東京メトロ有楽町線の豊洲駅は、4つあるのりばのうち中央にある2番線と3番線が封鎖されています。ホームドアなどは残されていますが、なぜこんな状態になり、今後どうなるのでしょうか。
東京メトロ有楽町線の豊洲駅は2面4線構造で建設されており、1番線から4番線まであります。しかし2021年7月現在、ふたつのホームの間には板が渡され、真ん中の2本の線路はいわば「埋められた」ような形になっています。1番線と4番線だけが残った、幅の広い1本の島式ホームとなった格好です。
2021年2月にデビューした東京メトロ有楽町線・副都心線の新型車両17000系(2020年、恵 知仁撮影)。
2番線と3番線は無くなりましたが、出発案内などの装置のほか、ホームドアもそのまま残っています。乗降客がホームドアの隙間を通り抜けていく風景は、どこかシュールです。
なぜこのような状態になっているのでしょうか。そして今後、この状態はどうなるのでしょうか。
東京メトロによると、2番線と3番線を「埋めた」理由は、東京オリンピック・パラリンピックの開催に際して、メイン会場へのアクセス拠点である豊洲駅に利用客が集中し混雑するのを防ぐための「一時的な措置」であるとのこと。
2019年10月のダイヤ改正でこの2本の線路を使用する列車はなくなり、翌2020年3月にホームの封鎖が完了。上下線ののりばがひとつのホームとして結ばれました。ホーム間に設置されている板を外せば2番線と3番線は電車の進入が可能になるため、いつでも運用が再開できるよう、各種設備はそのままにしているそうです。
では、東京オリンピック・パラリンピックが閉会したあとは、この2番線・3番線はまた復活するのでしょうか。東京メトロでは「今後の予定は未定」とのこと。
背景として、ホーム閉鎖の決定当初には想定されていなかった、新型コロナウイルスの感染拡大があります。駅構内の人の密集を緩和するのに有効であるため、コロナ禍が続くあいだは当分運用の再開はないのかもしれません。
もともと2番線と3番線を使用する列車は、朝ラッシュ時の豊洲折返しの数本のみでした。また、東京メトロでは減便ダイヤを行うなど、利用客減少をふまえたダイヤを行っています。有楽町線ではすでに「豊洲駅2番線・3番線を使わないことが前提のダイヤ」であり、あえてこのふたつののりばを運用する必要に迫られるのは、利用客が再びピーク時の数に達し、新木場折返しだけでは列車をさばききれないほどの頻発運転となる場合でしょう。
時代に翻弄されたホーム いよいよ飛翔の時?さて、そもそも豊洲駅はなぜこのような構造になっているのでしょうか。結論から言うと、豊洲駅からは住吉方面へ向かう有楽町線の支線、別名「豊住線」の建設計画があったため、1988(昭和63)年の開業当初から分岐駅としての機能を持った構造で造られていたのです。実際、2番線と3番線のホームから新木場方面へトンネルの奥をのぞくと、左方向へ緩やかに曲がっていく様子が見えます。

「豊住線」の予定ルート図(画像:江東区)。
この有楽町線支線の建設計画が、最近にわかに進展を見せ始めました。
ちなみに豊住線の終着駅とされる半蔵門線の住吉駅も、2003(平成15)年の開業当初からこの豊住線の発着を想定した構造となっています。こちらは豊洲駅とは違い、1面2線のホームを地下3階と地下4階に配置した「2層構造」で、半蔵門線の渋谷方面が地下3階、押上方面が地下4階に分かれているのはこのような理由があったのです。
この豊住線、想定では建設期間10年とされています。豊洲駅2番線・3番線の「覆い」が外され、電車が再びやってくる時には、その電車はもはや「有楽町線」ですらないのかもしれません。