1960年、JAL初のジェット旅客機ダグラスDC-8-32「JA8001」、愛称「FUJI号」が就航しました。同機の特徴といえば「純和風の機内ラウンジ」。
2021年で創立70周年を迎えたJAL(日本航空)。同社の歴史を振り返るなかで、重要な旅客機があります。それがJAL初のジェット旅客機ダグラスDC-8-32「JA8001」。愛称は「FUJI(ふじ)号」です。
この「FUJI号」が就航したのは、1960(昭和35)年。これを皮切りにDC-8シリーズはその後JALで計60機が使用されました(リース導入も含む)。細く長い優雅なフォルムから「空の貴婦人」とうたわれ、卓越した性能をもっていたとのこと。一般的にも古くからのファンも多い、まさに“往年の名機”といったところでしょう。
JALのダグラスDC-8「FUJI号」(画像:JAL)。
そしてこの「FUJI号」をはじめとするDC-8の一部では、「日本文化」を強くアピールしたサービスを採用し、評判を呼んだといいます。
そして「FUJI号」就航から60年以上経った2021年現在、実は羽田空港の格納庫に、同機の機首部分がいまだに残っています。同機の機首部分が羽田にやってきたのは2014(平成26)年のこと。社内でも同機を、当時のチャレンジスピリッツを思い出し、初心に帰るための記念碑にしているといいます。JAL協力のもと、その機内を見ることができました。
実はこの機内、極めて貴重な状態で保存されています。先述の純日本風のラウンジを、そのまま機内に残存させているのです。
機内に入ると まあなんとゴージャスな…60年もの時をタイムスリップした「FUJI号」のラウンジというのは、どのようなものなのでしょうか。一言でいうと、「超ゴージャスな和空間」です。
機内に入ると、いまの旅客機とはまったく違う色調が使われていることが、はっきりとわかります。床はクラシカルな絨毯が張られ、側壁はなんとゴールド。そこに描かれているのは、文化勲章画家の前田青邨氏による作品です。

JALの「FUJI号」が鎮座する羽田空港内のJAL格納庫(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。
「FUJI号」のなかに設置されているラウンジの席数は4席。2席ずつがテーブルを隔てて向かい合うレイアウトとなっています。テーブルには灰皿が。機内での喫煙はごく一般的なものであったことを示しています。また、窓の部分は一般的な和室のように、木の枠に和紙が張られており、外の景色を見たい時は「障子を開ける」仕様となっています。これも、現代の航空法では採用は難しいと見られ、旅客機の黎明期ならではの特徴です。
JALによると、この機内ラウンジのテーマは「空の一流ホテル」とのこと。どことなく「昔の高級ホテルのロビー待合室」のような雰囲気を見て取ることができました。