東京23区と多摩地域を含めた最南端のバス停は町田市にありますが、本当の最南端は、都心から南へ約1000kmの太平洋上に浮かぶ小笠原諸島の父島に存在します。バスで行ける「南の果て」の景色とは。
東京23区と多摩地区を含めた路線バスの最南端バス停は町田市にありますが、島しょ部まで含めると、八丈島でも大型車両による町営バスが走っています。小型車両での運行を含めれば、さらに南、東京都心から1000km離れた小笠原諸島の父島でも小笠原村がバスを運営しています。
その小笠原村営バスの「小港海岸」バス停こそが、東京都最南端のバス停です。“南の最果て”のバス停には何があるのでしょうか。
小笠原村営バスの小港海岸停留所(2016年2月、乗りものニュース編集部撮影)。
父島は、東京(本土)の竹芝ふ頭から貨客船「おがさわら丸」で24時間かかります。2月に父島を訪問した際、東京はまだコートが手放せませんでしたが、船で朝を迎えてデッキに出ると、すっかり暖かい風に変わっていました。以来、コートは着る必要がなくなり、本土に戻るまで荷物となります。
船が入る二見港の周辺には、村役場や都の支庁、警察署、気象庁の観測所なども並んでいます。村営バスは、この集落をめぐる大村~奥村循環線と、島の南北を結ぶ扇浦線の2系統です。両系統は直通していますが、循環線直通は1日5本(土休日2本)のみで、ほかの14本(土休日11本)は扇浦線区間のみを往復しています。
扇浦線が出発するのは、村役場前バス停です。
小港海岸停留所の周辺は何もありません。バスが通ってきた道はこのバス停で終わっており、ここからは海や山へ遊歩道が続いています。
森林生態系保護地域のため、遊歩道に入る際は、服や靴に付いた種子や泥を備え付けのブラシなどで落とし、さらにプラナリア対策のため、靴底には酢スプレーを吹きかけます。これで出発の準備は整いました。
バス停から20分ほど登山道を進むと視界が開けて中山峠に着きます。海風に当たりながら海岸や周囲の小島を見渡せる絶景スポットです。小笠原(ボニン)の海の色を表す「ボニンブルー」の海岸を眺めると、白砂が輝いており海水が透明なのが分かります。時間を合わせて向かうと、夕日に染まった大海原も一望できます。
登山道は中山峠からさらにブタ海岸や高山(標高228m)、ジョンビーチなどに続いていますが、いったんきびすを返し、今度はバス停から海へ向かいます。
バス停からタマナやハマギリの防風林を進むこと約3分、着いた小港海岸は遠浅な入り江になっており、白い砂浜が広がっています。
東京都最南端のバス停は、海や山を楽しむ玄関口でした。大海原も、白砂が広がる海岸もまた東京の風景といえるでしょう。
ちなみに、父島からさらに南へ約50km下った先に母島がありますが、この島は路線バスなどの公共交通機関はありません。