人間でいえば“還暦”

 世界の航空業界における最新技術などが紹介される「パリ航空ショー」で、ある意味ユニークな機体が展示されていました。1965年5月初飛行、人間でいえば“還暦”にあたる双発プロペラ機DHC-6「ツインオッター」の派生型です。

【写真】古くて新しい!? これが「還暦機最新派生型」のコクピットです

 DHC-6はカナダの航空機メーカー、デ・ハビランド・カナダによって開発された機体で、現在も改良型が販売される長寿機です。似たプロペラ式の旅客機は日本で地方路線を結んでいますが、「ツインオッター」も同じように使われ今も日本で姿を見ることができます。

 なぜここまでロングセラーなのでしょうか。ズバリ、人気の秘訣は、シンプルで頑丈なためでしょう。

 日本の地方路線の中で乗客の少ない路線を飛ぶデ・ハビランド・カナダ社製プロペラ機は、1980年代初頭に開発された「DHC-8」が多く、同機は細長い、プロペラ機としてもスマートな姿をしています。

 これに対して、2つ前の“型番”を示すDHC-6は、ややずんぐりした胴体、そして、引き込み式でない車輪など、いってしまえば少し古臭く、奇をてらっていない姿をしており、それはパリ航空ショーで展示された派生型も変わりません。初飛行したのが60年前だったことを考えれば、この姿も納得もできます。

 しかしDHC-6は、短距離離着陸性能に優れ標準仕様で19席を設けることができ、さらに車輪の代わりに浮舟やスキー板を付けることで水上や雪上機、そして水陸両用機にもなる頑丈さが取り得です。

 そんなDHC-6ですが、1980年代にいったん製造を終えましたが、2000年代に復活。現行の機体は2023年に発表された、中身をリフレッシュしたクラシック300-G型という第5世代機になります。機体は軽量化され、操縦室を覗くと古めかしい左右をつなぐ操縦輪と最新の操縦用画面が絶妙にマッチしています。

堅牢な設計で国内で活躍?

 DHC-6は、森林や湖の多いカナダのお国柄に合わせて生まれ、頑丈につくられました。

そのうえ、「デ・ハビランド」というメーカー名は航空黎明期にあったイギリスの名門メーカーで、デ・ハビランド・カナダはその流れを引くカナダの子会社です。DHC-6が「歴史と伝統のある」飛行機なのは間違いありません。

 こうした長寿を誇るツインオッターですが、日本で紹介され始めた頃は「オッター」が「落ちた」を連想させて縁起が悪い、となり、機体紹介の際は「ツインオター」と紹介されていたということです。

 今となっては真偽のほどが定かでない話ですが、それでも堅牢な機体は地方の小路線に都合がよく、南西航空をはじめ地域航空会社で飛んでいる姿を見ることができました。19人乗りというのは日本で最小クラスの旅客機と思われますが、離島を結ぶ重要な飛行機なのは変わらず、第一航空により沖縄県の那覇―粟国島線で運航されています。

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