「すごいわ」広島駅直通に驚嘆

 広島電鉄の路面電車が2025年8月3日から、JR広島駅ビルの2階に直通するようになりました。実は、同様に路面電車のJR駅への乗り入れ計画が進んでいるのが、お隣の岡山県の県庁所在地、岡山市です。

岡山電気軌道の小嶋光信社長(両備グループ代表)は筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)の単独インタビューで「広電の直通運転は百点満点だ」と激賞し、自社の乗り入れについても採点しました。

【え、岡山も!?】これが路面電車「岡山駅乗り入れ」のイメージです(地図/写真)

 広電の新たな広島駅電停は、2025年3月に開業した広島駅ビル「ミナモア」の2階に開設されました。乗り入れのために比治山町交差点との間に約1.1kmの新路線「駅前大橋ルート」を整備し、広島駅前の地上にあった従来の広島駅電停は廃止されました。

 小嶋氏に現地を見た感想を尋ねると「びっくりした。すごいわ」と声を上げ、「山陽新幹線とJR在来線の2階にある改札口からすーっとそのまま行ける。本当に便利だ」と称賛しました。

 広島駅は3階に山陽新幹線のプラットホーム、地上にJR西日本山陽本線や芸備線などの在来線ホームがあります。2階にある新幹線の改札口、在来線の中央改札口をそれぞれ抜けて右折し、南北に結ぶ自由通路を歩くと突き当たりにある広島駅電停から路面電車に乗ることができます。

 中央改札口からは徒歩約1分、新幹線の改札口からも約1分半という近さで、屋内のため雨天の日でもぬれることなくスムーズに移動できます。路面電車の乗り場は系統別にA~Dの4か所に分かれており、どのホームへ向かえばいいのか分かりやすいのが特色です。また、天井は5階部分まで吹き抜けになっているため開放感があります。

岡山駅も「駅直結」へ

 一方、多くの公共交通機関が乗り入れる「交通結節点」となっているJR岡山駅でも、現在の岡山駅前電停がある場所の付近から約100m、駅側に路線を延伸し、岡山駅東口の広場に路面電車を乗り入れさせます。

延伸開業後は、山陽新幹線およびJR山陽本線、宇野線、津山線、吉備線などの在来線との乗り換え時間は格段に短くなります。

 これは岡山市が総額94億円を投じて進めている駅前広場整備事業の一環です。広場に開設される新たな電停は2026年度末(27年3月末)の開業を計画しています。現在の岡山駅前電停は、新電停の隣の停留場として存続します。

それでも広島駅に「かなわない」

 現在、岡山駅東口から岡山駅前電停へ向かうには、JR駅前の南北に延びている道路「市役所筋」の横断歩道を渡り、岡山駅前と岡山後楽園付近を東西につないでいる「桃太郎大通り」の歩道を約80m進んだ上で、桃太郎大通りの横断歩道を渡って大通りの中央部に行く必要があります。このため徒歩で約5分かかっていますが、移設後は目の前に電停ができる「駅直結」に生まれ変わります。

広島には「かなわない」 路面電車の駅乗り入れを控えた岡山の社...の画像はこちら >>

岡山電気軌道の延伸と駅前広場整備の工事が進められているJR岡山駅前(大塚圭一郎撮影)

 工事に伴い、岡山駅東口の広場に置かれていたシンボルの桃太郎像は約100m離れた高架下の仮置き場に移されました。桃太郎像の後方にはマクドナルドがあり、入店者はキャラクターの「ドナルド・マクドナルド」に代わって桃太郎が迎えてくれる「今だけ」の期間限定体験を楽しめます。

 なお、これまでは岡山駅前電停は乗車ホームと降車ホームが分かれていましたが、延伸工事に伴って従来の降車ホームを乗り場も兼ねた「乗降ホーム」に変更。従来の乗車ホームに隣接した地下道とつながる階段も封鎖されました。

 小嶋氏は岡山駅への乗り入れについて「全国の事例では駅に乗り入れることで利用者が増えるという統計があり、(岡電の路面電車利用者も)2割ぐらいは増えると思う」と期待を込めます。それでも「広島駅にはかなわない」と打ち明け、理由をこのように説明しました。

「JR岡山駅から乗り換える時には2階の自由通路からいったん下がり、それから乗るようになるから、(中央改札から同フロアで)すーっと乗れる広島駅にはかなわない」

 岡山駅2階にあるJR在来線の中央改札口、および山陽新幹線の改札口を出た後は左折し、駅の東西をつなぐ自由通路の先にあるエスカレーターや階段を下りないと、JR岡山駅東口の広場には出られません。

 工事完成後には、ここを岡電の路面電車が発着するようになりますが、JR在来線から乗り換える場合にはホームから1階上がって2階の中央改札口を抜けた上で、再び1階へ下がらないと岡電には乗れません。3階の山陽新幹線のホームからは下がって2階の改札口を抜け、もう1階下って岡電の電停を目指すことになります。

 JRには他に地下改札口もありますが、在来線ホームから地階へ下り、再び地上に出て岡電の電停を目指すというアップダウンが伴います。

岡山の方が「優れている」ポイントもある!

 しかし、岡山市によると、岡山駅でも2階の自由通路とつなぐ案も浮上していました。

広島には「かなわない」 路面電車の駅乗り入れを控えた岡山の社長「百点満点」と激賞 岡山は何点?
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インタビューに応じる岡山電気軌道の小嶋光信社長(大塚圭一郎撮影)

 路面電車の岡山駅への延伸は、岡山駅の利便性向上と中心市街地に回遊性をもたらすことを目指して大森雅夫・岡山市長が2013年12月に検討を表明。乗り入れ方法として4つの案が検討され、決定した岡山駅への「平面乗り入れ」のほかに、岡電を駅前で高架にすることで岡山駅2階の自由通路に接続させる案、岡山駅前電停付近から地下に乗り入れさせる案、自由通路から歩行者用のデッキを延伸して地上の岡山駅前電停とエスカレーターなどでつなぐ案もありました。

 広島駅のように山陽新幹線およびJR在来線の改札口と同じフロアに直接乗り入れる方法にならなかったことについて、小嶋氏は「路面電車の存在感がだいぶ違ってくる」と悔しがります。そして「同じ政令指定都市でも、広島市は百万都市で都市力があることが正直言って大きい」との認識を示しました。

 他方で、岡山市の平面乗り入れの利点もあると指摘しました。

 それは「広島駅の場合は2階が電車で、1階にバスとタクシーの乗り場があるのに対し、岡山駅は同じ1階で路面電車、バス、タクシーにアクセスできることだ」とし、「その面では岡山の方の利便性が良いだろう」と評価しました。

 そうした点を加味して小嶋氏は、岡山駅への岡電の乗り入れを「85点から90点の間」と採点し、広島駅の「百点満点」には及ばないものの高得点を付けました。

 岡山駅前の広場は完成後、雨に濡れずに路面電車と乗り換えられるよう屋根付きの通路が整備され、案内所、待合所、トイレも設置されます。もちろん、桃太郎像も駅前の“一等地”に戻ってきます。

「晴れの国」の玄関口にふさわしく、晴れやかな気分で人々が往来し、路面電車にも乗り降りできる駅前広場の誕生に期待しましょう。

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