西武鉄道がサステナ車両8000系の試運転の動画を公開しました。営業では入線しない西武各線を走行して試験が行われましたが、実は試運転でも走行できなかった路線や区間があるのです。

同じ会社線でも制約あり

 西武鉄道は2025年4月、同社の公式YouTubeで、サステナ車両8000系の試運転の動画を公開しました。西武8000系は小田急電鉄から譲り受けた車両で、5月から国分寺線での運行が予定されています。

 ただし試運転では国分寺線以外の西武各線も走行。同社のターミナルである池袋駅や西武新宿駅をはじめ、豊島線や狭山線といった支線へも入りましたが、実はこの試運転でも走行していない路線や区間があるのです。

西武有楽町線 練馬~小竹向原間

 西武有楽町線は小竹向原駅(東京都練馬区)で地下鉄有楽町線や副都心線と接続し、直通運転が行われています。このため列車の衝突を防ぐための保安装置は地下鉄に合わせたものが使用され、運転台に信号が表示される仕組みを採用しています。

 8000系は譲渡に際し、その保安装置を小田急線用から西武線用に交換していますが、運転台に信号を表示する機能がないので、西武有楽町線は走行することができません。

西武多摩川線 武蔵境~是政間

 西武多摩川線は武蔵境~是政間を結ぶ路線で、ほかの西武線から独立した離れ小島の路線です。そのため同線へ車両を輸送する際は、武蔵野線や中央線といったJR線を経由して運ばれます。

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試運転で西武球場前駅に停車する8000系電車(画像:西武鉄道)

 西武多摩川線は4両編成で運行され、ホームの長さも4両に準じています。一方の8000系は6両編成のため、西武多摩川線を走行させるとホームからはみ出してしまうほか、信号などの地上の設備も長い編成に対応していません。全線が単線区間でもあり、途中駅での行き違いも難しくなります。

 加えて、前述したように多摩川線へ向かうにはJR線を介す必要があるため、今回の試運転では走行していません。

多摩湖線にも走れない場所がある?

 西武多摩湖線は国分寺駅(東京都国分寺市)から萩山駅(同・東村山市)を経由して多摩湖駅(同)に至る単線の路線ですが、このうち国分寺~萩山間では8000系の試運転が行われていません。

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西武多摩湖線の国分寺駅(画像:写真AC)

 同区間は4両編成で運転され、西武拝島線と接続する萩山駅を除いてホームの長さは4両編成分のみ。したがって西武多摩川線と同じく、8000系が入線するとホームからはみ出してしまうのです。

 また、国分寺駅ではホームの端に踏切があり、6両編成の8000系が入線すると踏切をふさいでしまいます。さらに単線のため行き違いが困難です。

 ただし萩山~多摩湖間は最大8両編成の列車が走行でき、多摩湖駅から萩山駅を経由して西武新宿方面へ向かう列車も運行されています。今回の8000系の試運転では、萩山~多摩湖間を走行しました。

 西武鉄道では8000系のほか、東急電鉄から9000系を譲り受けてサステナ車両とすることを発表しています。東急から譲り受けたサステナ車両は西武多摩川線・多摩湖線・西武秩父線・狭山線へ導入されることから、8000系が入線できなかった区間も走行することになるでしょう。

【再生】西武ほぼ全線を走破! 貴重な8000系走行シーン(動画)
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