夜行列車には、夜行列車ならではの良さがあります。JR西日本が新たに運行する京都発新宮行きの夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」に、どれぐらいその「良さ」があるでしょうか。

実際に乗車してきました。

前後の違いが大きいほど際立つ「夜行列車の良さ」

 夜行列車の良さ。そのひとつに、「目覚めると、いつの間にか遠く離れた世界に自分がいる」のがあるでしょう。「寝る前」と「目覚め後」の違いが大きいと、よりそれが際立ちます。

 現代の日本で夜行列車はすっかり貴重になりましたが、そうしたなかJR西日本が2021年7月16日(金)より、京都発新宮行きの夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」を新たに運行します。

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京都駅31番線に入線した新宮行き夜行特急「WE銀河」(2021年7月3日、恵 知仁撮影)。

 はたしてこの列車、「夜行列車の良さ」に関して、どんな具合なのでしょうか。ひとあし早く7月3日(土)から4日(日)にかけて、報道向けに公開されたその列車に乗車し、取材してきました。

 夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」は、家路を急ぐ通勤電車の乗客たちから視線やスマホが向けられるなか、京都駅31番線を21時15分に発車。大都会の夜景を眺めながら大阪環状線を約半周し、23時42分に和歌山駅へ到着しました。

夜行列車は「激変」するほど良い―京都発新宮行き夜行特急「WE銀河」はどうか?

和歌山駅を発車後、減光された車内(2021年7月4日、恵 知仁撮影)。

 和歌山駅では、乗客に用意されていた「和歌山ラーメン」を駅の外へ食べに行ったのち、午前1時ちょうどに発車。

車内は暗くされ、車内放送も朝まで中断との旨が伝えられます。

 いよいよ、夜行列車らしくなってきました。

「皆様、おはようございます」

 雑踏の京都駅から始まった、夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」の旅。一夜明けて目を覚ますと、特に進行方向右側の窓から、柔らかい光が差し込んでいました。

 見渡す限りの雄大な水平線。電車の窓を額縁のようにして、夜明けの太平洋が広がっていました。

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目覚めたら広がっていた太平洋(2021年7月4日、恵 知仁撮影)。

 時計を見ると、午前5時40分ごろ。「和深」というなじみのない駅名標が車窓に現れ、過ぎ去っていきます。

 ただただ太平洋と、「ガタンゴトン」という列車の音。その時間が続きます。

 ふと、車内が明るくなりました。

「皆様、おはようございます。7月4日、日曜日。本日の和歌山県南部のお天気は、曇りの予報です。列車は先ほど、紀伊有田駅を定刻で発車いたしました。あと3分ほどで串本に着きます」

夜行列車は「激変」するほど良い―京都発新宮行き夜行特急「WE銀河」はどうか?

串本駅に到着した「WE銀河」(2021年7月4日、恵 知仁撮影)。

 この朝6時の車内放送を合図のようにして、車内の各所から人の動く気配が一斉に伝わってきます。

 黒潮の恩恵を受ける本州最南端の街、和歌山県串本町。列車はその駅へ6時04分、時刻通り到着しました。

甲殻類の亀

 夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」は、串本駅で約2時間の停車。その間、乗客は2班に分かれ、「レストラン空海」での朝食「漁師の朝ごはん」、ジオガイドの案内による天然記念物「橋杭岩」鑑賞を入れ違いで楽しみます。

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「レストラン空海」での朝食「漁師の朝ごはん」(2021年7月4日、恵 知仁撮影)。

「漁師の朝ごはん」は「カツオのたたき丼」「トコブシ」「亀の手味噌汁」「漬物」と、串本ならではの味覚が集結。

「亀の手」は貝のようですが甲殻類で、その味噌汁には磯の風味が薫っていました。

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ジオガイドの案内による天然記念物「橋杭岩」鑑賞(2021年7月4日、恵 知仁撮影)。

 空気がすっかり朝のものになった夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」は、串本駅を8時ちょうどに発車。終点である熊野地方の中心都市、新宮へは9時37分に到着予定です。車窓には引き続き、太平洋が広がっています――。

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新宮駅に到着し平安衣装の女性らに歓迎された「WE銀河」(2021年7月3日、恵 知仁撮影)。

 ――こうして京都駅から新宮駅へ到着したのですが、この夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」が持つ「夜行列車の良さ」、いかがでしょうか。

 程よい時間に都会を出て、程よい時間に太平洋で目覚められるこの列車。そのポテンシャルは高いと思います。

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