旅客機に乗っていると、まれに着陸時「ドシン」と衝撃が強くかかるケースがあります。実は場合によっては、こちらの着陸の方がよいケースがあるのだとか。
旅客機に乗っていると、着陸時の衝撃が少なく「本当に接地したの?」と思うようなときもある一方で、「ドシンっ!」と衝撃が強くかかるケースもあります。実はこれ、あえて「強めの接地」が行われているケースがあるのです。どのようなときなのでしょうか。
主脚から煙をあげて接地するANA機(乗りものニュース編集部撮影)。
とある国内航空会社のパイロットは、「お客様の感覚では衝撃の少ないほうが良い着陸と思われるかもしれませんが……」と前置きのうえ、次のように話します。
「滑走路が凍結していたり、積雪があったりするときには、あえて接地点を延ばさずに少ししっかり目に接地させます。その時はスムーズというよりも、“ドン”と感じるくらいの衝撃で着陸させるほうがベターです。パイロットは状況に応じて、どの程度の強さで機体を地面に接地させるかを考えて操縦しています」
また同氏によると、降雪時だけでなく、短い滑走路や追い風のときなども、あえて「しっかり目に着陸」を実施するケースが多いとのことです。
このあえて「しっかり目に着陸」することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
“強めの接地”でなにが変わるのか?同氏いわく、積雪や凍結している際、滑走路へ強固に機体を接地させるのは「路面の雪氷で停止距離が長くなることで、滑走路でオーバーランすることを防ぐため」という目的からだそう。できる限り早くスポイラー(主翼上で立ち上がる減速装置)を立ち上げて制動させることが重要といいます。
接地がスムーズ過ぎると、機体のセンサーが地上に降りたことを認識するのがわずかに遅れ、結果としてスポイラーの展開や逆噴射装置(エンジンの噴射方向を変えることで減速を図る装置)の作動が遅れることがあるのだとか。
「通常、着陸後の制動にはスポイラー、逆噴射装置、タイヤのブレーキ、機体そのものの抵抗が大きな効果を発揮しますが、滑りやすい路面ではスポイラーと逆噴射装置の効きがとくに重要なので、それらのシステムを少しでも早く作動させることが肝心です」
着陸機にとっては不利な空港や天候、路面状態などでは、あえて強めの接地をすることが、できるだけ早く機体を減速させ、むしろ安全運航の一助となることができるということでしょう。「強めの接地」は、パイロットにとって有効なテクニックのひとつになっているといえそうです。
【動画】通常とはどう違う? 北海道で実施されている「ドカンと離陸」

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