JALが国内初導入した、泡を用いた航空機エンジンの洗浄法「GE 360フォームウォッシュ」。これにより燃費効率向上など多くのメリットがあるそうです。
国内ではこれまで、ほぼ“水洗い一択”といっても過言ではない状況だった航空機エンジン洗浄作業が、大きな変化を遂げました。JAL(日本航空)グループのJ-AIRが保有するエンブラエル170にて、国内航空会社として初めて、泡によるエンジン洗浄法「GE 360フォームウォッシュ」を導入したのです。
この泡洗浄の導入理由についてJALグループは、環境への配慮をメインに掲げていますが、これまでと比べるとどのような効果があるのでしょうか。
J-AIRのエンブラエル170。今回国内初の「泡洗浄」対象機となった(乗りものニュース編集部撮影)。
まず、洗浄力の面では、従来の水での作業よりはるかに向上しています。ただ泡洗浄の場合、エンジン1基あたりの作業時間は従来の3倍となる約6時間を要するのだそう。
泡洗浄では、加熱した特殊な泡状の洗浄剤をエンジン内部に注入することで、飛行中に吸い込んだちりやほこりの粒子を化学的に除去。作業を担当する整備士も「泡洗浄をしたエンジンを、ボアスコープ(ジェット・エンジンのコンプレッサー部やタービン部の部品異常を監視するのに用いられる光学器具)で覗くと、すごくキレイなのがわかります」と話します。
JALグループは、泡洗浄によってエンジン内部がキレイになることで消費燃料が節約され、エコ運航につながるとしています。
泡洗浄が低燃費化につながる仕組みとは泡洗浄の導入で節約される燃料は、年間で最大約8万2000リットル分に相当するそうです。
J-AIRのエンブラエル170に「泡洗浄」を実施する様子(2022年2月7日、乗りものニュース編集部撮影)。
JALの担当者は、このメカニズムを次のように説明します。
「エンジン内部にゴミやチリがたまるとコンプレッサー(圧縮機)の圧縮効率が落ちます。そうするとパワーが落ちますので、それを補うために、より多くの燃料を入れなければなりません。泡洗浄の導入により汚れを落とすことで、エンジンの効率を上げることができ、燃料消費が少なくなるのです」
また、パーツをキレイな状態に保つことで、エンジンの排気温度を下げることができ、ひいては飛行中のエンジンパーツの温度も下がる効果も。
またパイロットらが取り組んでいる“エコ運航”にとっても、泡洗浄を完了したエンジンと、そうでないものでは大きな差があると、J-AIRの機長は話します。
「泡洗浄」でエンジンから出た泡。洗浄開始の数時間後には、もっと濁った泡が出るとのことだ(2022年2月7日、乗りものニュース編集部撮影)。
「とくに夏場は内部のタービン温度が限界値に近づくことがあり、その場合は上昇中でもエンジンパワーを落とさなければいけないのですが、泡洗浄をしたエンジンのタービンは、この限界値に余裕が生まれてきます。そのためエンジンパワーを(水洗浄のものより)上げることができ、燃費効率の良い高度まで早く行くことができます」(J-AIRの機長)
このほか、作業面でも思わぬ“副産物”も。