旅客機で、窓から入る日差しを遮りたいときは「シェード」を下ろすことで遮光しますが、「ボーイング787」などにはありません。その代わり、窓下のボタンをタッチすると明るさが変わるのです。

秘密は「窓のなかに」

 旅客機に乗っているあいだ、客室の窓から入る日差しを遮りたいときは、窓の「シェード」を手で下ろすことが一般的です。ただ、「ボーイング787」などでは、そもそも、物理的なシェードが存在しません。

窓のシェードがない! 飛行機で増える「魔法のような日よけ」ど...の画像はこちら >>

JALのボーイング787(乗りものニュース編集部撮影)。

 787は窓下のボタンをタッチししばらく待機すると、窓の明るさが変化するユニークな装置が備わります。これは、窓を透過する光量を調節できる「電子シェード」というもので、明るさは5段階で設定できます。

 では、この「電子シェード」がどこにあるかといえば、窓の中です。

旅客機の窓はガラス1枚ではなく、アクリル製で3層が間隔を開け重なった構造になっていますが、787の「電子シェード」は、その層のなかに存在します。

電子シェードの仕組みは?

「電子シェード」には電気が流れると、化学反応で色が暗く不透明になる特殊な材料(電子ゲル)が使用されており、ボタンを押すとその装置に電気が流れ、窓が暗くなります。逆に明るくしたいときは、電圧を除くと透明に戻ります。

 この装置はアメリカで、自動車向けに自動防眩リアビュー・ミラーを開発するGentex社により開発されたもので、この「電子シェード」は、同社のミラーで使用された技術を生かしているそうです。

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 787の電子シェードは、CA(客室乗務員)の“働き方”も大きく変えた側面があります。というのも、同機で乗務するCAによると「シェードをCAがタッチパネルで一括操作できるので、(乗客に開け閉めを依頼しなくてよく)働きやすい」のだとか。

 ちなみに、旅客機の窓が複層ガラスになっているのは、高度1万mを飛ぶ客室の気圧を人為的に上げ、空気を濃くし地上に近い状態する装置「与圧システム」のため。客室と外の気圧差に耐えるべく、窓を3層構造にして強化しています。

 そのようななかでも、787の窓はさらに、従来機とくらべてサイズ自体が大きくなっています。これは、胴体の素材に、従来のアルミ合金より強度の高い複合素材を使っており、窓を大きくしても十分に機体の強度を保てるためです。

【映像】まさに変幻! これが「787の窓」電子シェードです(13秒)