「ひゅうが型」「いずも型」によって来年にも、日本の空母は4隻体制になります。空母が4隻あること、また2タイプあること。

これは何を意味するのでしょうか。そして戦闘機搭載も議論される日本の空母は今後、どうなっていくのでしょうか。

日本の空母が4隻になる意味

 2015年10月に実施された、海上自衛隊の観艦式。3年に一度行われるこの海自最大のイベントにおいて今回、最大の目玉となったのが新鋭護衛艦「いずも」の初登場でした。

「いずも」は今年3月に就役したばかりの、全通飛行甲板を持つ航空母艦です。海上自衛隊の航空母艦としては、「ひゅうが型」の「ひゅうが」「いせ」に続く3艦目。そして「いずも」は「ひゅうが型」に比べてひと回り大きく、自衛隊最大の艦艇でもあります。

 また今年8月には「いずも型」の2番艦「かが」が進水しており、現在、艤装作業が進んでいます。この「かが」は来年にも就役する見込みで、海上自衛隊はこの「ひゅうが型」と「いずも型」をそれぞれ2隻ずつ、合計4隻の航空母艦を保有することになります。

 艦艇は長期のドッグ入りなど整備期間、乗員の訓練期間、そして実戦投入が可能な期間がそれぞれ3分の1ずつを占めるため、4隻体制となることにより、つねに1~2隻の航空母艦が即応可能な体制となります。

 ただ実はこの「ひゅうが型」と「いずも型」、求められる役割や能力が若干異なっています。

性格が異なる日本の空母

 まず、この記事を読んでいる人のなかには、「『ひゅうが型』『いずも型』は“護衛艦”であり“航空母艦”ではない」、そう思っている人もきっと少なくないと思います。

 しかしそれは誤解です。海上自衛隊における「護衛艦」とは、水上を航行する戦闘能力を有す艦艇に与えられる艦種であり、一般的には「軍艦」ないし「戦闘艦」に該当する用語です。

 例えば「こんごう型」、または「あたご型」は正確には“護衛艦”でありますが、一般的に“イージス艦”と呼ばれているのと同じように、「ひゅうが型」や「いずも型」を“護衛艦”でなく“航空母艦”と呼ぶことにも何ら問題ありません。

 この航空母艦「ひゅうが型」の「ひゅうが」「いせ」は満載排水量19000トン、全長197m。今年「いずも」が就役するまでは海自最大の艦でした。

 主な艦載機はSH-60J/K「シーホーク」哨戒ヘリコプターで、3機を同時に発着艦させる能力を有すほか、飛行甲板とエレベーターで結ばれた格納庫内には、最大10機程度を収容できます。

 そしてこの「ひゅうが型」の主な任務は、艦隊への潜水艦の接近を阻止する対潜作戦です。短魚雷発射管およびアスロック対潜ミサイルなどを格納する16セルの垂直発射装置(VLS)を有すなど、航空母艦としてはかなり重兵装であることが特徴的です。

 一方、「いずも型」の「いずも」「かが」は満載排水量27000トン、全長248mと、先述のとおり「ひゅうが型」よりもひと回り大きい艦です。SH-60J/Kを5機同時に発着艦可能で、格納庫内にはおよそ15機を収容可能であるとみられます。しかし「ひゅうが型」のような短魚雷発射管やVLSを持たず、最低限の自衛用兵装しか搭載されていません。そのため潜水艦への攻撃は、SH-60や僚艦に任せることになります。

 この違いは、果たして何を意味するのでしょうか。

F-35B垂直離着陸戦闘機の艦載を語る前に

 最低限の兵装しか持たない「いずも型」は対潜重視の「ひゅうが型」に比べ、より広汎な任務に対応可能な、“本格的な航空母艦”としての機能が重視されています。

 例えば「ひゅうが型」「いずも型」ともに手術室、集中治療室を備えていますが、病床は「ひゅうが型」8床に対し「いずも型」は35床。そのため島嶼防衛における上陸作戦時のヘリコプター拠点としては、「いずも型」が優れます。

 また「いずも型」は飛行甲板が広く、大型の榴弾砲や軽装甲機動車を展開するにも有利です。ただ、もちろんそれは「どちらがよりその能力が高いか」という話で、「ひゅうが型」が上陸作戦の拠点となることも可能ですし、「いずも型」も対潜作戦の中核としての役割を担うことができます。

 そして「ひゅうが型」と「いずも型」、いずれもSH-60J/Kのほかに大型の輸送・掃海ヘリコプターMCH-101を艦載。また必要に応じて陸自のUH-60JA「ブラックホーク」、UH-1J「ヒューイ」、CH-47J/JA「チヌーク」、そしてまもなく導入予定のV-22「オスプレイ」の運用が行えます。

「航空母艦」という存在は国家の“威信財”として、“力の象徴”としてみなされることが少なくありません。すでにそうした風潮は強く現れており、F-35B「ライトニングII」垂直離着陸戦闘機の「ひゅうが型」「いずも型」への艦載が議論されることもあります。

 しかしながら、F-35Bうんぬんといった遥かに先の未来よりも、まずいまはこの4隻の航空母艦、特に巨大な「いずも型」が海上自衛隊にとって手に余る「大きすぎる服」とならないよう、運用実績を着実に積み重ねてゆくことが重要であるといえるでしょう。

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