デザインを進めていくのは前提でした」と出光興産の上席執行役員 販売統括 森下健一さんは明かします。新デザインにシェルのマークは一切使われず、シェルの要素をデザインに盛り込んでもいないそうです。

ガソリンスタンドの未来、どうなる?

 2021年4月からは、出光、シェルそれぞれのブランドのクレジットカードや各種支払いサービスが、どの店舗でも使えるようになるほか、統合アプリをリリースしたり、シェルのスタンドで行っている家庭用電気の販売を出光のスタンドでも行ったりします。

 シェルのスタンドで展開しているエンジンオイルなどは、引き続き販売されるものの、アポロステーションに切り替わったあとは、オイルもアポロステーションのものに切り替わるそうです。

 ただ、ブランド刷新の意味は単なるサービス統合ではありません。さらにアポロステーションのビジョンとして森下さんは、「移動体験全体を『面』で見たサービスを提供する」と話します。

 たとえば、洗車の予約や定額給油の事前清算をアプリで行い、自宅を出てスタンドについたら、すぐに始められるようにするサービスのほか、ガソリンスタンドそのものをWi-Fiつきのテレワーク拠点にするといったサービスを検討しているとのこと。

「給油のついで」で利用できるコインランドリーや、託児所などを併設するといったことも考えられるといいます。また、スタンドでEV(電気自動車)を貸し出し、地域の足として利用するサービスも挙げられました。これらは一部店舗ですでに実施しているものもあるそうです。

「シェルのGS」消える 出光の統合ブランドへ移行 3年かけ6400店切り替え

会見する出光興産の上席執行役員 森下健一さん(2020年11月24日、中島洋平撮影)。

「地域ごとに課題は異なります。当然、店舗独自の取り組みからボトムアップで発展させていくことも考えられるでしょう」(出光興産 森下さん)

 コロナ禍で移動そのものが減っていますが、ガソリンスタンドを利用する前後の移動を徹底的に把握しながら、ブランドを育てていきたいと森下さんは話します。経営環境が厳しさを増し、スタンドが次々と閉店していくなかですが、「これ以上(スタンドを)減らさない」覚悟で臨むそうです。

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