23日開業を迎える西九州新幹線の武雄温泉~長崎間。試乗会で一足先に体験してみましたが、やはりその威力は大きいものでした。
九州新幹線の長崎ルート「西九州新幹線」が、武雄温泉~長崎間で2023年9月23日に開業を迎えます。部分開業という形ですが、特急「かもめ」で2時間かかっていた博多~長崎間が、特急「リレーかもめ」+新幹線「かもめ」の乗り継ぎにより1時間半に短縮されます。
それに先立ちきょう10日、メディア向け試乗会が行われました。試乗会では、佐賀駅から特急「リレーかもめ」に乗り、武雄温泉駅で新幹線「かもめ」に乗り換えて、長崎駅まで向かいました。
長崎駅に到着した新幹線「かもめ」(乗りものニュース編集部撮影)。
武雄温泉駅では対面乗り換えにより、同じホームに向かい合って停車中の新幹線に、直接乗り換える形となります。開業後はわずか3分の乗り換え時間で、シームレスな移動が継続できます。
さて先述のとおり、西九州新幹線の部分開業により、博多~長崎間の所要時間は30分短縮されますが、これはつまり、佐賀県から長崎市への移動だけで30分も速くなるということです。
海岸線沿いを走る在来線の長崎本線が肥前山口~長崎間で85.7km。カーブも多く、厳しい制限速度も各所で設けられています。それに対し、新幹線は最高速度260km/h。また短絡ルートを走るため、79.7kmと短くなっています(肥前山口~武雄温泉の在来線区間含む)。
諫早だけに停車する最速達列車だと、武雄温泉~長崎間の所要時間はわずか23分。各駅停車タイプでも約30分で到着します。
実際に乗ってみると武雄温泉駅を出発した試乗用「かもめ」。発車するとすぐに進路を大きく南へ変え、トンネルへ入ります。力強い加速に「やはり新幹線だな」と感じている間もなく、列車は減速。わずか6分少々で嬉野温泉駅に到着しました。
そこから新大村、諫早と、数分ごとに停車します。新大村駅の周辺では大村湾、長崎空港、車両基地を横目に見ることができます。しかしやはり新幹線。シャッターチャンスを狙っているうちに景色はトンネル、田園風景と、まるでテレビCMを見ているかのように、目まぐるしく切り替わっていきます。そうこうしているうちに、長崎駅に到着してしまいました。
車内であまり取材もできないうちに、試乗会は終わります。
とにもかくにも、車内で「あれもしたい、これも見たい」と思っていると、旅は一瞬で終わってしまいます。乗車時間は最速で23分、車内でゆっくり駅弁を食べている時間すらありません。
以上のように、ないないづくしの印象で書いてしまいましたが、これは、長崎への「距離感」が大幅に短くなったということ。最果ての印象のある長崎が、「ちょっとすぐそこにある街」という存在になってくるのかもしれません。
JR九州の広報担当者は「九州へ旅行に来たお客様が、『長崎にも寄っていこう』とプランを立てやすくなる心理的距離になり、人の行き来がより活発になればと願っています」と話していました。
2008(平成20)年の着工から14年。ようやく、長崎へのフル新幹線ルートが、実現の日を迎えます。