神社の一の鳥居と二の鳥居の間に鉄道の線路が通っているという場所が福岡県にあります。表参道となっているため、参拝しようとすれば線路をまたぐしかありません。
神社へお参りしようと田畑の広がる中を行き、鳥居をくぐって1歩足を踏み出したら線路だった――福岡県みやこ町の崎山八幡神社ではこのような光景が見られます。
線路は平成筑豊鉄道田川線で、この神社は源じいの森~崎山間に位置します。同区間は、頻繁に列車が往来するわけではありません。
平成筑豊鉄道(画像:写真AC)。
参道の一の鳥居と二の鳥居は線路を挟むように建っています。鉄道が社寺の敷地を分断している例は日本各地にありますが、その場合は正式な踏切となっているケースがほとんどです。
しかしここは、警報機や遮断機はおろか、そこが正式な踏切であることを示す踏切警標も立てられていません。また、路面はアスファルト舗装もされておらず、板さえ渡されていません。まさに「ただの線路際」といった様相ですが、先に進むには線路をまたぐしかありません。
筆者(小川裕夫:フリーランスライター・カメラマン)はふと、「勝手踏切」の存在が頭をよぎりました。「勝手」というと、あたかも住人たちが無許可のまま私設したというイメージを持ちがちですが、その歴史を紐解くと、線路の方が後から敷設されていることがほとんどです。これは半ば強制的な面もあり、結果、従来から地域住民が使用していた道が分断されたといえるでしょう。
2021年1月現在、国土交通省が把握しているだけで「勝手踏切」は全国に1万7000か所以上あるとされています。そのため、中には「なぜこんなところにあるのか」と訝るようなケースもたくさんあるのですが、崎山八幡神社のように「踏切の体すら成していない」例もあるようです。
ちなみに崎山八幡神社には、境内の裏側へとつながる裏参道のような道があります。そちらを使えば線路をまたぐことなく境内まで足を運べますが、通常なら表参道を歩いて参拝したいと考えるのが人情です。