JAL機がエンジン破損で、那覇空港に引き返したトラブルが発生して以降、不具合で引き返すたびに国内各社で報じられるようになっています。ただ、JAL機のトラブルとその後のものでは大きな違いがあるようです。

2019年のイレギュラー運航は約190件

 2020年12月4日(金)、那覇発羽田行きのJL904便(ボーイング777-200、機番:JA8978)が飛行中に左エンジンでトラブルが発生し、那覇空港に引き返しました。パイロットは手順書に従い左エンジンを停止し引き返しを決定。11時53分に管制機関に対して緊急事態を宣言し、12時23分に無事着陸しています。

 乗客は全員無事だったものの、着陸したとき同機はエンジンのカバーがはがれた状態となっていました。原因については現在調査中です。

相次ぎ報じられる旅客機「不具合で引き返し」 実は「1日1件」...の画像はこちら >>

那覇空港のJAL機。エンジントラブルを起こしたものと同型のボーイング777-200(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。

 次いで8日(火)、羽田発那覇行きのJAL便が「油圧計のトラブル」を理由に羽田空港に引き返す事象が、13日(日)にはLCC(格安航空会社)のピーチ便が「運航管理装置の不具合」の理由に関西空港に引き返す事態が発生し、冒頭のJALの緊急着陸をきっかけに、トラブルが起こるたびに報道各社が取り上げるといった状況が見られるようになりました。

 とはいえ、少なくとも8日、13日の引き返しは、実はさほど珍しいものではありません。国土交通省は冒頭のJALのエンジン破損を「重大インシデント」、次いで起こった2件を「イレギュラー運航」として規定しています。

 前者「重大インシデント」は、2010(平成22)年から2019年の10年間で1年間平均5.3件(離陸重量が5.7tを超える飛行機に限る)なのに対し、機体不具合による「イレギュラー運航」は、いわゆる「航空会社(最大離陸重量が5.7トンを超える飛行機又は路線を定めて旅客の輸送を行うもの)」に限っても、単純計算で2日に1回は発生しています。これに加え、たとえば個人所有の軽飛行機なども含めれば「1日1件ほど」(国土交通省安全部運航安全課)になるといいます。

 ちなみに国土交通省によると、2019年のイレギュラー運航は190件ほどとのことです。

重大インシデントとイレギュラー運航の明確な違い

 前者の重大インシデントについて、国土交通省は、航空法第76条の2に定められている「航空事故が発生するおそれがあると認められる事態」であるとしています。

 この事態については、航空法施行規則第166条の4で定義。具体的には「閉鎖中、ほかの航空機が使用中の滑走路からの離陸や着陸」「非常脱出スライドを使用して非常脱出を実施するような事態」「飛行中において地表面や水面への衝突、接触を回避するためパイロットが緊急操作を行った場合」など16のケースが挙げられています。

 一方、イレギュラー運航は「安全に直ちに影響を及ぼすような異常事態ではなく、例えば、多重化されたシステムの一部のみの不具合が発生した場合に乗員がマニュアルに従い措置したうえで、万全を期して引き返しなどを行った結果、目的地などの予定が変更されたものなどを指す」とのこと。たとえば「計器のランプが故障してしまった」などのケースも該当するのだとか。

 国土交通省安全部運航安全課の担当者は「そのままフライトは可能な状況ではあるのですが、利用者の安全性を確保するため、『念には念を入れる』という意味で引き返すものです」とその定義を話します。

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