フィンランド空軍が一部の部隊で使用している「フォン・ローゼンのスワスティカ」を廃止する可能性があることが2025年8月29日、海外メディアで報じられました。
【画像】欧州の人は気にする? これが、スワスティカが描かれた部隊旗です
スワスティカとは、サンスクリット語で「卍(まんじ)」を意味する言葉です。
というのも、このスワスティカを逆向きにしたデザインである鉤十字は、かつてナチ党およびナチス・ドイツのシンボル「ハーケンクロイツ」として使われていたためです。他のNATO加盟国との合同訓練や式典の機会が増える中で、同盟国関係者や観光客がこの旗を目にして驚き、不快感を示すこともあるようです。
ただし、フィンランド空軍における鉤十字の使用は、ナチス・ドイツの誕生以前に始まったものでした。その起源は、1918年に隣国スウェーデンの貴族で探検家・民族学者でもあったエリック・フォン・ローゼン伯爵が、自身の個人的なシンボルであるスワスティカを描いた飛行機を、ソビエトの支援を受けた赤衛派と内戦を繰り広げていたフィンランドに寄贈したことにあります。この機体は、フィンランド軍が初めて保有した航空機となりました。
それ以降、1918年から1944年までの間、フォン・ローゼンのスワスティカは「ハカリスティ(フィンランド語で鉤十字)」と呼ばれ、フィンランド空軍では、青色のハカリスティと白地のラウンデル(国籍マーク)を軍用機などに表示していました。
しかし、フィンランドは第二次世界大戦中にナチス・ドイツと消極的な同盟関係を結んでいたこともあり、国際的な視線を考慮して、戦後はこのシンボルを軍用機のラウンデルから削除。一部の空軍旗や勲章、空軍士官学校の紋章などに、その意匠が残すのみとなりました。
この残されたフォン・ローゼンのスワスティカについても、NATO加盟国の中でも特に反ナチス感情が強いオランダやフランス、そして現在、鉤十字の使用を法律で厳しく制限しているドイツなどの反応を踏まえ、段階的な廃止を求める声が強まっているようです。
なお、新たな旗には「ワシ」のモチーフが使用される予定であり、作業が完了次第、パレードや地域行事などで導入されるとしています。
このようなスワスティカを巡る問題は、日本における「卍(まんじ)」でもたびたび起こっています。かつて国土地理院が、地図記号に使用されていた卍(寺院の記号)を外国人に誤解される可能性を理由に別の記号に変更しようとした動きもありましたが、批判や「むしろ外国人に意味を周知すべき」といった意見を受け、2016年に変更を見送る方針が示されました。
また、2022年8月には、ドイツで開催されたコミックマーケットにおいて、漫画『東京リベンジャーズ』のキャラクターに描かれた卍が問題視され、議論を呼んだこともあります。