名機「チヌーク」ヘリの最新型 どこが違う?

 陸上自衛隊および航空自衛隊が長年にわたり運用してきた大型輸送ヘリコプターといえば、ボーイングCH-47J「チヌーク」をおいて他にありません。

【写真】全然違う! これが最新「チヌーク」のコックピットです

 機体の前後に大型の回転翼を備えた、いわゆるタンデムローター型の独特なシルエットは、戦場のみならず災害派遣や人道支援活動といった平時の任務においても目にする機会が多く、日本に暮らす人々にとって最も馴染み深い軍用機のひとつとなっています。

兵員だけでなく火砲や車両の輸送、さらには被災地における孤立住民の救出や山林火災での散水活動に至るまで、その大きな積載能力を活かして広く活動しています。

 こうした優秀性から、防衛省・自衛隊は同機の増備を続けています。とはいえ現在、新規に調達しているモデルは、従来型から大きく進化を遂げた最新仕様CH-47F-2「チヌーク・ブロックII」に変わっています。

 CH-47F-2ブロックIIは、アメリカ陸軍が進めていた近代化計画の成果を反映した「チヌーク」シリーズの最新型になります。見た目こそ従来モデルと大きな差異がないものの、内部には最新の航空技術が惜しみなく投入されています。

 最大の特徴はエンジンの刷新で、従来のT55系列エンジンを改良型に換装することで出力と燃費効率が向上し、搭載重量や高温・高地条件下での運用余裕が拡大しています。これによって災害派遣における重量物輸送や長距離飛行においても一層の信頼性が確保されることになるでしょう。

 もう1つの大きな進化は、コックピットの完全デジタル化です。アビオニクス(搭載電子機器)の刷新によりパイロットに対する操縦負荷が軽減され、複雑な飛行状況においても状況認識能力が格段に向上します。統合化されたディスプレイと自動化システムは、限られた搭乗員で効率的な任務の遂行を可能とし、特に災害現場での迅速な対応力に寄与することになります。

アメリカに次ぐ「チヌーク」大国の日本

 こうしたアップデート化により、CH-47F「ブロックII」は従来モデルと同じく「チヌーク」という名を冠していながらも、その実態はほとんど別機と呼んでよいほど変貌しています。

チヌークの更新でまたチヌーク!? 自衛隊向け「CH-47」新...の画像はこちら >>

CH-47「チヌーク・ブロックII」は既存モデルと見た目はほぼ違いがない。
しかし内部は完全に入れ替えられており性能が大幅に向上している(画像:ボーイング)。

 それでいて、CH-47F-2「ブロックII」は過去半世紀にわたり証明されてきた「チヌーク」というプラットフォームの実績の上に築かれている点が重要です。完全な新設計ではなく、既存の整備・運用基盤を活かしながら進化を遂げているため、導入のリスクは極めて低く、旧型の「チヌーク」を改装して「チヌーク・ブロックII」へとアップグレードすることさえ可能です。

 興味深いのは、1961年の初飛行からすでに60年を超えているにもかかわらず、依然として第一線で使われ続けること、新モデル開発と新規生産が保証されている点です。ブロックIIの延命計画やアップデートを考慮すれば、少なくとも2060年まで運用することは間違いありません。この数字はあくまでも現在計画されている段階でのハナシであって、より長い運用期間になる可能性もなきにしもあらずで、さらに遠い未来においても現役であり続けるのではないでしょうか。

 そう考えると、開発から100年を迎える2060年ごろになってもCH-47「チヌーク」シリーズは第一線で飛び続けている可能性が高いと言えます。

 翻って、日本に視点を移してみても、日本は1980年代にアメリカからCH-47「チヌーク」を導入して以来、ライセンス生産を通じて川崎重工での国産化を進め、累計で100機を超える調達を行ってきました。

 この数字はアメリカに次ぐ世界2位の規模であり、自衛隊にとって「チヌーク」がいかに基幹的な輸送力として位置づけられてきたかを如実に物語っています。言い換えれば、「チヌーク」は自衛隊の航空輸送の「背骨」であり続けてきたと言え、ひょっとしたら今後も改良されながら我が国の空を飛び続けている可能性が高いのです。

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