東京23区西部を南北に貫く山手通り、環七通り、環八通りのうち、環七は自転車で比較的走りやすいとも聞きます。実際にはどうでしょうか。
都心から郊外へ放射状に鉄道や主要道路が延びる東京都内において、それら路線をつなぐ「タテの路線」は、ありがたい存在でしょう。とりわけ、山手線外側の山手通り(環状6号線)、環七通り、環八通りは自転車のユーザーにも利便性の高い道路です。
なかでも、サイクリストたちのあいだでは環七が比較的自転車に優しい道路という意見が聞かれます。環状8路線のなかで唯一、「海から海(大田区~江戸川区)」を11区にまたがって結ぶ路線であり、延長は52.5kmと都道で最長ですから、ふだん、どこかしらの区間をよく使うという人も多いことでしょう。
では、山手通りや環八と比べて、実際に環七は走りやすいのでしょうか。
環七通り(シイナ撮影)。
山手通りの場合、環七と比べて立体交差が少なく、多くの区間で片側2車線+路上駐車のクルマも避けられるほど広い路側帯が確保されています。目黒区や中野区などで幅の広い歩道には自転車レーンを設置し、舗装の色を変えることで歩行者と自転車の走行場所を分けている箇所もあります。ただ自転車レーンではブロック舗装や縁石の段差もあり、スポーツ自転車のようなタイヤの空気圧が高いものではガタガタと跳ねてしまい、快適とは言えない側面も。さらにバス停付近では自転車レーンが途切れて、歩行者と自転車が入り乱れるため気の抜けない箇所もあります。
そして最大のネックは、アップダウンの多さ。
一方、環八は急なアップダウンこそ少ないものの、特に東名高速と関越道のあいだは常に混雑するほど交通量が多いのが難点。とはいえ、本線が延々と地下あるいは高架になる杉並区北部から練馬区にかけては、「側道」として地上道路も確保されており、比較的走りやすいかもしれません。
“開かずの踏切”や“渋滞の名所”と言われた井荻駅(杉並区)周辺も、解消策として1997(平成9)年に井荻トンネルが開通しましたが、自転車は本線トンネル内走行禁止のため、これとは別の地下通路を使用することになります。しかし、地下通路の入り口もわかりづらいため事前の下調べが必要なポイントです。
環七の一部を自転車で走ってみたこれらに対して環七は、アップダウンもそれほどではなく、本線は多くの主要道路と立体交差(立体部は自転車通行不可)していますが、自転車は地上の平坦な交差点を進むことができます。ただし、西武新宿線や西武池袋線と立体交差する箇所など、自転車は下りて歩道の階段を押し歩いたり、環七を離れて迂回せざるを得なかったりする箇所もあるので注意が必要です。
人口が多い世田谷区や大田区などの環七を実際に自転車で走ってみます。片側2車線以上が整備され、基本的に白い矢印の「自転車ナビマーク」と青い矢印の「自転車ナビライン」が整備されています。つまり車道の左端を通行することになりますが、子供を乗せて走るような場合はいざ知らず、車線幅も広いためクルマへの恐怖感は小さい印象です。
ただし、路上駐車やバスも多く、通行量は目黒区によると1日7万台超、そのうち3割がトラックなど大型車とのこと。常時混雑する環八と比べると、日中は比較的穏やかな通行量といった感じですが、朝夕は混雑します。

青い矢羽根形の自転車ナビラインが整備された交差点(シイナ撮影)。
自転車は、コロナ禍において“密”にならない移動手段として注目される一方、都内における自転車絡みの交通事故は、2010(平成22)年の36.2%から、2020年は40.6%まで上昇しています。自転車道の整備に関して、東京都は2012(平成24)年に「東京都自転車走行空間整備推進計画」を策定し、その後、都知事が変わっても推進してきた経緯があります。
さらに2021年5月にはコロナ禍の自転車需要を受けて、2040年代までに都道の約1800kmで自転車の走行空間整備を目指すと発表していることから、どこまで実現するのか注目です。