津軽海峡フェリーの新航路

 青森~函館、大間~函館の航路を運航する津軽海峡フェリーが2023年、津軽海峡から大きく脱する青森~室蘭の新航路を開設しました。この航路は、津軽海峡フェリーの前身である東日本フェリーが2008(平成20)年まで運航していたため、15年ぶりの復活です。

2025年8月には新型船「ブルーグレイス」も投入されました。

【惜別!】「ブルールミナス」の快適客室・充実設備を見る(写真)

 青森~室蘭航路は所要約7時間。かつて運行された青森と北海道を結ぶ夜行列車のような使い方ができそうにも思います。実際に乗船してみました。

 室蘭港フェリーターミナルは、JR室蘭駅から徒歩15分の便利な立地にあります。乗船便は、通常は「ブルーマーメイド」でしたが、取材時は運用の都合により「ブルールミナス」でした。

 客室は2人用個室「スイート」、4人用個室「コンフォート」、船首側に座席が配置され昼間航行時には前面展望が楽しめる「ビューシート」、マットレスが敷かれた開放型客室「スタンダード」などで構成されています。

 最新の「ブルーグレイス」と改装された「ブルーマーメイド」は、ドライバー区画に1人用個室「コンフォートシングル」が導入されています。青森~室蘭約7時間の長時間航行に配慮した設備です。

 筆者(安藤昌季:乗りものライター)が乗船した際は、室蘭20時50分発、青森3時50分着のダイヤでした。室蘭港フェリーターミナルは真新しい建物で、岸壁には船尾を向けた「ブルールミナス」が停泊していました。

いよいよ乗船

 土曜の乗船日、徒歩乗船客は老若男女10人弱で、乗船前は2階の待合所で皆くつろいでいました。

待合所では自販機で「やきとり弁当」などの冷凍食品も販売されています。船内の売店や自販機よりもメニューが豊富なので、ここで購入しておくのもおすすめです。

 なお、青森港には4時前に到着するため、タクシーを利用するなら事前予約をしておかないと、翌朝困ることになります。

 乗船後は、冷凍食品を扱う自動販売機コーナー「オートショップ」へ。購入したカルボナーラを電子レンジで温めます。船内にはレストランがありませんが、出来立ての温かい食事を楽しめ、なかなかの美味で幸せな時間です。

 船内を見て回ります。カーペット敷きの「スタンダード」の区画には座席を備えたフリースペース「プロムナード」があり、景色を楽しめます。また、バリアフリー対応室や女性専用室も用意されています。

 ゲームコーナーやキッズコーナーもあり、子どもが利用していました。船首部分の「ビューシート」を訪れます。非常にゆったりとしたリクライニングシートが前方を向いて並んでいます。

残念ながら夜間はカーテンが閉まりますが、昼間はおすすめのスペースです。

 取材ということで許可を得て「コンフォート」も見学させていただきました。じゅうたん敷きの部屋にマットレスが備わり、定員は4人。テレビも備わります。今回は見学していませんが、定員2人の「プライベートドッグルーム」は、愛犬と同室で旅ができます。

最高級の客室で青森へ

 今回は7時間、しかも夜行の乗船なので「スイート」を選びました。2人用個室で、ベッドが2台並びます。専用の浴室は、湯舟は小さめですが、船内でお風呂に入れるのはこの客室だけ。他の部屋は「共用シャワールーム」になるため、贅沢感は格別です。なお、室蘭航路の最新鋭船「ブルーグレイス」には、展望浴室が導入されています。

これぞ「夜行列車」の代わり!? 「本州-北海道の新航路」に乗...の画像はこちら >>

津軽海峡フェリー「ブルールミナス」のスイート(安藤昌季撮影)

 室内には応接セットも備わり、アメニティは紙コップ、歯ブラシ&歯磨き粉、ボディスポンジ、髭剃り、くし、シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ドライヤー、タオル、バスタオルと充実しています。シャンプー類は質が高く、ドライヤーも高性能で使い心地が良好です。

 お茶セットと湯沸かしポットもあり、緑茶とコーヒーを楽しめます。冷蔵庫はありませんが(新型船「ブルーグレイス」では備わります)、全体として長距離フェリーの上級船室に劣らない豪華さです。ベッドの寝心地もなかなか良く、エンジン音はやや感じるものの揺れは少ないです。

 気分良く休んだ後、3時50分に青森港に到着。徒歩下船の人とは別に、車での下船は30人くらいに見受けられました。筆者は到着後、タクシーで新青森駅に移動しました。料金は1200円。周辺は静かですが、少し離れた場所に24時間営業のコンビニがあり、そこで時間をつぶせます。

 津軽海峡フェリーの室蘭~青森航路は、船内の快適さはもちろん、徒歩乗船でも事前に準備していれば、まったく不便は感じませんでした。

 今回乗船した「ブルールミナス」は2025年8月に引退しましたが、同月にバトンを受け継いだ新造船「ブルーグレイス」にも乗ってみたいものです。

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