これまで、ほぼエアバスの工場間だけを飛び回ってきた飛行機です。

ごく一部の空港でしか見られない「レア異形機」

 ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスが、新たな貨物輸送サービスを展開します。

胴体後部が大きく膨らんだユニークな形の特徴の貨物機「ベルーガST(A300-600ST)」を、2022年以降、顧客からの特大貨物を輸送するために用いるというものです。

異形機「ベルーガ」民間貨物機としての使い勝手は? 「どの空港...の画像はこちら >>

エアバス「ベルーガST」(乗りものニュース編集部撮)。

 この「ベルーガST」は、おもに欧州圏内に点在するエアバスの工場間で、航空機パーツを輸送するために開発されました。就航後の用途のほとんどがパーツ輸送任務であるため、世界のごく限られた空港にしか飛来しません。

 それが一転、今後は顧客のニーズに応じて世界の空港を飛び回ることになりました。ちなみに、パーツ輸送業務は、キャパシティアップなどが図られた後継モデル「ベルーガXL」が引き継ぐ予定です。

 ただ、この「ベルーガST」、ほかの一般的な貨物機とは少し異なる課題が考えられます。それは「ベルーガ」が就航していない空港で、その特殊な貨物室から手早く荷物の積み下ろしができるのか、ということです。そもそもこの機は特定の空港で、航空機パーツを輸送することに特化した特別仕様であるため、ほかの貨物機とは大きく異なる設計がなされていいます。

 そこに対しエアバスは、サービスの発表と同時に、この課題を解決する“アイテム”を公開しました。

エアバスが打ち出したマル秘アイテム

 エアバスは、「ベルーガST」を用いた貨物輸送サービスを始めるにあたり、「アウトボードプラットフォーム」「オンボードカーゴローダー」「多目的パレット」などの導入を発表しました。

「アウトボードプラットフォーム」はベルーガSTでの輸送サービスが頻繁に実施されるような主要空港向けの大型の積み降ろし台。

組み立て・分解は1日ででき、容易に輸送可能とアピールします。すでに1台目は利用可能な状態とのこと。

 対し「オンボードカーゴローダー」は貨物の搭降載設備が整っていない空港で、貨物を短時間で積み降ろしできることを目的としたアイテムです。「ベルーガST」の貨物室に積み込むタイプの積み降ろし機器「カーゴローダー」で、地上では貨物室から引っ張り出され「カーゴローダー」に変形します。重さ20t、長さ12mまでの大型貨物に対応しており、現在は設計が完了している状態で、2022年6月から利用できる予定です。

異形機「ベルーガ」民間貨物機としての使い勝手は? 「どの空港へも輸送OK」エアバスの秘策
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エアバス「ベルーガST」(画像:エアバス)。

「多目的パレット」はヘリコプターや車両、エンジンなどをマルチに搭載できるパレット(搭載台)です。このパレットは長さなど調整できる機能を持つので、最小限の作業でさまざまな大型貨物に対応します。

※ ※ ※

 新ビジネスを担当する「ベルーガST」は、2022年は2号機、3号機の2機体制からスタートし、2024年には全5機が、社外からの貨物輸送を担当します。また全機揃ったタイミングで、独自の航空会社証明書とスタッフを備えた新会社が、運航を担当するとしています。

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