大阪南港と北九州を結ぶ「名門大洋フェリー」に、歴代最大級の新造船「フェリーきょうと」が就航します。デビュー直前の船内を見てきました。

withコロナ時代の新造船

 名門大洋フェリーの新造船「フェリーきょうと」が2021年12月16日(木)に就航します。これに先立ち15日(水)、大阪南港フェリーターミナルで、その船内が報道陣に公開されました。

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名門大洋フェリー「フェリーきょうと」外観(宮武和多哉撮影)。

 大阪南港~北九州・新門司港で1日2往復を運航している同社では、4隻のうち2隻が就航20年を迎えることから、山口県の三菱重工業下関造船所で後継となる船の建造を進めていました。今回の新造船は既存の「フェリーきょうとII」の後継で、来年3月28日(月)には「フェリーふくおかII」を受け継ぐ新造船「フェリーふくおか」の就航も予定されています。

 船体は総トン数にして約1万5000トン、全長195m、横幅27.8mと、現行の「きょうとII」よりひとまわり大きく、同社のフェリーの中では歴代最大級になったそう。しかし旅客定員は675名に抑えられ、従来の「きょうとII」より全体的に広々とした開放的な空間となっています。

 また今回の新造船は、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、建造中の2020年6月に客室の大幅な設計変更を行っています。

 カーペット敷きの大部屋客室の撤廃や、バリアフリーに配慮した「コンフォート」などの洋個室設置など、「withコロナ」を視野に入れプライベート空間を確保できる客室が設けられました。また、船内の全区画に内装の抗ウイルス・抗菌加工を施し、抗菌・抗ウイルスエアコンフィルターを設置するなど、安心して船旅を楽しむための感染対策も徹底して施されています。

 そして、近年の貨物車両の利用増を受けて、トラックの積載台数を従来の108台から162台へ約1.5倍も拡充。一般乗客と別エリアに個室や専用サロンを設けるなど、トラックドライバーや物流関係者にも配慮したつくりとなっています。

なお乗用車の積載台数は約140台です。

旅客にも物流にも欠かせない、フェリーの役割

 船内の公開に先立って記者会見が行われ、名門大洋フェリーの野口恭広社長から「旅客・物流ともにさらに力強いサービスを」と決意が語られました。

 続いて登壇した山本哲也旅客本部長からは、新型コロナウイルスによる旅客の減少、JRや航空との競争など、同社が置かれているさまざまな環境が語られました。その中でも移動と宿泊を同時に実現できる船旅の提供と、ドアツードアでそのまま自動車で移動できるという利便性をこれからも提供していくとのことです。

 旅客サービスの面では、社員同士でワーキングチームを組んで快適な船内作りの意見を出し合い、その中からハウダールームでの「女優ミラー」(リングライトなどと組み合わせ、顔にしっかり照明が当たった状態でメイクできる)導入など、さまざまなアイデアが生まれたとか。

 一方の貨物に関しては、慢性的に続くトラックドライバー不足や、2024年に待ち構える「働き方改革」のさらに厳格な適用などで、利用増が続いているそうです。今回の新造船では、トラックドライバー専用のサロン・風呂の設置やドライバーズルームの個室化などで、さらに快適に休息が取れる仕掛けが施されています。

 なお運航面では、2015(平成27)年就航の「フェリーきたきゅうしゅうII」「フェリーおおさかII」でも導入された「アジマススラスター」など、航行の補助装置の効果もあり、船体の重量やスペースが1.5倍であるにもかかわらず、燃費は5%低減する見込みなのだそう。

名門大洋フェリー新造船「フェリーきょうと」公開 コロナで設計変更の船内 どう変化

大阪南港にて(宮武和多哉撮影)。

 2022年3月に就航予定の「フェリーふくおか」も、今回就航する「フェリーきょうと」と同様の仕様となっています。同社の愛称である“CITY LINE”にふさわしいデザインの2隻の新造船は、2015(平成27)年に建造された「フェリーきたきゅうしゅう」「フェリーおおさか」とともに、大阪南港~新門司港間の2往復の航路を担う予定で、12月中は第2便(大阪・新門司19時発)の運航に就く予定です。

 なお、新造船にその役目を引き継ぐ「きょうとII」は、12月27日(月)に最終運航が予定されています。

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