北海道の空の玄関口、新千歳空港から直線距離で約3km弱にある美々信号場は、かつてJR千歳線の「美々駅」だった場所です。利用人数はごくわずかながらも、ある意味で名高い駅でした。
北海道の空の玄関口、新千歳空港から直線距離で3km弱の距離に、美々信号場があります。ここは、1926(大正15)年から2017(平成29)年までJR千歳線の美々駅でした。
「旧美々駅」である美々信号場と新千歳空港の位置関係(国土地理院の航空写真を加工)。
この美々駅、利用人数の非常に少ない“秘境駅”であったことでも知られています。廃駅直前の2016(平成28)年9月28日付けで苫小牧民報社が報じたところによると「駅設置から90年が経過して近年、美々駅の乗車人員は1日平均0~1人にまで落ち込んでいる」状況だったとのこと。駅を廃したのも、この利用人数の少なさからでした。
一方で在りし日の美々駅は、その利用者数のわりに一部では有名な駅であったようです。札幌方面から新千歳空港へ通じる千歳線は、新千歳空港駅の手前の南千歳駅で、空港へ向かう線路と、空港をスルーして苫小牧方面に向かう線路に分岐しますが、この南千歳駅から苫小牧方面へひと駅の位置にあった美々駅は、「旅行者泣かせ」の駅として知られていました。
なぜ美々駅は「利用者泣かせ」だったのか空港へ向かう人が誤って苫小牧方面の列車に乗ってしまった場合、南千歳を過ぎ美々駅で乗り間違いに気づき、慌てて降りることもあったでしょう。ただ、美々駅は南千歳へ戻る列車の本数もそう多くはなく、空港まで歩くとなると、滑走路を回り込まなければなりません。その距離はおよそ7kmにもなりました。
つまり、乗り間違えて空港に戻るまでに大きな苦労を要し、最悪、予約していた飛行機に間に合わなくなるという意味で、「トラップ駅」として知られていたのです。
他方で美々駅は撮影スポットとしても知られていました。クルマならば空港から10分程度とアクセス性もよく、また駅周辺は線路が一直線に伸びていることから。寝台特急「北斗星」などの列車を北海道らしい景色とともに撮影できる点が理由だそうです。
2021年7月現在の美々信号場は、跨線橋やホームが撤去されている一方で、駅舎は廃止当時のまま残っています。ただ駅の入り口はロープが貼られ立ち入り禁止となっており、簡易型のIC乗車券「Kitaca」の改札機も撤去されています。駅舎に書かれていた「美々駅」の駅名も外されていました。
※一部修正しました(7月6日10時28分)。