滑走路とターミナルビルをつなぐ誘導路のカーブ部分には、直角に曲がるものだけではなく、比較的ゆるやかな角度で曲がるものがあります。どのような効果があるのでしょうか。
滑走路とターミナルビルをつなぐ誘導路のカーブ部分には、おおむね2種類があるといえるでしょう。直角に曲がるものと、比較的ゆるやかな角度で曲がるものです。どのような違いがあるのでしょうか。
羽田空港(乗りものニュース編集部撮影)。
前者のゆるやかなカーブの誘導路は、「高速離脱誘導路」と呼ばれるもので、文字通り、着陸機が減速した後も高い速度で滑走路を離れることができるようにしています。
国土交通省の空港土木施設の設計要領によると、着陸機は時速93kmで滑走路から曲がることが出来るようにし、滑走路と交差する角度は25度以上45度未満にすると定められています。直角で曲がるより高速で滑走路を離れることができる分、ほかの発着機を妨げず、空港全体の発着回数を上げることができます。
そのため高速離脱誘導路は、成田空港や羽田空港、新千歳空港など、発着機の多い「大空港」の一部に設けられており、むしろ少数派です。反対に、直角に曲がる誘導路は、地方のさほど発着回数が多くない空港で見ることができます。
高速離脱誘導路が必要なほど、着陸した航空機は高速で誘導路を走り、ターミナルに向かっているのでしょうか。ここでひとつ、データをご紹介しましょう。
誘導路での走行速度は各航空会社によって内規がありますが、1980年代後半、成田空港を管理する新東京国際空港公団(現成田国際空港株式会社)が、レーザーを使った精密測定装置を用いて、同空港のA滑走路と平行に走る誘導路で直進する航空機の速度を測ったことがあります。
誘導路と滑走路の整備の参考にするためだったこの調査で、対象となったのはほとんどが「ジャンボ機」と呼ばれたボーイング747でした。結果は離陸機の平均速度は時速34.1km、着陸機が44.6kmとなり、速度のばらつきは着陸機の方が高かったということでした。
上空から見た静岡空港。誘導路は直角に滑走路についている(加賀幸雄撮影)。
着陸機の方が速かったのは、「パイロットの速度感覚が高速に慣れていることと、一刻も早く国際線の長い時間を飛んだ乗客に降りてもらおうという心理が働いていると推測される」と、調査結果は結んでいます。
この調査が行われた1980年代後半はバブル経済真っ盛り。誰もが忙しそうで、海外旅行も盛んになりました。慌ただしかった時代を振り返ると、着陸機の方が走行速度が高いのもうなずける気がします。
また、極私的な感想ですが、地方の空港より大きな空港の方が、乗客は降機の準備にかかるのが早いようです。ターミナルビルへの地上走行に時間がかかる分、搭乗橋が接続されれば、すぐにでも降りようという気持ちがそうさせるのでしょう。それを受けてパイロットも誘導路での速度が高くなるのかもしれません。
もし大空港に高速離脱誘導路が無ければ、乗客は一層降機の準備に早く取り掛かるかもしれませんし、「早くターミナルビルにつかないか」と少しばかりいら立ちもするでしょう。

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