弱冠16歳で単独世界一周飛行に挑む少年が、フライト途中で日本にも立ち寄るとのこと。彼が乗るのは日本では未認可の超軽量スポーツ機「LSA」。

彼の来日が、日本の航空行政に風穴を開けるかもしれません。

姉に続き弟も世界一周飛行へ

 2022年1月、弱冠19歳で単独世界一周飛行の女性最年少記録を樹立したザラ・ラザフォード。今度は弟のマック・ラザフォード、16歳が男性最年少記録による単独世界一周飛行へ挑戦するため、2022年3月23日、ブルガリアのソフィアを離陸しました。

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単独世界一周飛行の女性最年少記録を樹立したザラ・ラザフォードと肩を組む弟のマック・ラザフォード(画像:MackSolo)。

 姉のザラは西回りで世界一周を行いましたが、マックは東回りで世界一周を目指すとのこと。飛行ルートはブルガリアからイタリアを経由し、4月8日現在、地中海に浮かぶギリシャのクレタ島イラクリオンまで到達しています。今後は地中海を超えてエジプト、スーダン、ケニア、タンザニアの順でアフリカ諸国を巡ったのち、モーリシャス、セイシェルの順にインド洋上を飛行するそうです。

 そこからはインド洋を北上し中東のイエメン、オマーン、アラブ首長国連邦を回り、パキスタンへ。そして、インド、バングラデシュを周って中国へ入ります。中国を横断した後、韓国のソウルに着陸。ソウルからは日本に来る予定です。

 前回、ザラは日本に来ることはありませんでしたが、今回、弟のマックは日本に入国する予定だそう。

現時点で来日は5月中旬と発表されていますが、天候などの理由で遅れる可能性もあります。なお、日本には福井空港へ飛来した後、女満別空港を目指します。

北海道女満別から太平洋横断へ

 女満別空港で離日する形のようですが、その後は千島列島に沿って飛行し、アリューシャン列島のアッツ島に向かいます。昨今の国際情勢を反映してか、シリアや中央アジアを経由しないルートが選定されています。

 アッツ島からはアラスカに向かい、北米大陸の西海岸を南下してメキシコを目指したのち、メキシコを横断して太平洋側からメキシコ湾側へ向かうとしています。

日本の空を変える? 軽自動車の飛行機版「LSA」最年少世界一周の途次いよいよ来日へ
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イタリアで愛機に乗り込むマック・ラザフォード(画像:MackSolo)。

 メキシコ東部からは、北上してアメリカに再入国しテキサス、ニューヨークを経てカナダ東海岸を北上。そして、グリーンランド、アイスランドを経由して北大西洋を横断。そこからイギリス、ベルギー立ち寄ったのちブルガリアへ向かい、世界一周を達成する計画です。ブルガリア到着は6月20日ごろと発表されています。

 航空機による世界一周飛行として認定される条件として、飛行ルートの総延長が3万6770km以上であることが必須です。この距離は地球の北回帰線もしくは南回帰線で一周した距離に由来しています。

記録飛行とはいえ最短ルートが選定されない理由がここにあります。

LSAの飛来で日本の空は変わるか?

 マック・ラザフォードが世界最年少での世界一周記録に使用する機体は、姉のザラ・ラザフォードが使用したものと同じ「シャーク・アエロ」です。この機体は軽量スポーツ機(LSA)としては高性能な機種として知られています。

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マック・ラザフォードの愛機、LSA(超軽量スポーツ機)の「シャーク・アエロ」(画像:MackSolo)。

 LSAが世界一周飛行の途中に日本に立ち寄ることは、日本の航空史において歴史的な出来事になるのではないかと、筆者(細谷泰正:AOPA-JPAN理事)は考えています。G7加盟国では唯一、日本だけがLSAを航空機として法制化していません。

 そのため、LSA練習機が一般化しつつある海外の飛行学校では、訓練にLSAが使用できる日本人以外の学生と日本人学生の間では異なったカリキュラムを適用する必要が生じ、日本人パイロットの養成に弊害が生じています。

 今回のマック・ラザフォードの来日が契機となり、日本におけるLSAのフライトが法律的に認められるようになれば、我が国の航空の未来はずっと明るくなることでしょう。若き飛行士の日本到着を温かく迎えたいと、今から楽しみにしています。

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