エンブラエルが、4タイプの新型航空機をデビューさせる計画を打ち出しました。各機種とも、これまでにない形状をしていますが、どの機種もプロペラ機にもかかわらずエンジンの位置が全部胴体最後部にあります。
ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルが2021年11月、新型航空機開発プロジェクト「ENERGIA」の立ち上げを発表しました。ラインナップされる予定の4タイプの旅客機は、いずれも革新的な設計などが取り入れられているほか、CO2(二酸化炭素)排出量の削減が掲げられています。
今回発表された「ENERGIA H2 FUEL CELL」のイメージ(画像:エンブラエル)。
ラインナップは以下の4機種です。
・ENERGIA HYBRID:9人乗りの双発機で、飛行範囲は500海里(約926km)。燃料(熱)と電気で動くハイブリッドタイプで、従来のジェット燃料「A-1」の場合これまでの約半分まで、SAF(持続可能な航空燃料)の場合これまでの約1割まで、CO2排出量を削減できるという。2030年就航を目指す。
・ENERGIA ELECTRIC:9人乗りの単発機で、飛行範囲は200海里(約370km)の短距離モデル。完全な電気推進で、高容量かつ長寿命なバッテリーを開発し搭載予定。CO2排出はゼロで、騒音も従来比80%減をうたう。2035年就航を目指す。
・ENERGIA H2 FUEL CELL:19人乗りの双発機で、飛行範囲は200海里(約370km)。水素燃料電池を搭載し、電気推進で動く。CO2排出はゼロで、騒音も従来比70%減をうたう。2035年就航を目指す。
・ENERGIA H2 GAS TURBINE:35~50人乗りの双発機で、飛行範囲は350海里~500海里(約650km~約926km)。水素とジェット燃料の2つの異なる燃料源からガスタービンエンジンを動かし飛ぶ。CO2排出は最大でゼロで、騒音も従来比を60%減うたう。2040年就航を目指す。
全部コンセプトは違うのにエンジンの位置は「共通」ところで、これらの4タイプは、とある共通点が見られます。プロペラ駆動のエンジンが胴体最後部に備わる「リアエンジン機」であることです。
「リアエンジン機」はジェット機などでは一般的ではあるものの、プロペラ機の場合、まず見られない仕様といえるでしょう。

今回発表された「ENERGIA H2 GAS TURBINE」のリアエンジン部分(画像:エンブラエル)。
これについて以前、エンブラエルの商用航空事業のCEO(最高経営責任者)アルジャン・マイヤー(Arjan Meijer)氏が新型ターボプロップ機の開発を進めていると公式Twitterに投稿した際、同機も「リア・ターボプロップ」のレイアウトを取り、「従来機よりも高速で、運用コストが低いほか、客室内の騒音を低減できる」とコメントしました。今回発表された4つの新型機も、このコンセプトを踏襲し、客室の快適性を向上させていると見られます。
なおエンブラエルは、ENERGIA ELECTRICについて「超効率的なグライダーにインスパイアされた設計」、ENERGIA H2 FUEL CELL、ENERGIA H2 GAS TURBINEの大型2モデルについては「最大の空力性能を実現する翼と胴体」とコメント。いずれも従来機とは大きく設計が異なることをアピールしています。