NEXCO東日本は2025年7月30日、由木文彦社長の定例会見にて、高速道路における「走行中給電」の実証を行うと発表しました。日本初の「走りながらEVの充電ができる高速道路」が誕生する見込みです。
NEXCO東日本は2025年7月30日、由木文彦社長の定例会見にて、高速道路における「走行中給電」の実証を行うと発表しました。
走行中給電の実証の舞台となる館山道(乗りものニュース編集部撮影)。
同社が高速道路の未来像として掲げていた「走りながらEVの充電ができる道路」を現実のものとする、日本初の実証実験です。館山道 君津PA付近の本線に送電コイルなどを埋め込み、2027年度以降に行うとしています。
現在、同社は大阪・関西万博の会場を走るEVバスの「停車中給電」の実証に参画しています。これは、携帯電話のワイヤレス充電に似た仕組みで、停車中の車両に対してプラグを介することなく充電するものです。この結果を踏まえ、走行中給電の前段として、東京湾アクアライン管理事務所の敷地内で停車中給電の実証を2025年11月から始めます。
走行中給電について由木社長は次にように話します。
「道路会社としてはまず、“電欠”の心配がなくなるのがメリットです。また、EVはバッテリーによって車体が重くなりますが、走行中給電が可能になれば、車両側のバッテリーを小さくできると考えられます。ひいては、車体も軽くなり、(重い車両が走ることによる)道路の損傷も防げます」
こう話し、“充電道路”という道路インフラが普及した暁には、車両そのもののバッテリー容量や構造も、そのインフラを前提として変化していく可能性があるという予測を示しました。
ただ、気になるのはその整備の財源です。
NEXCO各社はかねてSA・PAなどに急速充電器を増やし、EVの利用環境を整えていますが、「当社は場所を提供しており、機械そのものは外部の事業者が設置して利用料金を徴収している」(由木社長)というスキームです。しかし、道路構造そのものに関わる充電道路の整備は、急速充電器の整備とはワケがちがいます。
EVの普及が頭打ちとなっているいま、あらゆる車両から広く徴収する道路料金で整備費用を賄うのは、不公平さが生じるとも考えられます。
財源の問題よりも大事!「ちゃんとお金とれるかな」由木社長は、「ガソリンはガソリン車を使う人が負担する、(充電道路の利用料金も)EVを使う人が負担する」という考えが大前提になるとしつつも、財源の問題については「これからの話と言わざるを得ない」と話します。技術的な検証を進めるなかで、料金徴収のあり方も決めていく考えを示しました。

会見する由木社長(乗りものニュース編集部撮影)。
というのも、ワイヤレスの充電において、料金の徴収方法そのものが技術的に定まっていないのだそうです。走行中給電の実証に先立って行う停車中給電の実証は、「電気をちゃんと送れるか」の検証とともに「料金をしっかり取れるか」の検証も含まれるといいます。
「未来の高速道路」への実証実験、あと2つある!ちなみに今回の会見では、あと2つ、未来の高速道路像を実現するための実証を行うことも発表されました。
ひとつは、国が主導して新東名高速の静岡区間で展開している「自動運転優先レーン」の実証実験を、東北道で行うこと。栃木県内の佐野SA-大谷PA間(約40km)に整備し、自動運転トラックなどへの“合流支援”などを検証していくといいます。
これは、新東名よりも「厳しい道路構造」で検証することに主眼が置かれています。新東名は合流車線の長さが平均490mありますが、東北道は220mだそうです。2025年10月から現地工事を開始し、実証を始めるといいます。
もう一つは、NEXCO東日本独自の取り組みとして、道路情報を収集する「多機能ポール」を設置することによる「次世代高速道路」の実証実験です。これも東北道の鹿沼IC-宇都宮IC間11.5kmを対象とし、自動運転優先レーン区間と一部重複します。
多機能ポールは300m間隔で69本を路肩に設置し、計230台のカメラで道路上において発生する事象を常時かつ面的に収集することで道路管理の高度化を目指すものです。また、収集した異常気象や落下物、事故などのデータを「先読み情報」としてETC2.0を通じ自動運転トラックに提供する実証も行うといいます。
次世代ポールの設置も2025年10月から工事を開始し、実証実験は2026年度下半期から行うといいます。自動運転優先レーンの実証実験と連携します。