ANAの総2階建ての超大型機エアバスA380は、その巨大さや形、デザインはもちろんのこと、国内航空会社ではまず見られない珍しいエコノミークラス「カウチシート」を設置しています。どのような座席なのでしょうか。
ANA(全日空)に2019年から投入された総2階建て超巨大旅客機、エアバスA380。同社ではこの機体に「フライング ホヌ(空飛ぶウミガメ)」という愛称と、機体ごとに異なるウミガメの特別デザインを施し、成田~ホノルル線に導入しています。
2021年8月現在は、新型コロナウイルス感染拡大による出入国制限の影響をうけ、定期便としての運用から外れている状態です。とはいえ、その存在感はANA機のなかでもダントツ。同機では不定期で同一空港発着の遊覧飛行が実施されているほか、駐機状態で機内食レストランとして使用されるなど、航空ファンや旅行ファンを楽しませるユニークな存在といえるでしょう。
ANAのエアバスA380「フライングホヌ」(乗りものニュース編集部撮影)。
実はこの「フライングホヌ」、客席にも、国内では唯一無二、世界中見渡しでもめったに見られない、ユニークなものが存在します。ベッドのように寝転べるシート「ANA COUCHii(ANA カウチシート)」です。このシートに2021年8月のホノルル線再投入時、実際に乗ることができました。
同機は2階がファーストやビジネスといった上位クラス、1階がエコノミークラスといった配置で計520席。このカウチシートは1階最後部の区画に設定されています。
通常のエコノミークラスでも、客席の混み具合などの状況によっては、複数席をベッドのように使う利用者もいますが、ANAのA380に採用されている「ANA カウチシート」は、それより遥かに、乗客がしっかり熟睡ができるよう作られています。
ANA カウチシートのレッグレストはほとんど90度、つまり座面と同じ高さまであげることができます。このことで、席がまるごとベッドのようになるのです。カウチにしたときの広さも、さすがに大の字にはなれませんが、それでも成人男性が仰向けに寝ても十分に左右のスペースが確保されています。
ANAカウチシートの配置は、横3-4-3列。窓側席の3席を使う場合、窓に頭を向けて寝る形になります。ただここにもちょっとした工夫が凝らされているようで、一番窓側の席の座面が、壁のギリギリまで隙間なく伸びているのです。このことで壁と座席の隙間に頭を置いたことによる、凸凹感がないようになっています。

ANAのA380「ANAカウチシート」と同社のCA(乗りものニュース編集部撮影)。
このシートは通常のエコノミークラスからの追加料金が必要です。その金額は、ローシーズンであれば1人で4席利用した場合が9万2000円、3席利用した場合が5万9000円。当然、人数が多ければそのぶん価格は下がるので、親子連れなどで予約し、上空で子どもを寝かせるといった用途でも利用可能です。
ちなみに、カウチシートの利用者には専用寝具のほか、専用のシートベルトも貸し出されます。設置方法もシートポケットに説明書があるほか、個人モニターでも確認することができます。