近年ではTV番組などを通じてだいぶ理解が進んだ保護猫活動ですが、では野良猫や捨て猫を保護する際、どうやっているかはあまり知られていません。今回は一連の流れを解説します。
私(深川にゃんみつ:猫の魅力発信者)たちも含め、保護猫ボランティアの皆さんは、ほとんどの方が捕獲器を使って猫の保護をしています。
和歌山電鐵が観光列車として走らせている「たま電車」(画像:写真AC)。
それまで野良として生きてきた猫にとって、捕獲器は言うなれば初めて体験する「乗りもの」です。ちょっと強引かもしれませんが、猫にしたら「初体験」に他なりません。いったい猫目線ではどう見えているのか、考えてみました。
猫にしたら、初めは警戒しつつもご飯をめがけて侵入し、気付いた時には出られない。しかも人間がこちらをジロジロ見ている……。そう考えると、まさに恐怖以外のなにものでもないでしょう。
だから私たちはその猫に言い聞かせます。
「お外でよく頑張ったね!」「大変だったね、もう安心だよ!」「新しいおうち見つけようね!」「もう怖いことないからね!」
猫からしたら、「なに言ってるんだよ! 怖いよ! 早くここから出してよ!」でしょう。まさしく捕まったばかりで、恐怖心に押しつぶされそうになっているのですから、こちら(保護猫ボランティア)の気持ちなんて、残念ながら伝わるわけありません。
とはいえ、それは今だけだとわかってほしいです。
さて、捕獲器(方舟)に入った猫は、そのあと短時間のあいだに様々な体験をします。
じつは私たちは車を所有していないので、移動は自転車かタクシーを使っています。そのとき猫は「ガタガタ揺れているけど、どこに連れて行かれるの?」と恐怖で気配を消し固まっていることが多いです。
基本的にはそのまま保護部屋に行きますが、猫の健康状態によっては動物病院へ直行することもあります。
タクシー運転手から「嬉しい」声がけもちなみにタクシーで移動するとき、多くの運転手さんは保護したばかりの猫であっても快く乗せてくれます。もちろん、我々もペットシートや新聞紙を使ったり、捕獲器ごと大きな布で覆ったりして車内にゴミなどを落とさないように気をつけています。

捕獲器のイメージ(画像:写真AC)。
過去には「うちも保護猫をお迎えして飼っているんだよ」と話してくれた運転手さんもいて嬉しかったことも。ありがたいです。
保護部屋に到着したら、ペット用の体重計に乗せて重さを測ります。それから駆虫薬を施して、口の中を見たり、怪我の確認をしたり、性別を確認したり、爪を切ったり、ともかく猫は人間に触られたり見つめられたりし続けます。
動物病院なら、さらに不妊手術、血液検査、ウイルス検査、ワクチン接種、マイクロチップの挿入などを行います。
こうして、あっという間に1日は過ぎ去るのですが、この激動のスケジュールを耐え抜いた猫を、ようやくケージで休ませることになります。
フードと飲み水をあげ、トイレもセット。数日はケージを大きな布で覆い「隠れ家」を作ってあげます。これでゆっくり休んでもらいます。
保護部屋には、他にたくさんの猫が生活しているので、連れてきたばかりの猫も自分以外の猫たちを見ているうちに、「環境」や「仲間の猫」を認識するようになります。そなると、比較的早く慣れていきます。
なお、人間にはまだ慣れていません。とはいえ、リラックスしてきた姿を見せ始めれば、人間に慣れるのも近い証拠と言えるでしょう。
こうして捕獲器に入ったことから始まった家猫生活。仲間猫やボランティアスタッフと触れ合うことで、怯えていた表情はだんだんと優しい表情に変わります。そして、新しい家族・里親さんと巡り会うその日を、仲間猫と共に幸せを夢見ながら待っています。
言うなれば捕獲器は「幸せへと連れて行ってくれるバス」のようなもの。そんな捕獲器を、今後もし見かけることがありましたら、触ったり覗き込んだりせずに、猫の幸せを願いながら見過ごしていただけると、保護猫ボランティアとしては幸いです。