イギリス海軍の大型空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が2025年8月28日昼すぎに、東京都江東区の東京国際クルーズターミナルに接岸しました。同艦はクイーン・エリザベス級空母の2番艦で、このクラスが東京港に入港するのはもちろん初めて。
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これを受け、東京国際クルーズターミナルでは、中谷 元防衛大臣やジョン・ヒーリー英国防大臣らが出席して歓迎式典が開かれました。
中谷防衛大臣は式典で「このたびの寄港はヨーロッパとインド太平洋地域の安全保障が不可分であるということを示すもの。我が国の安全保障はもとより、日本と英国、ノルウェー双方との安全保障と防衛協力をさらに発展させ、地域の安定のための大きなメッセージを示す意義深いものである」と強調しました。
「プリンス・オブ・ウェールズ」は、ステルス戦闘機F-35B「ライトニングII」を36基、ヘリコプターを4機それぞれ搭載可能で、イギリスが建造した軍艦としては史上最も大きい艦になります。
今回の来日は、イギリスがインド太平洋地域で永続的かつ継続的なプレゼンスを維持するという展開作戦「オペレーション・ハイマスト」の一環で行われたものです。この作戦は8か月間のスケジュールで計画されており、日本に来る途中にはオーストラリアで行われた多国間共同訓練「タリスマン・セイバー」にも参加しています。
イギリス国防省いわく、「オペレーション・ハイマスト」に陸海空の3軍合計で4500人以上が参加しているとのこと。この中で、海軍は海兵隊を含めて最大となる2500人が関わっているとしています。また総航海距離は2万6000海里(4万8000km強)、40か国と交流を行う模様です。
ヒーリー英国防大臣は「英国の防衛政策が『NATOを第一としつつ、NATOだけに依存しない』と表明する真意はここにある」と話します。
「ここ数週間で数々の『初』が実現した。
「プリンス・オブ・ウェールズ」は、英防衛大手のBAEシステムズ、バブコック、タレス、そして英国防省で構成されるACA(エアクラフト・キャリア―・アライアンス)が設計し、クイーン・エリザベス級空母の2番艦として2019年12月に就役しました。
東京国際クルーズターミナルに接岸した空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の艦上の様子。迷彩服姿の兵士はイギリス海兵隊所属、青い作業服姿はイギリス海軍だ(深水千翔撮影)。
船体サイズは全長284m、最大幅73m、排水量約6万5000トン。外観上の特徴は前後に分かれた2つのアイランドと、スキージャンプ台とも呼ばれる左舷艦首部に置かれた上向きの傾斜ランプです。
2つあるアイランドのうち、前部は艦船の航行と指揮を、後部は航空機のオペレーション管理を、それぞれ担っています。これは、作業スペースを確保し、それぞれの専門分野に集中させることで、航空機のアプローチや甲板への着艦といった、安全に任務を遂行する上で不可欠な作業を効率的に行えるようにした結果です。
取材に応じたプリンス・オブ・ウェールズ艦長のウィリアム・ブラケット大佐は同艦について「イギリス海軍にとって最も大きく近代的で、最先端技術を使用している軍艦だ」と述べるとともに、「ここに来るまで長い航海を行っており、日本に寄港することで乗組員は本当に楽しむことができた。東京港で行われるイベントでは、『プリンス・オブ・ウェールズ』がどれだけ優れた能力を持っているかということを、東京の皆さんに示したいと思っている」と語りました。
イギリスは、空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が東京国際クルーズターミナルに6日間滞在することについて、両国政府や軍隊間の協力だけでなく、共通の民主的価値観に基づく両国民と地域社会との間に存在するつながりに基づく、日英関係の深さを示すものとしています。
入港当日はドローンショーやブランドPRが行われたほか、29日と30日には大臣クラスも参加するパシフィック・フューチャー・フォーラム、31日は一般公開と艦内ツアー、そして9月1日は防衛・安全保障産業デーとさまざまなイベントが企画されています。
こうした日程をこなした後、「プリンス・オブ・ウェールズ」は9月2日に東京港を出て日本を離れる予定です。