ロシアでは毎年、第2次世界大戦においてドイツに勝ったことを記念する式典が各地で行われています。そこで高官が乗るクルマには、国の威信から旧ソ連/ロシア製が用いられていますが、非常にバラエティに富んでいます。

モスクワで使われていたベテラン・オープンカー

 ロシアは2021年5月9日(日)、首都モスクワの「赤の広場」において、プーチン大統領以下、政府や軍の要人が参列して、第2次世界大戦の対ドイツ戦勝を記念した軍事パレードを実施しました。

「対独戦勝記念パレード」と呼ばれる一連の式典は、ロシアにとって最大の国家行事であり、同様の式典はモスクワに限らず様々な都市で実施されています。代表的なところでも極東のウラジオストクやハバロフスク、中央部のエカテリンブルク、南西部のヴォロネジ、フィンランド国境に近いサンクトペテルブルクなど、大都市ではほぼ、といえるほどです。

 それら各地の戦勝記念式典では、整列した兵士たちを高官が巡閲する際に国産のオープンカーが使われるものの、その車種は実にバラエティに富んでいます。

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サンクトペテルブルクの対独戦勝記念式典で使われていたZIL-410441。2017年までモスクワの対独戦勝記念式典で使われていた車両(画像:ロシア国防省)。

 たとえば、ロシア第2の都市であるサンクトペテルブルクでの戦勝記念式典で高官が乗車していたのは、旧ソ連時代から高級車や大型車を手掛けていたZIL(リハチョフ記念工場という意味)の「ZIL-410441」です。

 同車は2017(平成29)年まで首都モスクワの対独戦勝記念式典で使われていた車両で、モスクワの式典で使われる車両が最新のアウルス「セナート」に更新されたのに伴い、こちらに回ってきたようです。

古都にふさわしい40年選手のV8クラシック・オープンカーとは?

 ロシア極東の最大都市、ハバロフスクで行われた対独戦勝記念式典で用いられていたのは旧ソ連時代末期、GAZ(ゴーリキー自動車工場の意味)が1970年代後半から1980年代にかけて生産していた「GAZ-14」です。全長約6.1m、全幅2mある大型リムジンで、排気量5500ccのV8エンジンを積むという、ある意味アウルス「セナート」にも見劣りしない“体躯”を持つオープンカーといえるでしょう。

 モスクワの北東にある古都ロストフで行われた対独戦勝記念式典では、1970年代に生産されていたZIL-117が姿を見せました。このクルマは、ボディサイズこそ、アウルス「セナート」やGAZ-14よりも小さいものの、心臓部には排気量7000ccのV8エンジンを搭載しており、車格的には2車に見劣りしません。

また誕生から40年以上経つ、いわゆる“クラシックカー”であるのも、古都ロストフにふさわしいのではないでしょうか。

どクラシックが逆にカッコいい! 旧ソ連製オープンカーたち ロシア各地の記念式典で快走

ロストフで行われた対独戦勝記念式典で使われていたZIL-117。40年以上前に生産されたクルマながら、排気量7000ccのV8エンジンを搭載している(画像:ロシア国防省)。

 ヴォロネジやウスリースク、ノボシヴィルスクなどで実施された戦勝記念式典で使われていたのが、比較的最近まで生産されていたGAZ-3102「ヴォルガ」です。とはいえ、旧ソ連時代の1982(昭和57)年から2010(平成22)年までの約30年にわたって連綿と生産され続けたことから、各々ホイールや灯火類など、同じ車種といっても時期によりに細かな差が見られます。

 なお、同じGAZ「ヴォルガ」シリーズであっても違うものを使っている都市もあります。

多種多様なGAZ「ヴォルガ」シリーズ

 サハリン州の州都ユジノサハリンスクで実施された戦勝記念式典で使用されていたのは、
旧ソ連が消滅し、ロシアになってから生産されるようになったGAZ-3110「ヴォルガ」です。基本構造は前出のGAZ-3102「ヴォルガ」と同じものの、ボディのプレスラインが丸みを帯び、ライト周りの形状が変わり、メッキグリルが付くなど、デザインを変えているのがわかります。

 一連のGAZ「ヴォルガ」シリーズのなかで最も新しいタイプを使用していたのが、ブリヤート共和国の首都ウラン・ウデで行われていた戦勝記念式典でした。巡閲に際し、高官が乗車していたのは、2004(平成16)年から2009(平成21)年まで生産されていたGAZ-31105「ヴォルガ」。一見すると別車種にも見えるほど、グリルやヘッドライトなどフロントマスク形状が一新されたタイプです。

どクラシックが逆にカッコいい! 旧ソ連製オープンカーたち ロシア各地の記念式典で快走

ブリヤート共和国の首都ウラン・ウデで開催された対独戦勝記念式典で使われていたGAZ-31105「ヴォルガ」(画像:ロシア国防省)。

 こうして見てみると、地方都市での式典であっても、外国車ではなく自国製のオープンカーにこだわっているのがわかります。軍事パレードでありながら「UAZ-469」といった軍用4駆を使わず、民間車ベースのオープンカーを使っているのは、やはりその方が威厳と華やかさが増すからでしょう。

 それらは、いまの目で見ると、デザインがクラシックで新鮮に映るものもあるかもしれません。そのような視点でロシアの戦勝記念式典を眺めてみるのも、また楽しいのではないでしょうか。

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