1980年代中盤から1990年頃にかけて、日本の原付バイク市場ではスクーターやレーサーレプリカが大人気を博していました。ホンダはこれらの流行を引っ張るメーカーのひとつだったのですが、その一方で、独創的すぎる前代未聞の1台も市場に投入しています。
【かわいい!】これが純正装着の「凝りすぎたタイヤ」です(写真で見る)
それが1990年2月にリリースされた原付スクーターの「ZOOK(ズーク)」です。
ズークは、1989年の東京モーターショーに参考出品された「MS50」というモデルをもとに開発された1台で、発売時の公式リリースによれば、「『乗って楽しく』『見て楽しく』を徹底追及した新しいスタイルの原付タウンビークル」がコンセプトだったといいます。
その魅力は、何といっても奇抜なスタイリングです。リリースでは「フロア・ステップボード・タイプ」と表現された外観は、当時爆発的なブームを巻き起こしていた「スケートボード」がモチーフ。フロント部にカバーがなく、代わりに前輪から後輪までを一体的に覆うカウルから2本の柱が立ち、それぞれハンドルとシート部分を構成する独特なデザインを採用していました。
また、シートは2段階の調節が可能ですが、ヒップポイントは770mmか800mmとやや高めで、ライディングポジションはスケートボードのように、立ったままに近い姿勢となっていました。
今見ると、電動キックボードや、子ども向けの乗り物として大ヒットした往年の「ローラースルーGOGO」のようにも見えるズークですが、メカニズム的には、れっきとした50ccガソリンエンジンのバイク。エンジンは大人気モデルだったスクーターの「タクト」と同じ、空冷2サイクル単気筒の「AF05E型」を搭載していました。
とはいえ、走行時の安定性はタクトには及ばないため、最高出力や最大トルクは少々抑え気味の仕様。それでも見た目のインパクトが大きいだけに、非常に魅力的なモデルでした。
さらに、純正の8インチタイヤには、溝部分に“足跡”のデザインをかたどった遊び心のある専用品を採用。このタイヤはドレスアップパーツとして根強い人気を誇り、2025年現在もiRC(井上ゴム工業)によって、同型品が販売されています。
ホンダは、ズークのイメージキャラクターに所ジョージを起用し、年間の目標販売台数も4万台に設定するなど、相応に大きな期待をかけていました。
所ジョージをイメージキャラに起用し、“売る気満々”だったホンダだが…(画像:ホンダ)
しかしながら、なんとズークは1年足らずで生産を終了してしまいました。これは発売時に「買おうかどうか」迷いつつも、ズークに注目していた筆者の肌感覚ですが、ズークは当時、少なくとも東京の街中ではそうそう見かけない存在でした。
ただし、こうした他に似たモデルがないバイクほど、生産が終わってから評価が高まるものです。ズークは個体数の少なさも相まって、中古車市場でプレミア価格がつくようになりました。
また、ズークのように性能的に“もの足りない”バイクは、格好のカスタムベースでもあります。アメリカンやダートトラッカー、レーサーなど、ズークは現在も様々なジャンルでカスタマイズの題材になっています。
1970年代以降のホンダは、基本的に“優等生”なバイクを作っていた一方で、時には従来の常識を破る、良い意味で“変なバイク”を発表することがありました。筆者は、そんなホンダの挑戦的な精神が大好きだったのですが、振り返ってみると、ズーク以降はこうした独創的なバイクを出さなくなったようにも感じます。
仮に、その分岐点がズークだったのだとしたら、「バイクの楽しさ」の一側面が消えたようで、寂しくも感じます。

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