寒い冬の朝、電車に乗って逆に暑い思いをしたこと、ないでしょうか。暖かい格好をして電車に乗っているのだから、そんなに暖房を強くしなくてもよいのではという声も多く聞かれますが、いったい車内のエアコンは何度に設定されているのでしょうか。
冬の電車は暑くていやだ、という人は少なくないかもしれません。特に混雑を極める朝夕の通勤ラッシュ時は外套が乗客の熱を保温するため、車内の温度は一気に上昇します。コートやダウンを脱ぐのは面倒だしせめてマフラーだけと思っても、結局汗ばむことになったという人は多いことでしょう。
万年ぽっちゃり体型の筆者にいたっては、ダラダラと汗を流して周囲の乗客に引かれるほどです。ラッシュ時の電車に乗るときは毛のセーターやダウンを着ない、電車に乗る前にコートは必ず脱ぐ、などの工夫を凝らしてはいますが、やはり汗は止まりません。なので今度こそ、ダイエットを始めようと思っています。忘年会シーズンが終わったら。
自分のことはさておき、ほかの皆さんは一体どう思っているのでしょうか。実際に各鉄道会社へは車内温度についての苦情が多く寄せられている様子で、鉄道会社のウェブサイトにはそれに関する各社の対策が掲載されています。
鉄道会社によって基準が違う設定温度意外かもしれませんけれども、車内の暖房設定温度は会社によってバラバラです。西武鉄道は19度、東武鉄道は23度ですが、これはあくまでも目安。基本的に天候や湿度、車内の混雑状況などを反映してその都度、車掌が調整しています。
一方、東急電鉄の車内暖房は温度を感知するセンサーによりコントロール。車内温度が20度以下になるとスイッチオン、22度を超えると自動的にオフになるよう設定されています。また東急田園都市線などを走る5000系では先頭車両の外と各車両に温度センサーが設置されており、運転台のモニターへ表示されるその情報を乗務員が簡単にチェックできます。
車内の温度を左右する湿度や乗車率、季節、路線、時間といった要因。現在では技術の進歩によってそれらをコンピュータで計算し、空調を自動制御するシステムが造られています。
しかしそれでも、苦情はひっきりなしにやってくるのだとか。鉄道会社によってその対応は様々ですが、なんともアナログな手段でその問題を解決していた鉄道がありました。いったいどのような方法なのでしょうか。当の横浜市営地下鉄に、直接問い合わせることにしました。
温度調整、切り札は職員の人海戦術「私たちが行った試みは、職員をモニターとして利用する方法です」(横浜市営地下鉄運転課)
ワンマン運転で車掌が乗務していないため、本部からの指令によってコントロールされている横浜市営地下鉄のエアコン。しかし温度に関する苦情が多く、そこで考えだされたのが、市営地下鉄を利用する職員を朝夕の通勤時にモニターとして活用することでした。
具体的には地下鉄に乗った職員が、その車内について「暑い」「寒い」といった情報を司令所に伝え、それを司令所は当該列車へ連絡。
また昼間の時間帯も職員が業務で地下鉄に乗車した際、同様に「人体温度センサー」として活躍します。「いつ導入されたかわからない」(同課)と言うほど、以前から採用されていたこのシステム。非常に原始的ながら「快適」と好評を博していましたが、残念ながら現在は様々な事情によって実施されていないそうです。
なかなか抜本的な解決方法が見つからない車内温度の問題。「永遠に解決しないのか!」と嘆くあなたに、耳寄りな情報をひとつ。空調を管理する乗務員が大事にしているのが、意外にも視覚なんだとか。車掌の目の前でパタパタとうちわで扇いで「暑い助けてくれ」という表情をすれば調整してくれる可能性もある、とのことです。